SEOスペシャリストの外山です。

本ブログは、私がプリンシプルに入社してから通算20本目※となるブログです。その20本目として私が選んだテーマは、「コンサルタントにとって重要な5つの心構え」になります。これは5年前に書き上げた、「SEOコンサルタントにとって大切なこと」というブログの続編であり、アップデート版になります。

※今まで私が書いてきたブログの一覧はこちら

私がプリンシプルに入社したのは2018年でしたが、前回のブログを書いた2020年と現在の2025年とを比べると大きな変化がありました。それは私自身が「教育」や「育成」に深く関わるようになったことです。新入社員向けの社内講義も受け持っていますし、様々な案件を通して、若手メンバーを指導したり、納品物をレビューしたり、時には「SEO」の域を超えた人生のアドバイスをしたり、ということが増えてきました。そして段々と、単なる知識やテクニックではなく、私の人生の「哲学」ともいうべき「心構え」を、言語化してまとめてみたいという気持ちが強くなってきました。

今回のテーマは「コンサルタント」にとって重要な心構えです。この私なりの心構えを、「データ」「違和感」「解決策」「行動(=具体的なアクション)」「倫理観」の順に、説明していこうと思います。いわば、コンサルタントにおける「起承転結」+「締め」となります。

  • 起:疑われ検証された「データ」が、すべての始まりとなる
  • 承:問題解決の糸口となる仮説は、「違和感」から生まれる
  • 転:あらゆるものを総動員して、「解決策」を生みだす
  • 結:コンサルタントの価値は、現状を「前へ動かす」ことにある
  • 終:「倫理観」が自分を成長させ、人生を豊かにする

これらは、私の「SEOコンサルタント」としての経験から導き出した内容とはなりますが、「コンサルタント」という、自分の知恵と経験を武器にして、目の前の課題を解決するために、人や組織を前へ動かす職業には共通するものもあるのではないかという想いから、「SEO」という単語は削りました。やや長文となりますが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。

1.データは疑え

疑われ検証された「データ」が、すべての「始まり」となる

問題(=理想と現状の差)を解決する上で、現状を様々な観点から切り取った「データ」を分析することは、コンサルタントにとって必要不可欠なプロセスです。一口にデータと言っても、Google Analytics 4(GA4)やGoogle Search Console(GSC)などのツールから取得できるデータ、売上や顧客情報などのビジネス上のデータなど色々ありますが、そのデータを盲目的に信じたり、鵜呑みにすることは危険であると私は思います。今までも「データは裏切らない。けれど人は簡単にデータを見誤る」などの(婉曲的な)表現で注意喚起はしてきましたが、端的にこう言い切った方が良いのではないかと、最近は思います。

目の前にあるデータが本当に正しいのか、一度は疑って、自分の手で検証しろ

データは「検証」する

目の前のデータ、特に今まで扱ったことのない新しいデータについては、一度は疑って、自分の手で「検証」することが重要です。ここでいう「検証」とは、例えば以下の様なことです。

  • データの取得方法や集計方法、指標の定義や限界などを、公式ドキュメントなどで確認する。
  • 別のデータや、データ以外の事実(例えば、実際の検索結果画面など)もあわせてみることで、データの「確からしさ」を確認する
  • (可能であるのならば)そのデータを自分の手でも作成・集計してみて、同じ結果となるかを再現する

「正しい」データに基づかないと「正しい」アクションは行えません。データを見誤らず、行動や判断を間違わないためには、まずは目の前のデータを「疑う」ことが重要だと私は考えます。

ツールには「限界」がある

ツールは人間が創るモノですので、けっして「万能」ではなく、「限界」があります。

例えばGA4のデータは、タグがサイト上で正しく実装されていたり、設定が正しくされていない限り、正しい数値は取得できません。ですが意外と、この実装や設定は正しくされていなかったりします。また正しく実装・設定がされていたとしても、Google側のトラブルで特定期間のデータが欠損したり、あるいは仕様の変更により、データの「解釈」が変わったりもします。

サイトにタグ等を設置する必要がないGSCのデータにも、限界があります。この限界については、Google自身がドキュメントで解説していますが、例えば「匿名化されたクエリ」があります。

