広告運用に携わっていると、「Google広告とGA4で、クリック数やコンバージョン数が合わない…」といった悩みに直面することがありますよね。

これは単なる不具合ではなく、両ツールの役割と仕様の違いが原因です。本記事では、このデータ乖離の謎を解き明かし、正確な分析に基づいた広告評価の方法をご紹介します。

なぜ数字は合わないの?

Google広告とGA4は、それぞれ得意なこと(目的)が違います。例えるなら、お店の「入口の呼び込み係」と「店内の接客係」のようなもの。見ている場所と役割が違うので、報告する数字がズレるのは自然なことです。

  • Google広告は「何人が広告に興味を示したか(クリック数)」を重視します
  • GA4は「サイト内でどんな行動をしたか(セッション数)」を重視します

この役割の違いが、数字の乖離を生む根本的な原因なのです。

クリック数(広告)とセッション数(GA4)がズレる3つの原因

クリック数の方がセッション数より多い場合、主な原因は以下の3つに分けられます。

① 仕様上(定義)の違い

ツールの設計上の違いによってズレが生じます。例えば、ユーザーが30分以内に広告を2回クリックした場合、Google広告では「2クリック」とカウントしますが、GA4では「1セッション」としてカウントされます。これは異常ではなく、仕様(定義の違い)によるものです。(詳細は後述)

② 設定ミス

最も注意が必要な原因が設定ミスです。以下のミスがないか確認しましょう。

  • 自動タグ設定がオフ:Google広告とGA4を連携させている場合、自動タグ設定(gclid)がオフだと、広告からの流入を正確に計測できません。
  • GA4タグが正しく発火しない:ランディングページにGA4タグが正しく設置されていなかったり、何らかの理由で発火しなかったりすると、セッションが計測されません。
  • 社内IPアドレスの除外:自社のIPアドレスをGA4から除外している場合、社内のクリックはセッションとしてカウントされません。

③ 外部からの影響(External Factors)

ユーザーの環境によって計測がブロックされるケースもあります。広告ブロッカーや、ユーザーのプライバシー設定により、GA4の計測タグがブロックされることがあります 。これを完全に防ぐことは難しいのが現状です。

コンバージョン数がズレる2つの根本原因

クリック数とセッション数の乖離に加え、コンバージョン数にもズレが生じます。主な原因は、「アトリビューションモデルの違い」と「セッションの切れ方」です。

①アトリビューションモデルの考え方の違い

コンバージョン数のずれは、成果を「誰の手柄」とするかというアトリビューションモデルの考え方や定義、計測ロジックの違いが大きな原因です。

アトリビューションモデルとは?

アトリビューションモデルとは、コンバージョン(成果)に至るまでのユーザーの行動経路を分析し、その過程にある複数のタッチポイント(広告、検索、SNSなど)にどれだけの貢献度があったかを評価する手法です 。

2025年9月現在では、Google広告とGA4の両方でデータドリブンアトリビューション(DDA)がデフォルトの設定となっております 。

データドリブンアトリビューション(DDA)とは?

データドリブンアトリビューション(DDA)とは、Googleの機械学習を活用し、コンバージョンに至ったユーザーと至らなかったユーザーの経路データを分析して、各タッチポイントの貢献度を自動で算出するモデルです。DDAは、各アカウントのデータを用いてクリックインタラクションの貢献度を計算する点が、他のモデルと異なります 。

Google広告とGA4でのアトリビューションモデルが同じDDAでも、なぜCVにずれが生じるのでしょうか?

