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Google Chrome のサードパーティcookie 排除の流れで起こること

2020年1月14日に、Google の公式ブログから、Chrome でのサードパーティcookie の提供を将来停止することが発表され、話題になっています。

このアナウンスを受け、criteo は16%も株価が下落するなど、 サードパーティcookie を軸としているアドテク関連事業者には大きな打撃が広がりました。

  1. Why Criteo Stock Dropped Today
    (英語)

日本国内一般向け大手メディアなどでも大きく報じられ、話題になっています。

  1. 日経新聞:米グーグル、ネット利用者の閲覧データ提供取りやめ
  2. 東洋経済オンライン:グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋

safariのITP やGDPRなどこれら問題に対してはここ最近、報道各社による社会的な観点の記事から、アドテクベンダー・広告代理店などからの技術的側面の記事まで様々な情報が飛び交っていますが、正直追い切れておらず全体像が把握できていない方も多いはずと思い、まとめてみました。
一部予測を含めた個人の見解も含まれていますが、全体像の把握に役立てていただけると幸いです!

【結論だけ読みたい人向けまとめ】

  1. 今後2年以内にcookie の新しい仕様が作られ、そちらに移行する予定。それに伴い、サードパーティcookie のサポートは終了。
  2. デジタル個人情報(cookie )の基本原則は「透明性」「選択肢」「コントロール」、その意図に合致しないトラッキング手法(フィンガープリンティングなど)については、追って使えなくなる。
  3. 基本的にはsafariの ITP対策で対応済みの解析ツールや広告トラッキングが多いので、それらについては大きな影響はなさそう。
  4. ITPへの対応が難しい、サードパーティcookie を軸とした広告等については、今後事業モデル含めた方針の見直しが必要となる可能性がある。

【今回の発表内容】

まず、今回の発表の一次ソースを見てみましょう。

  1. Google Chromium blog(英語)

まだ、日本の公式翻訳は出ていませんが、要約すると以下のような内容です。

  1. 8月に、chromiumはよりプライバシーが重視されたインターネットを目指す「Privacy Sandbox」という取り組みを発足した。
  2. この取り組みの中では、サードパーティcookie抜きで、「個人情報保護を前提に、広告に支えられた無料のインターネット世界 (ad-supported web)」を維持することができるという考えに至っている。W3Cなどにも意見を求めたがポジティブなフィードバックを受けている。オープンソースブラウザであるChromium では2年以内に、サードパーティcookie のサポートの廃止を目指す。
  3. 単純なサードパーティcookie のブラウザでの除外は、フィンガープリンティングのような、cookie よりもさらにユーザーをだますような技術の広まりを招いてしまっている。広告などのトラッキングも含めた個人情報保護を前提とした新たなエコシステムが必要だ。
  4. コンバージョン計測から、パーソナライゼーションまでの最初のトライアルを、今年中に開始する予定

日本国内の報道では、chrome のサードパーティcookie 排除ばかりに焦点が当てられていますが、「新しいトラッキング/パーソナライズの方法を作る」というところが強調されていると感じます。

今回の発表の元となっている基本方針については8月に発表されており、この中ではユーザーが個人情報について、「透明性」「選択肢」「コントロール」ができることが3つの原則だ、と強調しています。

That’s why we want to work with others in the industry to explore measures that will give people the privacy that they expect. And based on what we’ve heard so far from our users and industry partners, we believe that our discussions should be grounded on three principles:
– First, users should have transparency. They should be able to easily see and understand how their data is being collected and used for ads.
– Second, users should have choice. Their choices about how they experience the web should be respected and any attempts to bypass those choices should be prevented.
– And third, users should have control. They should have the ability to adjust how their data is collected and used to tailor the ads they see, including whether those ads are personalized at all.

https://services.google.com/fh/files/misc/industry_request_for_comment_v1.0.pdf

今後、具体的にどういう機能/技術によるトラッキングとなるのか現時点では定かでありませんが、この3つの「透明性」「選択肢」「コントロール」を実現する形でのトラッキング仕様となるはずです。
逆に、これら3つの原則を実現しないトラッキング技術については、制限していく可能性が高いと考えられます。

【背景】

今回Google がChrome のサードパーティcookie の制限方針を発表した背景には以下のような流れがあります。

1)各国での個人情報保護に対する法規制や社会問題

  1. 欧州でのGDPR(General Data Protection Regulation/ 欧州での個人情報保護に関する法律
  2. アメリカでのFacebook の個人情報漏洩問題から、それを受けてのCCPA(California Consumer Privacy Act /カリフォルニア州消費者個人情報保護法)成立
  3. 日本国内でも個人情報保護法でのcookie を対象にする方針へ

2)safari におけるITP(Intelligent Tracking Prevention/ safariブラウザにおけるトラッキング防止機能)やアドブロックアプリと、事業者側のトラッキング技術開発のいたちごっこ