参考:Search Console でのパフォーマンス データのフィルタリングと制限の詳細

「匿名化されたクエリ」は、プライバシー保護のために詳細が表示されないクエリで、GSC上の合計数には含まれますが、詳細の内訳の中には含まれない(表示されない)ものです。

GSCでは、BigQueryに一括エクスポートすることで、GSCで利用可能なすべてのパフォーマンスデータを確認することができるようになりました。このエクスポートされたデータでは、匿名化されたクエリは「is_anonymized_query」というフィールドで識別できますが、サイトによっては、半数以上が匿名化されたクエリであったりもします。よって、実は私たちが「見えている」部分は、全体のデータのごく一部である可能性も意識して、分析することが重要となります。

参考:BigQuery への Search Console データの一括エクスポートについて
参考:Search ConsoleのBigQuery一括エクスポートでより生データに近い分析を

指標には「定義」がある

データは、現状をとある数値(指標)に落とし込んで、様々な切り口(ディメンション)で集計したものとなりますが、その指標には必ず「定義」が存在します。

例えばGSCでは、サイトのパフォーマンスを「表示回数」「クリック数」「クリック率(CTR)」「掲載順位」という4つの指標で計測しています。それぞれの用語は、Googleのヘルプページでは下記の様に説明されています。

指標 説明
クリック数 ユーザーが Google 検索の検索結果をクリックしてプロパティ(対象のウェブサイト)に移動した回数。
表示回数 ユーザーが Google 検索の検索結果でプロパティ(対象のウェブサイト)を表示した回数。
CTR(クリック率) クリック数を表示回数で割った値。
掲載順位 URL、クエリ、またはウェブサイトの一般的な検索結果の平均掲載順位。

一方で、それぞれの計算方法はかなり複雑であり、正確に理解するには、別のヘルプページを注意深く読み解く必要があります。

参考:表示回数、掲載順位、クリック数とは

これらの中では簡単に思える「表示回数」という指標1つとっても、下記の様な、様々な疑問が出てきます。これらの質問について、Googleヘルプの情報をもとに読み解くと以下の様になります。

自社サイトが2ページ目に表示される場合、表示回数はどうなる?
→ユーザーが検索して検索結果の1ページ目が表示されたとして、ユーザーがリンクをクリックするなどして2ページ目を表示しない限り、表示回数は加算されない。

一回の検索に対して、自社サイトの複数のURLが表示された場合(例えば、サイトリンクの部分に複数のURLが表示された場合)、表示回数はどうなる?
→表示回数は、GSCのプロパティ(ウェブサイト)単位と、ページ(URL)単位の、2種類の方法で集計される。複数のURLが表示されても、プロパティ単位の集計では一回としかカウントされないが、ページ単位の集計ではそれぞれのページが一回ずつカウントされる。そのため、ページ単位の集計を単純に足し上げてしまうと、表示回数が重複で加算されるため、プロパティ単位の表示回数より大きくなる。

「関連する質問」など、デフォルトでは非表示である領域内に自社サイトのURLがある場合、表示回数はどうなる?
→ユーザーがその項目を展開(クリックして表示)した場合に、表示回数が加算される。

※上記情報は2025年10月時点のヘルプページの内容をもとにしているため、今後変更される可能性もあります。

掲載順位は表示回数よりも更に複雑で、上記ヘルプページを正確に読み解くだけでも相当な苦労があります。けれどそれを理解しない限り、仮にGSC上でとあるクエリの掲載順位があがっていたとしても、「リライトによってページ評価があがり、順位が向上した」などと簡単に結び付けることはできません。なぜなら

  • 通常の表示順(青色リンクの表示順)が上昇した
    の他にも、
  • (検索結果の1番目に表示されることの多い)「AIによる概要」に表示されるようになった
  • サイトリンクが表示されるようになった
  • 「関連する質問」に表示されるようになった

などの、色々な可能性があるからです。そのため実際の検索結果画面も自分の目で確かめながら、データを検証する行為が必要となります。

ちなみに先述したヘルプページには、最近日本語でも展開された「AIモード」における表示回数や順位などの説明も掲載されています。頻繁に更新されていますので、折を見て確認するのが良いでしょう。

