2020年1月にGoogle Chromeが「2年以内にサードパーティcookieを終了させる」ということを発表してもうすぐ1年になります。

※発表の内容は「Google Chromeのサードパーティcookie排除の流れで起こること」で解説しました。

逆にいうとサードパーティcookieが使えるのも残り1年あまりのはずなのですが、ポストcookieのWEB世界に関する情報はまだ少ないです。不安に感じているマーケターや広告関係者の方も多いのではないでしょうか。

というわけで今回のブログでは、現時点でPrivacy Sandboxプロジェクトから読み取れる内容を紹介してみたいと思います!

記事の内容

  • Privacy Sandboxについておさらい
  • Privacy Sandboxにおける広告コンバージョン計測
  • Privacy Sandboxにおける広告ターゲティング
  • 今後予想されること

Privacy Sandboxについておさらい

Privacy Sandboxは、Chromium(Google Chromeの元となっているオープンソースプロジェクト)が発表した取り組みです。サードパーティcookieを終了させ、それに代わる新たな仕組みを作ることを目的としています。

GDPR (EUにおける個人情報保護法にあたるもの)をはじめ各国でデジタルプライバシーへの関心が高まっています。サードパーティcookieなどの識別子も”個人情報”だとみなす動きもあり、その環境下でもデジタルマーケティングのエコシステムが成り立つように改変しようとする取り組みです。

マーケター視点で重要なポイント

このPrivacy Sandbox、トラストトークンや共通ログインなど様々な対象が含まれますが、マーケター視点だと以下の2つが肝となるかと思います。

  • 広告のコンバージョン計測
  • 広告のターゲティング

これらの項目について、「専用のAPIが公開される」「cookieではなくブラウザベースで計測やターゲティングを管理する」というのが今回のPrivacy Sandboxの主旨です。

それぞれ、どのような内容なのか見てみましょう。

Privacy Sandboxにおける広告コンバージョン計測

イベントCV計測API(Event Conversion Measurement API)の概要

広告コンバージョン計測については2つのAPIが想定されており、クリックスルーCVを計測するAPIは「イベントCV計測API(Event Conversion Measurement API)」という名称ですでにトライアルが始まっています。

その詳細は10月にweb.devで公開されています。

▼github はこちら
https://github.com/WICG/conversion-measurement-api

これまでは、cookieの情報はブラウザが直接アドプラットフォームやサイト運営者へ渡していたため、個人を特定できる識別情報として受け渡されていました。

これに対しイベントCV計測APIでは、ブラウザ側はCVの情報を集計した後、クリックとCVのみの識別子を送信します。これによりコンバージョンに関する情報のみを送信しようとしています。

イベントCV計測APIの模式図

また、CVの日時についても正確な時間を送ってしまうとユーザーの特定が可能になってしまうため、イベントCV計測APIではデータを定期的に集計・反映する仕様となっているようです。

また下記のようなことも検討されています。

  • 複数クリックからのコンバージョンは、ブラウザ側でアトリビューションモデルを踏まえたCVレポートを送信する
  • 1回のクリックからの複数のCVが発生する場合は、最大3件のレポートを送信する

未解決と思われる課題も

イベントCV計測APIの仕様が固まれば広告のCV計測の問題は解決しそうですが、以下のような問題については解決できないように思われます。

  • CVユーザーの動きを学習して、広告の最適化に活かすモデルのDSP
  • アフィリエイト等の、成果を個別CVに紐づけて承認が求められるケース

これらが軸となっている広告施策については、現時点では代わりの施策が見えていません。何らかの代替え手段をもってポストCookieにあたる必要があるように思われます。

また、イベントCV計測APIの仕組みは広告プラットフォームとの連携が前提となっています。おそらく、ウェブ解析ツールや広告トラッキングソリューション、DMPやCDPにおける個別ユーザーデータとの紐づけなどについては想定されていません。

そのためclick IDをもたないこれら事業者がこのAPIを通じてCVデータを取得することは難しそうです。これら事業者にとっては、基本的には1st party cookieで同意を取った計測にシフトすることが前提であり、今回のAPIの使用は今のところ想定されていないと思われます。

Privacy Sandboxにおける広告ターゲティング

広告のターゲティング手法について、プロジェクトの中で彼らは以下の4つの手法があると分類しています。

  • A. 1st party データによるターゲティング
  • B. コンテキストによるターゲティング
  • C. リマーケティング
  • D. 興味関心ターゲティング

