はじめに
Google Analytics でアクセスを解析する際に重要な指標はたくさんあります。中でもセッションへの理解は、ユーザの行動を分析する上で不可欠です。
しかし、セッションを正しく捉えて適切な設定を行えているケースが少ないのが実情となっています。
本記事では、まずセッションの概念と、セッションが切れる条件を見直します。次に、本来はセッションが切れるべきでないケースをピックアップし、対策を考えます。
セッションとは?
まずはセッションという単語をアクセス解析の文脈から離れ、抽象的に捉えてみます。
‘session’ を分解すると、’ses’ + ‘sion’ となります。
それぞれの意味を調べてみると、以下のことが分かりました。
- ses: sed-という語が変化したもので、意味は 座る、座って相談する
- sion: こと(名詞化)
みんなで座って何かを話し合うようなイメージですね。
‘session’ の原義は、’何らかの集まり’ のようです。
次にアクセス解析のコンテキストでセッションを考えてみましょう。
アクセス解析でも、’何らかの集まり’ を示すはずです。それはなんなのでしょうか。
アナリティクスヘルプでのセッションの用語を見ると、以下の定義があります。
サイトやアプリでユーザーが操作を行っている時間のことです。
(参照: セッション)
ユーザの操作を1つのまとまりとして、セッションと呼んでいるのですね。
セッションが切れる条件
ではアクセス解析におけるセッションでは、どのような区切りを1つのまとまりとしているのでしょうか。それを知るために、セッションが切れる条件を以下にまとめます。
時間による期限切れ
デフォルトの設定では、ユーザの操作が30分間行われないとそのセッションは終了します。またビューのタイムゾーンを基準として、1日の終わりにもセッションが切れます。
ちなみにGoogle Analytics ではサーバにヒットが送信されない場合、ユーザの操作がないと判定されます。そのためページ内でスクロールなどをしても、基本的には操作となりません。結果としてセッションは30分で切れます。
キャンペーンの切り替わり
アナリティクスでは、ユーザーのキャンペーン ソースが変わるたびに新しいセッションが開始されます。現在のセッションが終わっていない (最後のリクエストから 30 分経過していない) 場合でも、キャンペーン ソースが変わると最初のセッションが終了して、次の新しいセッションが開始されます。
(参照: アナリティクスでのウェブ セッションの算出方法)
時間による期限切れよりも、キャンペーンの切り替わりへの理解が不十分で、意図しない計測になってしまう場合が多いです。
キャンペーン ソースはどのような場合に切り替わるのでしょうか。
大きく3つあります。
- 流入元の切り替わり
サイトへの流入元の切り替わりによって、セッションは別のものとなります。例えば、example1.com にあるリンクから、サイトAにアクセスしました。この時点でexample1.com を流入元としたセッションが始まります。次にexample2.com のリンクから同じサイトAにアクセスした時、一連の操作が30分以内であっても、example2.com を流入元とした新たなセッションが生成されます。
また、直接流入はGoogle Analytics が参照元を特定することができません。この場合、前回のセッションの流入元を継承する仕様になっています。 - キャンペーンの切り替わり
Google Analytics では、キャンペーンを設定するために、URL にキャンペーンごとのパラメータを与えることができます。- utm_source: プロパティにトラフィックを誘導した広告主, サイト, 出版物, その他を識別します (Google, ニュースレター 4, 屋外広告など)。
- utm_medium: 広告メディア やマーケティング メディア を識別します (CPC 広告, バナー, メール ニュースレターなど)。
- utm_campaign: 商品のキャンペーン名、テーマ、プロモーション コードなどを指定します。
- utm_term: 有料検索向けキーワードを特定します。検索広告キャンペーンにタグを設定する場合は、utm_term を使用してキーワードを指定することができます。
- utm_content: 似通ったコンテンツや同じ広告内のリンクを区別するために使用します。たとえば、メールのメッセージに行動を促すフレーズのリンクが 2 つある場合は、utm_content を使用して別々の値を設定し、どちらが効果的か判断できます。
- utm_id: キャンペーンのID。キャンペーン情報をデータ インポートにより生成する際に用いるキーとなるID。