Googleは様々な事業を展開していますが、その収益源の大半はGoogle 広告です。便利になったインターネットの世界で、より多くのユーザーがよりたくさんの経済活動(Eコマースやサービスの予約、申込など)をするようになれば、結果としてインターネットの入口である「検索」を中心としたGoogle広告により多くの企業の投資が集まり、Googleの収益は上がります。
今回のように個人情報の問題が起こることで、「消費者のWEB上で経済活動に懐疑的になる」「企業側のインターネット上のマーケティングコスト(ITP対応など)が上がり、投資が行われにくくなる」ようなことがあると、Google の企業価値に大きな影響を与えてしまうため、重要な問題です。

今回の発表は、この流れを止めるために、消費者がより安心してWEB利用ができるようにあらたなエコシステムを作ることが目的だと言えます。

【デジタルマーケティング界隈の各領域に対する影響】

今回の発表は広範囲に大きな影響がありそうに思いますが、サードパーティcookie が使えなくなること自体はすでにsafari ITPで発生しています。また、safari においてはファーストパーティcookie についても有効期間が短くなるなどの施策がとられていますが、今回は「サードパーティcookie」という名ざしなので、その意味では影響はより限定的なことが予測されます。

cookie の用途は様々ありますが、ざっと分類すると大きく3つに分類できます。

  • サイト利用にあたってのパーソナライズ
    ログイン維持やカート内アイテム、検索条件の保持など
  • トラッキング
    サイト内行動を追うGAをはじめとする解析ツールやコンバージョントラッキングなど
  • ターゲティング
    リターゲティングやDMP などをはじめとする、広告のターゲティング

パーソナライズについては、基本的には元からファーストパーティcookie の利用が一般的なため、影響が出ないケースが多いはずです。

トラッキング系の主要関連事業者はすでにサードパーティcookie に頼らない手法に切り替えているところが多いため、これ自体については影響範囲は限定的ではないでしょうか。

一方、ターゲティング系については、サードパーティcookie を前提としたDSP、SSP等の広告事業者については有効な代替手段が今のところ見えておらず、先行きは不透明です。冒頭で取り上げた criteoなどはまさに、「サードパーティcookie による個人行動の高精度な機械学習」を売りにしているため、市場にもネガティブに捉えられています。
safari のITPを受けて、すでにフィンガープリンティング系の技術
(参考:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/technology/00005/00013/)なども生まれていますが、今回のGoogle の発表はこれを敵対視するものだったので、この技術も下火になりそうです。
実際、フィンガープリンティングで用いられている情報の1つであるユーザーエージェントについて、段階的に廃止する方針をGoogle は発信しています。
https://gigazine.net/news/20200115-chrome-phase-out-user-agent-strings/

【具体的な影響】

私はエンジニアではないので、技術的な部分は専門家にお任せしますが、ざっとかいつまむと各領域に対しては以下のような影響となりそうです。

『トラッキング関連に対する影響』

1. Googleアナリティクスのトラッキング

→GAのcookie は1st party 扱いなので影響なし。

2. Adobe アナリティクス、その他解析ツールのトラッキング

→Adobe アナリティクスはITPを受け手2018年3月にファーストパーティcookie に変更済みなので、影響なし。その他ツールも、対応済みのところが多い。
ただ、直近巷で話題になっているCNAMEトラッキングのような、ユーザーにとって情報収集することについての選択肢が与えられないケースについては、前述の基本原則と反するため、どこかで対応がなされる可能性もありそうです。

3. 広告のコンバージョントラッキング

→ 現状safari では、サードパーティ cookie の有効期限は、24時間、ファーストパーティcookie についても7日間と、短くなっています。(safari でのクリックから8日後のCVは計測されない。)google広告では、safari のITP対応のため、ファーストパーティcookie であるGoogleアナリティクスのcookie にGoogle広告のCV情報を乗せる形で対応がされています。Yahoo、FBなどでもすでに同じような対応を取っているため、Chrome が3rd party cookie を制限したとしても、大きな影響はないと考えられます。
このような対応がまだ行えていないアドテクベンダーについては、対応を迫られることになりそうです。また、アフィリエイト(ASP)なども、ITP自体への対応難易度と、アフィリエイター側のタグのアップデートなどの対応のむずかしさもあり、上手くITP対応が進んでいない印象もあり、影響はありそうです。

『ターゲティング関連への影響』

こちらも、基本はsafari ITPへの対応で、主要ベンダーは対応済みなので、大きな構造自体は変わらず、safari ITPに対応できていない立ち位置のプレイヤーがさらに苦しくなる形です。また、前述のPrivacy Sandbox で新たに作られる仕組みがどのようなものか、によっても状況は変わってくるでしょう。