Aは自社メディア内におけるターゲティングです。facebookやyahooなど、自社メディア内の行動データに基づき自社メディア内で広告を見せるものが該当します。BはGoogleやYahoo、Bingといった検索連動型やコンテンツターゲットです。

AとBについては「サードパーティcookieを用いていないため、今回のプロジェクトでは特に触れなくてよい」と述べられています。現状ではC(リマーケティング)とD(興味関心ターゲティング)に対しての代替施策について検討が進められています。

その手法についてはいくつか候補があったようですが、現在はTURTLEDOVEとFLoCという2つの手法に絞られてきているようです。

リマーケティングへの対応:TURTLEDOVE

リマーケティングの新しい仕様として、Privacy SandboxではTURTLEDOVE(ドキュメントによっては TURTLE-DOVと記載)と名づけられた新しい手法を提案しています。

(余談/英語でキジバトがturtledove のようですが、‘Two Uncorrelated Requests, Then Locally-Executed Decision On Victory’の頭文字とのこと)

Tutledoveでは、従来のようにアドサーバー側でオークションされ広告コンテンツが読み込まれ表示されるのではなく、”ブラウザがオークションを実施” し、広告主から提供されたJavaScriptコードを使用して最も関連性の高い広告が表示されるという仕様が検討されています。

参照:https://web.dev/digging-into-the-privacy-sandbox/

サーバーサイドではなくブラウザ(クライアントサイド)での処理、というのはWEBテクノロジーのトレンドではありますが、広告のオークションまでがそのような処理がされるというのは驚きです。

広告というプラットフォームの処理が各サイトの問題ではなくこのように実行されることにまだイメージがつきにくいというのは、筆者だけではないのではないでしょうか。。

興味関心ターゲティングへの対応:FLoC

興味関心型のターゲティングについては、FLoC (Federated Learning of Cohorts)というものが提案されています。

これは「個人のサイト閲覧情報をもとに、興味関心のクラスタリングのための機械学習をブラウザ側で行う」というものです。

これだけ聞くと「ブラウザ上でそんなことができるのか」と、にわかには信じがたいですが、おそらくは、現在Google がアドプラットフォーム上で行っているクラスタリングのアルゴリズムを模式化して、ブラウザにモデルとして持たせる形ではないかと予想できます。

TURTLEDOVEとFLoCの与える影響

個人情報の問題を解決することがWEBのエコシステムにおいて重要であることは間違いありませんが、今回の変更を少し抽象化すると、広告が現在アドサーバー側で行っているターゲティング管理を「ブラウザベース」のプラットフォームに置換しようとする動きだと言えます。

このような大掛かりな転換はChromeという圧倒的シェアのブラウザを持つGoogleだからできることでしょう。しかしながらChromeはChromiumというオープンソースブラウザで作られています。そのため今回の移行は「自由競争を前提としており、独占禁止法などには該当しない」という想定が前提にあるのではないかと見ています。

または、すでにAppleがiOSというOSベースでエコシステムを造り、経済圏を築いていることもベンチマークされているのでしょうか。

一方、TURTLEDOVEとFLoC については、各種アドテク事業者にとって「ユーザーのターゲティング」という最も大きな存在理由を失わせかねません。その仕様がブラウザの共通機能になってしまうと、アドプラットフォーム独自の特色が出しにくくなること考えられるためです。

そうなると既存の市場は困ったことになります。英国では、一連の動きに対してデジタルマーケティング企業連合がCMA(公正取引委員会にあたる組織)に対して訴状を提出するなど、対立する動きも出てきているようです。

今後予想されること

今後の見通しはまだ分からないことだらけですが、もしPrivacy Sandboxが現状のまま進んだ場合、広告プラットフォームは以下のような最適化が進むかもしれません。

  • CVユーザーと広告ターゲティングクラスタの相関を分析し、ターゲティングへ活用
  • 商品データ(フィード)と広告ターゲティングクラスタの相関を分析し、ターゲティングへ活用
  • プレースメント側(コンテクストとビューアビリティ)への最適化

ブラウザの重要性も高まるため、ブラウザの開発やシェア獲得競争の動きも大きくなっていくのではないでしょうか。

まとめ

この記事では、現時点でPrivacy Sandboxプロジェクトから読み取れる内容を解説しました。

2020年ももうすぐ終わりますが、サードパーティcookieラストイヤーとなる(?)2021年も、アドテク界隈は目が離せなさそうです。

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中村研太

京都大学理学部卒。常務取締役。Webマーケティングスペシャリストとしても、SEOや広告などのマーケティング施策の最適化による実績多数。

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