データを「正しく」理解する

データ、特に数値で表されたデータは、明確に事実を物語る「わかりやすさ」を持っています。ただしその「わかりやすさ」故に、データが本当は何を物語っているのか、正しく理解することが必要です。そしてデータを正しく理解するには、一度は疑い、検証することが必要不可欠です。データに限らず、何かを「信じる」には、一度は「疑う」というプロセスを経る必要があると、私は思います。

2.違和感に気付け

問題解決の「糸口」となる「仮説」は、「違和感」から生まれる

1番目の心構えでは、データの重要性について述べました。けれどコンサルタントにとってデータとは出発点であり、結論ではありません。たまにデータを集計して、傾向や特徴だけを述べるだけで終わっているレポートを見かけますが、それだけではコンサルタントの仕事とは言えません。コンサルタントの仕事とは、データや事実の分析から、問題を解決するための「糸口」を見つけ、そして「糸口」を「解決策(=具体的なアクション)」に昇華させ、さらに実際の行動へと繋げていくことです。

そしてデータから「糸口」を見つけるために重要なことが、「違和感」に気づけるかどうかであると私は考えます。

異変を見逃さない

「違和感」とは「違和」を「感じる」ことであり、「何かと違う」「何かがおかしい」という「異変」を自らで「感じる」ことです。そして「異変」とは、何かとの比較によって導き出されます。「過去のデータ」と違う、「いつもの傾向」と違う、「競合他社」と違う、「常識」と違う、「定石」と違う、などなど、色々なパターンがありますが、現在目の前にあるデータや事実が「何か」と違うことに、まずは気付けるかどうかが重要となります。

「異変」に気付くには、常日頃からの観察や情報収集が大事になります。「いつも」と違うと感じるには、「いつも」の状態が頭に入っていないといけません。「他」と違うと感じるには、「他」の情報も知っていなければなりません。「常識」や「定石」と違うと感じるには、その分野のおおよその傾向や方法論を知っていなければなりません。

例えばSEOの世界でも、以下のようなことがらを「異変」と感じることができるかが、重要になります。

GSCでとあるクエリの平均掲載順位が1位台なのにCTRが1%台
→1位であるならばCTRはもっと高いはずなので、「AIによる概要」に表示されている可能性があり、通常の掲載順位(青色リンクの掲載順位)はもっと低い可能性がある。CTRはクエリによって異なるが、一般的にはおおよそこれくらい、という感覚を持っていることが大事。

GA4でGoogleとBingからの自然検索流入を比べるとBingの方が多い
→ GoogleとBingのシェアを比べると、通常はGoogleからの流入が多くなるバズ。Bingが多いということは、Google検索で何らかの問題が生じている可能性がある。

GA4で特定ページのエンゲージメント率が80%以上
→考えられなくはないが、エンゲージメント率が高いということは、計測上の不具合がある可能性がある(例えば、タグが二重発火しているなど)

GSCで急に表示回数が減少した
→サイト改修などを行っていないのであれば、Google側の不具合や仕様変更の可能性もある(例えば、Googleが&n=100のパラメータを廃止した、など)

違和感を大事にする

上述したような「異変」に気付くことは難しいと感じるかもしれませんが、私は意外に、「あれ、何か違うかな」と思うことは、往々にしてあるのではと思います。ただその感じた「違和感」を、「まあいいか」「気のせいかな」「めんどくさい」として、そのままにしていることも、往々にしてあるのではと思います。

自分が感じた「違和感」が重要な「異変」であるとは限りませんし、そこから何らかの「解決策=アクション」を導き出せるとも限りません。調べて見れば取るに足らないことであったり、どうしようもないことであったりということもあると思います。けれども、せっかく自分の心が何らかの「違和感」を感じたのなら、それをそのまま放置するのは実にもったいないと思います。

何かのデータにひっかかったのなら、誰かの言葉にもやっとしたのなら、自分のその感覚や感情をとことん突き詰めて、自分が「何」に違和感を感じたのか、それは何故なのかを明確にするといいでしょう。そうすることで、自分の「違和感に気付く」感覚や感性は磨かれていくのだと、私は考えます。