上記のパラメータが異なるリンクからの流入は、キャンペーンが切り替わります。なのでセッションも変わります。
- Google 広告の自動タグ設定
Google 広告経由でサイトに訪れた際、クリックごとにユニークな GCLID という id が付与されます。この値が異なると、キャンペーン が切り替わり、結果として新たなセッションが開始します。
セッションが切れるべきでないケーススタディ
具体的なケースを考えていきましょう。EC サイトの運営者様を仮定します。
ユーザAがGoogle 検索広告からアクセスをしてきました。Google 広告では、基本的には自動タグを設定して利用します。この場合、ユーザがクリックした URL にGCLID が自動的に付与されます。また、参照元とメディアはそれぞれgoogle, cpc となりセッションが始まります。購買ファネルに従ってユーザAが行動したとすると
商品詳細ページ -> カート追加 -> 決済手続きページ -> サンクスページ
となります。
ここで問題となるケースは、決済手続きにおいて発生します。
決済フローの処理を外部ASP サービスのWeb サイト上で実施し、決済が完了した後に元のEC サイトに戻ってくる場合です。
そのようなケースでは、サイト推移は以下のようになります。
1. EC サイト -> 2. 外部ASP サービス -> 3. EC サイト
2 から3 への推移時、外部ASP サービスを流入元としてEC サイトに訪問したと判断され、新たなセッションが開始されます。
なのでユーザAのセッションでは、サイトのアクセスから決済手続きまでのセッションと、決済手続き完了からサンクスページまでのセッションは別にカウントされます。
これは非常に大きな問題です。なぜなら広告からの流入でコンバージョンが発生したにも関わらず、決済用の外部ASP サービスからの流入でコンバージョンしたことになってしまいます。
広告からのコンバージョン時だけでなく、自然検索やその他様々な流入元から流入した場合であっても、決済時に外部ASP サービスを利用することで、外部ASP サービスからの流入でコンバージョンしたことになります。
そのため正確なコンバージョンが計測されません。
コンバージョンを用いる指標はマーケティングの中でも重要で、セッションごとに正しく取得する必要があります。
上記の対策
同一セッションとしてカウントし、正しいコンバージョン測定をするための対策は2つ考えられます。最後に、以下の方法の使い分けについて考えてみます。
- クロスドメイン トラッキングを設定する
- 参照元除外をする
まずクロスドメイン トラッキングについて、概要を引用します。
クロスドメイン トラッキングを使用すると、2 つの関連サイト (e コマースサイトと、別のショッピング カート サイトなど) でのセッションが 1 回のセッションとしてアナリティクス レポートに記録されます。これは「サイト間のリンク」とも呼ばれます。
(参照: クロスドメイン トラッキングについて)
クロスドメイン トラッキングをするために、上記の例ではEC サイト(プライマリ ドメイン)と外部ASP サービス(セカンダリ ドメイン)の両方のトラッキング コードを編集する必要があります。
2つの対策のうち、できることなら1. が望ましいです。なぜならクロスドメイン トラッキングでは、セカンダリ ドメインでのユーザ行動をトラッキングできるためです。
しかしPayPal のように、トラッキング コードの編集を許可していない決済サービスがあります。
そのような場合は、参照元除外 リストに追加するしかありません。参照元除外 リストに特定のドメインを追加すると、上記のキャンペーン ソースの切り替わりの3つの条件の内、流入元の切り替わりを、追加されたドメインに対して無効化します。よって、新しいセッションは開始されません。
ただし、参照元除外 リストに追加したサイトにはGoogle Analytics の計測タグを追加していないため、ユーザの行動をトラッキングはできないことに留意する必要があります。
まとめ
本記事では、抽象的なセッションについて考えました。抽象的なセッションとは、「なにかの集まり」としました。
そこからアクセス解析におけるセッションは、ユーザの操作の集まりだと振り返りました。
続いてセッションが切れる条件を見直しました。
- 時間による期限切れ
- キャンペーンの切り替わり
また本来切れるべきでないセッションのケースを挙げ、その対策を考えました。
- クロスドメイン トラッキングを設定する
- 参照元除外をする
セッションを理解し、正しい計測をして、日々のマーケティングに活かしていきましょう。