はじめに

日本国内の市場飽和、人口減少から海外市場開拓を成長戦略に上げる企業は非常に多くなってきている。当社では企業の北米進出支援を行っているが、当然のことながら海外進出がうまくいく企業もあれば、うまくいかない企業もある。自身の経験も加味し、海外進出における重要なポイントを、5回のシリーズでお伝えしたいと思う。

海外進出で成功への前提

今回、第一回目としてお伝えしたいのは、「経営陣のコミット」についてだ。こちらは最も重要で海外進出の大前提である。日本市場が頭打ちになったからと言って、「じゃあ海外だ」と単純に短期的に考えるのではなく、現状を分析し、日本市場で本当に打つ手がないのかどうか、まずはしっかり検討すべきである。顧客ターゲットを変更するとか、国内市場でも何らかの切り口はあるはずだ。日本でうまくいかない、収益化が難しい事業が、市場を変えることで上手くいくと思ってはいけない。むしろ、海外では更に大きな困難が待ち受けていると思う覚悟が必要である。

海外進出で重要なのは? 経営陣のコミットが大前提

それでも、「やはり海外進出をしたい」なら、相応の戦略が必要になる。そのためには、企業として海外進出する理由を明確化し、短期ではなく、中長期戦略に組み込み、ビジョンに落としこむことが重要だ。明文化されたビジョンがあれば、ピンチに立った時も、「会社の方針なのだから、達成しよう」という共通意識の中に立ち返り、踏ん張ることができる。これは非常に大切なことだ。

当社の場合、社長である私が、もともと海外志向が強かったこともあり、創業当初から世界を目指す、といい続けてきた。そして会社のビジョンや行動規範にも「世界をリードする・・・」「国境を超えて」というものが盛り込んである。つまり会社の方向性として海外を目指すことが明文化されている。実際は創業して当初5年は、海外以前に国内で生き残る・存続することがメインであったが、それでも創業5年目で国内が軌道に乗ると、社長である私自らが家族を連れ移住した。

経営陣のコミットは現地人採用などにも影響する。私が拠点を新たに作り、スタッフ採用をする際、求職者からされる質問で多いのは、「すぐに撤退したりしないか?」というものだ。採用される側としては当然の質問であろう。しかし、当社のアメリカ事業の説得力は、すぐに理解してもらえる。「社長、もしくは経営陣が移住までしていることは、すなわちアメリカ拠点のビジネス展開が最重要であることの証拠」という説明が成り立つからだ。こうした経営姿勢は、現地でもトップクラスの人材を口説くにあたっても、多いに役立った。

実際に社長がいる必要はないとしても、常に経営陣が注視する、定期的に訪問する、コミットをして当たり前のようにある障害を乗り越えて投資し続ける、という姿勢を見せ続けることは大切である。

海外進出の事例

名だたる日本の有名企業でも、海外進出に失敗した事例は多い。2001年にユニクロは、ロンドン進出を果たした。一時は21店舗に拡大したものの、巨額の赤字を計上した挙げ句、ロンドンから撤退している。

海外進出で重要なのは? 経営陣のコミットが大前提

ユニクロなどもトップと会社全体がコミットし続けている例であろう。2001年に同社は、ロンドン進出を果たした。一時は21店舗に拡大したものの、現地のやり方に任せすぎ、巨額の赤字を計上した挙げ句、ロンドンから撤退している。普通ならそこで海外戦略自体を見直しするだろう。ところが海外進出を成長戦略に掲げた同社は諦めず、その失敗をいかした。日本でのやり方に立ち返りつつ、現地の市場やトレンドに精通する人材と強力なタッグを組んで、海外事業を軌道に乗せたのである。

これは失敗をプラスに生かし、改めて会社全体として海外進出への覚悟を決め経営陣がコミットすることで上手くいった良い例だ。つまり、経営陣のコミットは、海外進出を成功させる大前提といえるのである。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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