データは「始まり」であり、「終わり」ではありません、そして問題解決の「糸口」となる「仮説」は、「違和感」から生まれるのです。

3.すべてを駆使しろ

あらゆるものを総動員して、「解決策」を生みだす

「データ」から始まって「違和感」に続く。起承転結でいうところの「起」がデータ、「承」が違和感なら、「転」は解決策です。そして「転」という文字があらわすように、解決策を生みだすこと、現状を「転換」させることは、並大抵のことではありません。そのためには、自分の持てる知識やスキルを総動員して、そして人間関係やリレーションをも総動員して、文字通り「すべてを駆使する」必要があると私は考えます。

「専門性」ではなく、「総合知」で戦う

「総合知」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 内閣府のポータルサイトによると、総合知とは、多様な「知」が集い、新たな価値を創出する、「知の活力」を生むことと定義されています。コンサルタントが直面する様々な問題の解決においても、一つの領域の専門知識だけでなく、様々な領域の知識を総動員した「総合知」が必要になると、私は考えます。

参考:「総合知」ポータルサイト(内閣府)

SEOに限っても、流入の減少や順位の低下、それに伴う売上やCVの減少といった問題を解決する「策」を生みだすためには、様々な知識が必要となります。データ分析には、前述したように様々なツールの知識が必要となりますし、数値を扱う上では、統計学の知識が必要となることもあります。ウェブサイトの改善には、サーバーやネットワークの他、導入されているCMS、HTML、JavaScriptなど、フロントエンド・バックエンド問わず、様々なことを理解しておく必要もあります。時には、顧客から情報を引き出すヒアリング力や、論点を分かりやすく伝えるプレゼンテーション力、エンジニアとも議論できるコミュニケーション力、問題を整理し意思決定を促すファシリテーション力が必要になることもあるでしょう。

「一人」ではなく、「チーム」で解決する

これだけ必要な知識が多いと、コンサルタント「一人」だけで解決することは到底不可能です。もちろん、自分自身の知識やスキルを深めていくことも大事ですが、自分ができないことについては、率直に他人を頼ることが重要です。なぜなら私たちが第一に考えるべきは、「自身の成長」ではなく「問題の解決」なのですから、頼ること、頼むことに、躊躇してはいけないと私は思います。

私が好きなことわざに「立っているものは親でも使え」があります。例え親であったとしても、解決に必要であるならば、その人がその知識とスキルを持っているのならば、躊躇なく頼るべきだと思います。そしていざという時に頼れるよう、社内外の色々な人と、常日頃から良好な関係を築いておくことも、同様に重要だと思います。自分の知識やスキルだけでなく、他人の知識やスキルを借りることができれば、これだけ心強いことはないでしょう。そしてそのために、自分が頼られたときには、快く、惜しみなく力になることも、大事であると私は信じています。

「出来ること」ではなく、「必要なこと」を考える

「一人」でものごとを解決しようとすると、どうしても思考が「自分が出来ること」に限定されがちになります。しかし重要なのは、自分が「出来ること」ではなく、その問題の解決にとって「必要なこと」です。いつの間にか自分で自分の思考を狭めないためにも、「すべてを駆使して物事を解決する」というマインドを持つことが、重要だと私は考えます。

4.前へ動かせ

コンサルタントの価値は、現状を「前へ動かす」ことにある

データから始まり、違和感を糸口に解決策を生みだせたとして、コンサルタントの仕事はそこでは終わりません。「解決策の提案」の後に「実行の現場」を動かして、具体的なアクションにより現状を「前へ動かして」こそ、コンサルタントの仕事は終結します。SEOでいえば、何十の改善策を提案しても、実際にそれが実行に移されなければ、何も変わりません。そのような意味で、コンサルタントは「提案者」であると同時に、「推進者」でもあるべきだと、私は考えます。

データとロジックで「納得」をつくる

たいていの場合、コンサルタントが提案した解決策を実行に移すのは、顧客であったり、あるいは顧客の先にいるエンジニアや制作会社であったり、コンサルタントとは別の主体となります。解決策の中には、記事執筆であったり、ページ制作であったり、実行の一部をコンサルタント側で行うこともあるかと思いますが、それでもその解決策の実行には、まずは顧客の「納得」と「承認」が必要になります。

