こんにちは。プリンシプルの木田です。

こちらのブログ記事では、GA4の「ユーザーベース」のレポートの対応のコツを解説しました。そのコツとは「ユーザー単位で一意に決まるディメンションや指標を用いたレポートだと理解すること」です。

それを理解した上で、マーケターは「ユーザーベース」のレポートをどのように活用し、どのようなリターンを得ることができるのか。本稿ではユーザーベースのレポートの活用方法を解説します。

GA4の仕様を解説したブログ記事はたくさんありますが、活用法を解説した記事はGA公式ブログのこちらの記事にで少々触れられているだけで、ネット上に出回っている情報は少ないと思います。ぜひご活用ください。

GA4の活用の本質は「新規顧客獲得戦略の立案と評価」だと筆者は考えています。

「新規顧客獲得戦略」は比較的聞き慣れない単語だと思いますので、現状主流となっている「ロワーファネル刈り取り戦略」と対比して説明します。

ロワーファネル刈り取り戦略はセッションベースで考えた

現在を含め、これまでのWebマーケティングは、「ファネルの下部(=ロワーファネル)」と呼ばれる、「すぐにでもコンバージョンする可能性の高いユーザー」に注力してきました。購入意欲の高いユーザーを集客し、訪問したセッションで、あるいは訪問したセッションから時間をおかずにコンバージョンを獲得することに力を入れてきたのです。この戦略は「ロワーファネル刈り取り戦略」とでも呼べるものです。

ロワーファネル刈り取り戦略の立案や評価には「セッションベース」のレポートが適しています。セッションベースのレポートが参照元・メディア・ランディングページなどを主なディメンションとし、直帰率・ページ/セッション・コンバージョン率(=この指標はセッションベースです。)を指標とするためです。

ロワーファネル刈り取り戦略の現状

しかし、多くの事業者が「ロワーファネル刈り取り戦略」をとったことで、限りある「ロワーファネルにいるユーザー」の取り合いなります。顧客獲得数は頭打ち、かつコスト効率が悪化傾向にあるというのが、全体としての現状だと思います。

この状況は事業者にとって大きな課題ですが、いち早くこの課題の重要さに気づいたのは広告に収益を依存するGoogleであり、解決策の一つとして提示したのがGA4の「ユーザーベース」のレポートだと筆者は考えています。

新規顧客獲得戦略とユーザーベースレポート

今後さらに重要になる新規顧客獲得戦略

さて、では「ロワーファネル刈り取り戦略」が頭打ちになったあと、事業者は事業拡大のためにどのようにWebを利用したらのでしょうか。その答えのひとつは「新規顧客戦略に基づくWebマーケティング」だと筆者は考えています。

「ユーザーがファネルのどこにいるか?」ではなく、「ユーザーはそもそもどのような人か?」を考え、「正しいユーザー」をだけを選択的に自社サイトに誘導し、顧客になってもらう。という考え方です。

たとえば、「春物 ワンピース」を探しているユーザーにも様々あります。

  • 二十歳になったばかりの、高校の同窓会に着ていく予算1万円でワンピースを探している都市圏以外に在住するユーザー
  • 40歳を超え、ホームパーティに友人を招く時に着るワンピースを予算10万円で探している都市圏在住のユーザー

こうした多様なユーザーの中から、自社のブランドイメージやターゲット顧客層、製品の価格帯などが合致するユーザー(=正しいユーザー)を見つけ出し、顧客になってもらうように働きかけるという考え方です。

新規顧客獲得戦略はユーザーベースで考える

それを理解した上で以下の「ユーザーベース」のレポートを見てください。


ユーザーベースレポート例

丹念に読み解くと、「ユーザー別平均LTV収益」がセグメントごとに大きく異なっていることがわかります。そこから、このビジネスにとっての「正しい顧客」は「35歳~44歳の女性で、特に、自分から能動的に探索して自社を発見してくれたユーザー」と言えます。

(上記のレポート例は簡便化しています。現実には、自社にとっての「正しい」ユーザーを描き出すには他のユーザーベースのディメンションや指標を組み合わせたレポートをいくつか精査する必要があると思います。)

そして、これらユーザーのセグメントを深堀りして得られる以下の問いへの答えを分析することで、新規顧客戦略をブラッシュアップできます。

  • 35~44歳の女性ユーザーがOrganicから初回訪問した際、何を探しに訪問してくれたのか?
  • 35~44歳の女性顧客が追加購入してくれた商品は何で、初回購入からどのくらいの時間が経過したときか?
  • 35~44歳の女性顧客が追加購入してもらうために効果的なコンテンツは何か?
  • 初回訪問チャネル間での「ユーザー別平均LTV」の差は有意か?
  • 初回訪問チャネルが検索広告であってもOrganicと同等のユーザー別LTVは実現できるか?