1. Google広告

Google広告については通常のGDNでのリマーケティングタグを用いたターゲティングは上手く機能しにくくなりますが、GAリマーケティングは有効です。また、googleは最近スマートディスプレイキャンペーンなど、「動的プロスペクテリング」と呼ばれる機械学習によるターゲティングを推しています。
これらがcookie ベースの情報を用いているか、などは不明ですが、ブラウザや検索クエリなど多くの情報を持っているgoogle にとって、対象キャンペーンに対する潜在ニーズを持ったユーザーを特定することは可能なため、Google広告のパフォーマンスに対して大きな影響は無いと考えられます。
こういったGoogleのサービス(検索やブラウザ)利用時のオプトイン/アウト のユーザーの利用意向が変わってくると、googleも苦しくなりそうですが、Googleが提供している利便性を踏まえると、あまりそういう未来は無さそう?です。

2. Facebook

Facebook 広告については、Facebook アプリやfeed 内での広告展開については影響はなさそうです。が、最近はFBオーディエンスデータを踏まえた外部ネットワークへの配信が増えていることもあり、その部分については影響が出ると考えられます。

3. Yahoo

Yahoo についても、YDNのYahoo メディア内の配信については影響がなく、YDN のyahoo外配信については影響が出ると考えられます。

4. その他DSP、アドプラットフォーム

直接の自社メディアを持たず、サードパーティcookie によるリターゲティングや行動ターゲティングによる最適化を売りにしていたプラットフォームについては、次の打ち手が必要となりそうです。

5. 広告以外のアドテク事業者

その他、MA、接客ツール、CDP、DMPなど、各ベンダーにおいても、それぞれサードパーティcookie ベースの場合は影響があるかも?

『パブリッシャー(メディア側)への影響』

サードパーティcookie がそのまま無くなった場合、メディア収益にどのような影響が出るか、も気になるところです。Googleによる調査結果によるとcookie の存在しないトラフィックは、cookie のあるトラフィックと比べて平均52% 収益が低くなった、とのこと。
https://services.google.com/fh/files/misc/disabling_third-party_cookies_publisher_revenue.pdf

これではWEBの世界の発展が上手く立ちいかなくなるので、Google は何らかの形でメディアの内広告枠のターゲティング精度を維持し、収益が下がらない形でサードパーティcookie の廃止する形を目指すはずです。(ただし、一定の影響は避けられなさそうですが)

【この先の予測】

ここからは筆者の個人的な予測ですが、今後以下のようなことが起こるのではないでしょうか。

1. 具体的にGoogle が提供する「新しい計測の仕組み」について

Google/Chromium が発表している情報を追うと、基本的には、「cookie 新しい仕様/区分を構築する」ことが大方針のようです。
現在、「ファーストパーティcookie」「サードパーティcookie 」という2区分で、それぞれ何に使われているか分からものをユーザーが選択しなければならない状況になっています。ユーザーからするとそれが困難なため「サードパーティは全部NG」という判断を下さざるをえない状況です。
サードパーティcookie に対して samesite 属性を必須とする動きはすでに行われており、新しいcookie (あるいは、cookie ではない新仕様?)が、この2年の間に出てくると考えられます。

参考:【一問一答】 Chrome の SameSite cookie の変更とは? : cookie への新たなアプローチ/DIGIDAY

参考:samesite cookie について(英語)

ブラウザ自体がトラッキングを送信するような考え方も出てきています。
参考:Privacy Preserving Ad Click Attribution For the Web(英語)

2. アドテクのトレンド

すでにsafari ITP 以降、「ユーザーの行動」をベースにしたターゲティングの精度は落ち始めています。新しい仕様によりなんらかのターゲティング機能が維持されることになったとしても、現在よりは非直接的なターゲティングになる可能性が高く、個人特定型の広告の世界はあまり広がらない可能性が高いです。

マーケティングにおいて、消費者と企業の間には、以下のような世界が広がっています。
【個人】~【属性】~【行動(意向)】~【クリエイティブ】~【商品・サービス】

リマーケティングにおいては、【個人】~【行動】~【商品・サービス】のデータを紐づけた機械学習での最適化が行われました。これが下火になっていく中方向性は2つではないでしょうか。

1つは【属性】を軸にした最適化の世界。ただ、これはGoogle やFacebook、Amazon のような圧倒的なプラットフォームデータ(メディア、アプリ、ブラウザのデータ)を持った事業者が勝ち残る世界です。

もう1つは、【行動】~【クリエイティブ】~【サービス】の最適化の世界で、アドテクの世界はこちらに寄っていくように思います。

3. 個人情報自体の市場化

もう1つ起こりそうなこととして、個人情報自体のマーケット化があります。
古くは「アンケートモニタ調査」のような形はWEBが始まる前からありますし、またそのオンライン版のモニタ型WEB行動調査サービスはいくつもあります。
これらは企業のマーケティング部などが調査型で高い予算をかけて取り組むものですが、この領域と刈り取り型のマーケティングの中間領域は今後広がるのではないでしょうか。
すでにパーソナルデータの管理、活用型のサービスや個人情報管理型のブラウザ(Brave:https://brave.com/
なども出てきており、個人情報自体を通じたマネタイズの世界の広がりはありそうです。


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