顧客に「納得」してもらう上で最低限必要なことは、客観的事実であるデータの積み重ねと、データから解決策に至るまでのロジックの妥当性だと私は思います。「なんとなくこうしましょう」では、納得は得られず、承認は下りないでしょう。もちろんすべての提案に100%の根拠を用意することは無理であり、解決策を実行すれば100%うまくいくと言い切ることもできないとは思いますが、可能な限りのデータとロジックを用意して、それを誠実に説明して納得を得ることは、「解決策」を提案するコンサルタントの責務であると、私は思います。

物語と情熱で「共感」を得る

一方で、データとロジックを用意して誠実に説明したとしても、それだけで「行動」を引き起こすことは難しいことも事実です。データとロジックが、いわば人間の「理性」に働きかけるものであるのに対して、人間の「感性」に訴えるものも同時に重要です。そしてそれは物語(ストーリー)と情熱であると、私は考えます。

「物語(ストーリー)」とは、データやロジックを「人の心に届き、響かせるもの」に昇華させるものであると、私は考えます。数字やグラフだけでは伝わらない「なぜ」「どうして」「だからこそ」という流れを語ることで、人は「納得」を超えて「共感」します。そしてその「共感」こそが、人を動かす力になります。「物語」があってこそ、分析と提案の「終わり」が、行動を生み出すための「始まり」となるのです。

そしてもう一つ、人を動かすために欠かせないものが「情熱」です。情熱とは「自分はこの課題を本気で解決したい」「この変化を実現したい」という「意志」の熱量です。どれほど理路整然とした提案でも、そこに意志の「熱量」が感じられなければ、相手の心には響かないでしょう。情熱は、言葉がもつ熱量ではなく、コンサルタント自身が持つ意志の熱量であり、「この人は本気だ」と伝わる姿勢そのものと言えます。

工夫が「行動」を生む

データとロジックが納得を、物語と情熱が共感を生み、行動を引き出す。理性に働きかけ、感性に訴えかけながら、コンサルタント自身が多種多様な関係者の「触媒」となって、現状を前へ動かす。そしてもう一つ、行動を引き出すサポートをする、様々な「工夫」があることも理解しておきましょう。

プレゼンテーション資料

プレゼンテーション資料は、納得や共感を生むための、コンサルタントにとっての最大の武器です。プレゼンテーション資料を作成するには、まずは材料を集める必要があります。材料とは、データの分析結果であったり、現状を引き起こしている原因の仮説であったり、考えられる解決策の一覧であったり、今後の見通しや予測であったり、様々です。しかしこれらの材料を、順番に並べただけで、満足したりはしていないでしょうか。

資料を作成するプロセスと、資料の構成順は、まったく違います。資料作成はデータ分析から始まりますが、構成上は結論から語ることが多かったりします。そのため材料を集めたら、一度その材料でもって、最終的にどのような「メッセージ」を相手に訴えるかを考え、そのためにどのような「物語」で資料を構成したら良いかを考えます。せっかく集めた材料が「採用されない」こともあるでしょう。またメッセージと物語は、「誰」に対してプレゼンをするかによっても変化するものです。手元の材料が最大限の納得と共感を生むために、資料構成は徹底的に考え抜くことが大事になります。

シミュレーションとロードマップ

シミュレーションは、解決策を実施した効果の期待値を表したもので、ロードマップは、今後の進むべき道筋を簡易的に示したものです。ともに、納得や共感を生むための大切な武器となります。プレゼンテーション時点ではなかなか作成が難しい場合もありますが、これらが見通せない限り、大きな決断は難しいのもまた事実です。相手の立場に立って、組織として「行動」を起こすためには何が必要となるかを考えて、用意できるものは用意していくことは、「情熱」を相手に伝えることにもつながります。

効果測定とフィードバック

問題(=理想と現状の差)が大きければ大きいほど、一回の「行動」によって解決することは稀であり、複数の解決策や行動を積み重ねていく必要があります。そこで重要となるのが効果測定とフィードバックです。実施した内容が狙った効果を生み出せたのかを冷静に効果測定し、その内容を関係者に適切にフィードバックする。良かったことも悪かったことも誠実にフィードバックすることで、信頼関係が構築され、また次なる行動が生まれます。「言いっぱなし」「やりっぱなし」とはせず、結果を真摯に受け止め、評価した上で、次なる行動へ向かう。そんなサイクルを通してこそ問題は解決するのだと、私は思います。

