はじめに

Google広告の自動入札機能「目標コンバージョン単価(以下、目標CPA)」を設定し、失敗したことがあります。


↑の画像はGoogle広告管理画面のキャプチャです。青線はコンバージョン数、赤線がコンバージョン単価(CPA)を示しています。

2017年7月に「目標CPA」を適用した結果、その次の月にはCPAがみるみる悪化し、結局1ヶ月ほどで手動入札に戻しました。しかし、その1年後の2018年8月に機能は違えど自動入札の1種である「コンバージョン数の最大化」を適用したところ、CPAは低下し、コンバージョン数は大きく増加しました。

この記事で、自動入札は「コンバージョン数の最大化」が良いよね、ということを主張したい訳ではありません。自動入札の失敗に対してどのような対処を行い、どのような結果になったのか、あくまで1つの事例としてご覧ください。

失敗の原因自体は非常に初歩的なものであるため、

  • Googleの自動入札機能を使用したことがない方
  • 広告グループを細かく分けることがどういう失敗を招くか、実例を以って上司やクライアントへ説得したい方

などにおすすめの記事となります。

適用した自動入札の種類とその結果

それではまず失敗にフォーカスを当てていきます。

適用した自動入札

目標コンバージョン単価

適用したキャンペーン

指名クエリ(※ このページでは、自社サイト名や自社商品ブランド名など、広告運用をする会社が商標を有するクエリを指します。)を含めないキーワード群をまとめたキャンペーン

予算

100万円/月 程度

結果


目標CPA適用前後3週間比較(※1)
表示回数:47.2% DOWN
クリック数:46.8% DOWN
コンバージョン:40% DOWN
費用:3% DOWN
CPA:¥67,680 → ¥109,228

…惨憺たる結果となりました。この結果を受け、自動入札から手動入札へと戻しました。

失敗した原因とその対処

失敗の原因は次の2点が挙げられます。

  1. 広告グループが非常に多く存在し、広告評価が分散していた
  2. 目標CPAを適用するために必要なCV数が足りなかった

順番に記載していきます。

1. 広告グループが非常に多く存在し、広告評価が分散していた

自動入札を適用したキャンペーンの広告グループ数は100を超えていました。当然のことながら、100万円/月程度のキャンペーンに対して100も広告グループを作成すると、1広告グループあたりの広告表示が分散することとなります。

なお、広告グループは下記のように分類していました。

  • 完全一致と部分一致を分けて広告グループを作成していた
  • 検索広告向けリマーケティング当てたものとそうでないものとで分けていた
  • 表示回数の少ない掛け合わせの語句まで細かく分けていた

hagakureやGORINといったアカウント構造に関する考え方をご存知の方であれば、違和感を覚える広告グループの構成です。

↓図は先ほどの図の下部を拡大したものです。

自動入札適用後、1つの広告グループ(CV獲得数の多い広告グループ)に集中させていた広告費が分散し、1つの広告グループに集中していた表示回数も分散しました。具体的には表示回数1,000以上の広告グループの数が36から41へと増加しています。

自動入札適用前に獲得していなかった広告グループでのCV獲得は見られたものの、全体としてCPA効率の悪い広告グループへ広告費が回り、キャンペーン全体のパフォーマンスが悪化しました。

この問題を受け、過去にCVを獲得したことのあるキーワードを中心に広告グループをまとめなおしました。100以上存在した広告グループを最終的に5つの広告グループへと集約しています。

2. 目標CPAを適用するために必要なCV数が足りなかった

Googleより、●件以上/月のCVが必要、と言及されていたこともありました。一応その条件は満たしていたものの、結果的にはGoogleが最適化を行うために必要なコンバージョンのボリュームが足りなかった可能性があります(※2あくまで当時の話です)。まずは十分なCV件数を確保する必要があると考え、広告グループを5つへ絞った後、手動入札から「目標CPA」、ではなく「コンバージョン数の最大化」へと切り替えることにしました。

その結果、

コンバージョン数の最大化適用前後3週間比較
表示回数:77.4% UP
クリック数:8.6% DOWN
コンバージョン:92.3% UP
費用:37.8% DOWN
CPA:¥130,622 → ¥42,215

コンバージョン数は増加し、費用は減少。CPAが大きく下がる結果となりました。興味深いのが、とある広告グループ(↑の一番左の広告グループ)は費用が下がったにも関わらず、表示回数が大きく伸びている点です。実はこの広告グループ、キーワードは4つしか設定していません。

100円以上だったクリック単価が、70-90円台へと下がっています。表示回数でみると、部分一致以上に完全一致の表示回数の伸び率が高くなっています。自動入札により時間やデバイス、ターゲティングなどが最適化されたためか、リーチが伸び、コンバージョン獲得件数が伸び、結果的にCPAを下げることができました。

どの自動入札を使用すべきか

今回対象としたキャンペーンでは、結果的に「コンバージョン最大化」を使用することで、大幅にCPAを下げることができました。しかしながら「コンバージョン数の最大化」を使用することが必ずしも成果につながる、というわけではありません。別のアカウントとなりますが、

↑図のように、「コンバージョン数の最大化」を設定しても、CPAが高騰したことがありました。※そのあとCPAが下がっていますが、別の入札タイプを使用しています。

結局のところ、どの自動入札を使用すればよいのか、正解はありません。最初にどの入札タイプを使用したら自信のない方は、Google広告の管理画面が示す、最適化案を確認してみても良いかもしれません。

ただ、設定して一定期間経た後は想定していた通りに自動入札が動いているか、必ず確認するようにしてください。

最後に~Google自動化との向き合い方

未知のもの、理解しにくいものほど人は恐怖を覚える、とホラー系フィクション作品で言及されているのを読んだことがありますが、現時点ではGoogleの自動化もブラックボックスとなっている要素が多いため、信用して良いものか悩むことがあります。

とはいえ、Googleはさらに自動化を推し進めています。

いつ頃からか、Google広告の管理画面で手動入札を選択するとアラートが表示されるようになりました。

「個別単価設定では掲載結果が低下する可能性があります。」
このメッセージからは、もはや手動入札を使用する方が成果が悪くなるという印象を受けます。

私見ですが、いずれは手動入札の機能自体がなくなってしまう可能性もあるのではないでしょうか。そうすると、いずれは自動入札と向き合わなくてはなりません。

筆者は、自動化においてもPDCAサイクルは有効であると考えています。

  1. 目標を立てる。(Plan)
  2. (自動的に)実行される(Do)
  3. 結果を評価する(Check)
  4. あぶりだされた問題点を改善する(Action)

2、Doが自動的に最適化されているだけであり、多くはまだ人間による意思や行動が介在
しています。

自動化を全く活用しないのではなく、手放しで信用するのでもなく、上記1~4の流れを意識して自動化と向き合った広告運用を心掛けることが、本当の成果を引き出すためのカギではないでしょうか。


※1
自動入札適用後2週間はパフォーマンス低下することがある、という話を受けたことがあるため、3週間、さらにその後も注視していたものの、結局CPAは高騰したままでした。逆に自動入札から1週間経たずに成果が改善することもあります。結局のところ2週間云々ではなく、自動入札の機械学習がどれだけデータを収集できたか、すなわち「どれだけ広告表示されたのか」に依存するため、期間はあまり関係ないのではないかと筆者は考えています。


※2
あくまで当時の状況です。Googleは自動入札に関するアップデートを随時行っており、19年1月に実施されたGoogleのセミナーでは、必ずしもキャンペーンにCVが蓄積されている必要はない、という発言もありました。

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