このように自社の「新規顧客獲得戦略」をチェックし、必要に応じて修正することで、「正しい顧客」のサイト訪問を増やすことができます。そして「正しい顧客」の初回購入率やLTV増加率を改善するためのヒントが得られます。

補足:ユーザーベース移行の意図を推測する

筆者は、GoogleがGoogleアナリティクスを大きく「ユーザーベース」に振ったということは、「事業者側が自社にとっての正しい顧客を描き出せば、Google広告を通じてそれらのユーザーにアプローチできる」という自信の現れだと捉えるべきだと考えています。

だとすると、事業者側はいち早くユーザーベースのレポートに慣れ、「正しい顧客」の定義を通じた「新規顧客獲得戦略」を描き、同戦略にそった戦術展開をすべきと考えます。

GA4時代、セッションベースでの改善はどう行うのか?

さて、GA4のレポートが「ユーザーベース」主体となったこと、そしてそれらのレポートは「新規顧客獲得戦略の立案と評価」に用いるべきものであることが、少なくとも概念的には理解頂けたものと思います。

では、もう「セッションベース」のレポートは不要なのでしょうか?

筆者はそうは思いません。私達の「顧客」は人間ですから、その振る舞いは「状況」と「認知能力」に影響を受けるはずです。

そのため同じ、”宮崎 焼き鳥”と検索するユーザーであっても、「東京から、PCで、午後2時に検索するユーザー」と「宮崎から、スマホで、午後6時に検索するユーザー」では状況や検索意図は違うはずです。それらの異なるユーザーの検索意図に自社コンテンツがどれだけ適切に応えられているかはセッションベースのレポートで判別すべきです。

また、GA4でなくなってしまった「ランディングページ」ですが、我々は人間として「ファーストビューの印象」や「Call to Actionのわかりやすさ」によって、次のページに進んだり、直帰したりするはずです。それらのパフォーマンスは当然、「セッションベース」のレポートでしか確認できません。

しかし、GA4は、基本的にはそれらに対応していない。筆者は、そのような「セッションベース」で判別すべきパフォーマンスは、今後、Google アナリティクスではなく、Googleオプティマイズで可視化、分析、改善施策立案、評価する方向に進むのではないかと思っています。

つまり、今後GAにセッションベースのレポートが復活することはなく、ユーザーベースはGAで、セッションベースはGoogleオプティマイズで。といった棲み分けに進むのではないか?という推測です。

まとめ

本稿では、以下の論を展開いたしました。多少なりとも皆さんのお役に立てたのであれば幸いです。

  • セッションベースのレポートは「ロワーファネル刈り取り戦略」の立案と評価には適しているが、ロワーファネル刈り取り戦略は頭打ちになっており、別の戦略が必要。
  • 「別の戦略」には「新規顧客獲得戦略」があり、ユーザーベースのレポートから「自社にとって正しい顧客とは誰か?」を考えることで実現する。
  • セッションベースのレポートは今後も意味を持ち必要とされるであろうが、GAに復活することはなく、セッションベースでの改善はGoogleオプティマイズで行うようになるのではないか?(筆者の推測)

ユーザーベースのレポートは新規顧客獲得戦略の他に、ナーチャリング戦略にも活用できます。別の記事で解説する予定ですが、今すぐ知りたいという方は、個別コンサルタント宛問合せフォームからお問い合わせください。

プリンシプルではGA4の導入支援も行いますが、それにとどまらず「新規顧客獲得戦略」、「ナーチャリング戦略」の立案支援もサービスとして提供しています。プリンシプルに相談してみたいという方は、こちらのフォームからお気軽にお問い合わせください。ご相談にはもちろん、無料で対応させていただきます。

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木田和廣

早稲田大学政治経済学部卒。取締役副社長。カスタマーサクセス室室長。チーフ・エバンジェリスト。

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