5.倫理観を持て

「倫理観」が自分を成長させ、人生を豊かにする

以上、私が思う「コンサルタント」にとっての重要な心構えを、「データ」「違和感」「解決策」「行動」の順に、コンサルタントにおける「起承転結」という「物語」に沿って説明してきました。そして最後にこの物語を、「倫理観」という言葉で締めくくろうと思います。

「羅針盤」を持つ

「倫理」とは、自分が重要と思う「価値観」の集合体であり、自分が自分に対して課す「規範」や「ルール」です。「倫理」というと「してはいけないこと」のリストのように思われがちですが、その人の判断や行動の迷いを払う「羅針盤」と言った方がしっくりくると、私は考えます。

私たちコンサルタントの仕事は、判断の連続です。どのデータを採用するか、どの解決策を優先するか、どの提案を伝えるか。そして一つひとつの判断に、顧客の成果や組織の未来が関わってきます。また私たちの仕事は、顧客の先にいる人たちの生活や未来をも、左右することがあります。だからこそ、その判断の根底には自身の「倫理観」があるべきだと、私は考えます。

正しく「畏れる」

私たちの分析した結果を、提案した結果を、それによって生みだされた行動の結果を、私は「正しく畏れる」べきであると考えます。そして「畏れた」上で、それでも必要なこと、やるべきことを提案する「勇気」を持つことが、大事だと思うのです。

曖昧な状況の中で、何が正解かわからないときでも、コンサルタントは現状を分析して、顧客に対して提案をしなくてはなりません。そんなときも、自分が信じる「倫理観」が、自分を導き、助けてくれます。

心に誇りを、人生に豊かさを

コンサルタントの仕事は、人と向き合い、組織と向き合い、社会と向き合うことです。その中で磨かれるのは、スキルよりも「人としての軸」だと感じます。倫理観とは、他者を律するためのものではなく、自分を育てるためのもの。それがあるからこそ、ブレずに長く走り続けることができます。

私は、倫理とは「生き方」そのものだと思います。クライアントの信頼に誠実であること。仲間と正直に向き合うこと。そして自分自身に恥じない判断を積み重ねること。その繰り返しが、自分を成長させ、人生を豊かにしていくのだと信じています。

あなたは、今の自分の仕事に「誇り」を持てていますか。コンサルタントという職業に対する「矜持」はありますか。データを疑い、違和感を掘り下げ、知恵を総動員し、人を動かす。そして心に誇りを、人生に豊かさを。

このブログが、みなさんの心の中に「何か」を残せたのなら、幸いに思います。

(了)

Liner Notes(あとがき)

冒頭で述べたように、私がプリンシプルに入社して書いたブログは、このブログで20本目となります。最初は、一本目に書いたブログが生ログ(サーバーのアクセスログ)の分析であったこともあり、生成AI時代のアクセスログ分析という、ややマニアックな記事を書こうと思っていました。

プリンシプルには「リトリート」という、日常から離れた場所で心身をリセットしリフレッシュするイベントがあります。つい先日、そのリトリートで軽井沢に行ったのですが、夕食の際に、私のSEOの先輩でもあり、戦友でもある菊池さんと、ブログのテーマについて話していたときに、このテーマを書く着想を得ました。

私が書く文章には、少し癖があり、それは多分、私の人生が滲み出ているからなのだと思います。20本目は、私の人生をより滲み出たものとしたいと思うようになり、今回のテーマに行き着きました。

知恵とは、自分の心の奥底に眠っているものであると同時に、他者との対話の中で磨かれるものでもあります。そんなことに気付かせてくれた戦友に感謝しつつ、筆を置きたいと思います。

(本当の了)

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外山大

SEOコンサルタント。元文部科学省官僚。アクセスログやGA・GSCのデータ分析を中心とした大規模サイトの構造的な問題の分析、改善提案を行う。

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