ーGoogle広告の考え方

Google広告のデフォルト設定であるDDAが貢献度を割り当てられるのは、あくまでGoogle広告の有料チャネル内です。たとえば、以下の画像で示されているコンバージョン経路を見てみましょう。

この経路では、ユーザーがPaid Searchの広告をクリックした後に、Email経由でコンバージョンしていますが、Google広告は有料チャネルであるPaid Searchの成果として評価します。Paid Search経由で流入した後、その他Google広告を除く複数チャネルからの流入をまたいでも、一定期間内にCVすれば、Google広告のロジックでPaid Searchに貢献度が割り振られるということです。

一方で、下記のように検索広告で流入した後、別のGoogle広告からの流入を挟んでCVした場合は、GoogleのロジックでCVの貢献度が割り振られます。

ーGA4の考え方

GA4でのDDAは、Google広告のDDAとは異なり、すべてのチャネルを横断的に評価します 。

GA4では「イベントベース」のデータモデルを採用しており、ユーザーのあらゆる行動をイベントとして計測します 。その上で、有料広告・オーガニック検索・直接流入・参照元など、すべてのチャネルがコンバージョンにどの程度貢献したかを機械学習で分析します 。これにより、上記画像の経路では、有料広告だけでなく、EmailやSocialといった他のチャネルの貢献度も適切に評価されます。

この「評価の対象範囲」が、Google広告とGA4の間でコンバージョン数にずれが生じる最大の原因です。

②セッションの切れ方による乖離

DDAがユーザーの行動経路全体を評価するのに対し、GA4の標準レポートの多くは「セッションのデフォルトチャネルグループ」に基づいて数値を表示します。この「セッション」の定義の違いが、広告CV数との乖離を引き起こすことがあります。

GA4では、ウェブサイトでの操作が30分以上ない場合にセッションが途切れます。そのため、ユーザーの行動が30分の無操作を挟むかどうかでセッション数が変わり、結果としてコンバージョンが紐づく流入チャネルも変わってしまうのです。

例えば、以下の表を見てみましょう。

ユーザーAとユーザーBは同じく「ディスプレイ広告」と「オーガニック検索」を経由してコンバージョンに至っています。しかし、ユーザーAの行動は30分以内に行われたためGA4上では1セッションとしてカウントされます。

この場合、コンバージョンは「セッションのデフォルトチャネルグループ」であるDisplayに紐づき、GA4の標準レポートではDisplay経由のCVとしてカウントされます。標準レポートでは、セッションまたはユーザー軸での分析となるため、Organic Searchでの流入があったという事実がそもそも記録されないということです。

一方、ユーザーBの行動は30分以上の間隔が空いているため、GA4では2つのセッションとしてカウントされます。これにより、コンバージョンは最後の流入チャネルであるOrganic Searchに紐づき、セッション軸であるGA4の標準レポートではOrganic Search経由のCVとしてカウントされます。

このように、GA4の標準レポートで「セッションのデフォルトチャネルグループ」を見て分析する場合、セッションの切れ方によってコンバージョンの貢献先が変わるため、広告プラットフォームの数値やDDAの分析結果とは異なる数値が表示される可能性があるのです。

セッションの切れる条件に関して詳細を知りたい方は下記ブログを読んでみてください。
セッションの切れる条件と、切れるべきでないケースとその対策

まとめ:データに確信を持ち、次の一手へ

Google広告とGA4のデータ乖離は、それぞれのツールの目的や定義、ロジックの違いから生じる自然な現象です。

  • クリック数とセッション数:30分以内の行動や外部要因によってズレが生じます。
  • コンバージョン数:Google広告のDDAは有料チャネル内、GA4のDDAはすべてのチャネルを評価する「評価範囲の違い」が大きな原因です。さらに、標準レポートでは「セッションの切れ方」がコンバージョン計測に影響します。

重要なのは、これらの違いを正しく理解し、目的(認知効果の評価、直接的な成果の評価など)に応じて、見るべき指標を使い分けながら分析することです。

複雑なデータ分析や広告運用の課題でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社のビジネス成長をデータで後押しします。

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藤野 美梨

解析・広告コンサルタント。入社後、解析コンサルタントとしてキャリアをスタート。
GA4やLooker Studio、Tableauを用いたデータ分析に加え、GA4活用設計や研修講師を担当。現在は広告運用を兼任し、META、Google、Yahoo、LINE広告など多数媒体を担当。
外資系企業の支援も多数行い、英語での支援実績あり。データ解析と広告運用、両面からお客様の事業成長に務める。

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