はじめに

こんにちは。プリンシプルのマーケティングコンサルタントの早川です。

マーケティングとプロジェクトマネジメントは、従来あまり同時に語られてこなかった分野ですが、実際には密接に関連しています。なぜなら、どちらの領域でも、いくつかの基本的な要素が共通しているからです。また弊社が支援を行っているデジタルマーケティングの領域においては、プロジェクトマネジメントの概念が欠如することで、日々様々な課題が発生しています。

この記事では、マーケティングにおけるプロジェクトマネジメントの重要性に触れ、その上でマーケターも知っておきたいWBSの作り方を紹介します。

マーケティング活動にプロジェクトマネジメントが必要な理由

マーケティング活動がプロジェクトとして管理されない、ということは、以下のような項目が適切に設定されていない、あるいは運用されていないということになります。

  • 明確な目標設定
  • 計画立案
  • リソース管理
  • 成果の評価

上記項目が適切に設定・運用されることなくマーケティング活動で成果を上げることは難しいでしょう。

よくあるケースとして、計画立案・リソース管理の失敗・見積不足があります。例えば、新しい広告キャンペーンを立ち上げる場合を考えてみましょう。

具体的にどのようなタスクが発生し、どの程度の工数感が必要となるかを解像度高くイメージすることは、広告運用の経験がないと中々イメージできないのではないでしょうか?そのため期日に対して余裕をもった進行が出来ず、残業をしたり、作業を焦ったためにミスが発生したり、あるいは期日を超えてしまったり、といった事象が発生します。

これらは、プロジェクトマネジメントの欠如によって発生する事象です。あるいは、マーケティング活動にプロジェクトマネジメントが必要である、という認識の欠如により発生する事象ともいえます。

一部サイト制作などの「納品」物が明確な案件に関しては、プロジェクトマネジメントの考え方が適用されて、上記項目が適切に設定され運用されていることもあります。しかしそれは例外的なケースで、プロジェクトの進行は担当者の属人的スキルに依存している、というケースが多いのではないでしょうか?

背景には、広告クリエイティブの制作や、Web広告の運用は、属人的スキルこそが、成果を上げる鍵という考えがあるように思えます。つまり、属人化は防ぐべきものではなくむしろ推奨されるものとして、プロジェクトの進行を構造的に管理するという概念がなかったものと考えられます。

しかし広告プロモーションも数あるマーケティング活動の一部のため、マーケティング活動全体を適切に管理するためにも、個別の活動もやはり適切に管理していく必要があります。

WBSの構成要素

さてマーケティング活動におけるプロジェクトマネジメントの重要性は上記の通りですが、具体的にはどのようなことを行えばよいのか。まず、プロジェクトマネジメントの基礎であるWBSを紹介します。

WBSは、ワーク・ブレイクダウン・ストラクチャーの略称です。具体的にはプロジェクトの目的を達成するために必要なタスク一覧のことです。以下がその構成要素となります。

  • 作業カテゴリ: タスクの集合体
  • タスク: 具体的なタスク
  • 成果物: タスクによって得られる成果物、あるいはタスクが完了している状態の定義
  • 想定作業工数:そのタスクを実行するために必要な想定工数
  • 作業ステータス: そのタスクの進捗状況
  • 期日: そのタスクの完了期日
  • 作業担当: そのタスクを遂行する人物

その他にもWBSの構成要素として考えられる要素はありますが、最低限必要なのは上記要素です。逆に上記要素のどれかが欠けている限りそのWBSは不完全なものとなり、そのプロジェクトの円滑な進行に黄信号が灯ることになります。

ちなみに期日と連動して、タスクにカレンダーが紐づくとガントチャートになります。各タスクの工期感(何時間といった工数ではなく、何日といったスケジュール感)の把握や、平行するタスクの重複状況が視覚的に見えるため、プロジェクトマネジメント上併せて用意できると望ましいです。バックログなどのツールで簡易的に制作も可能ですが、エクセルでも簡単に作成できます。

WBSの作り方

WBSは以下の5ステップで作成していきます。このステップでWBSを作成することで、マーケティング活動を円滑に進めていくことができるようになります。

ステップ1: プロジェクトの目的とスコープを明確化

プロジェクト全体の視点から、プロジェクトの目標、スコープ、主要な成果物を定義します。例えば、マーケティングキャンペーンのKPI達成のような大きな目的から、Webキャンペーン用のバナークリエイティブの制作といった比較的小規模な目的まで、プロジェクトの規模にそって適切なスコープを明確にしていきます。

ステップ2: 作業カテゴリ分類

プロジェクトの目的を達成するために必要な作業カテゴリを整理します。

例えば、広告キャンペーンの立ち上げであれば、「KPI設計」「ターゲットペルソナ設計」「クリエイティブの制作」などが作業カテゴリとなります。

ステップ3: タスクの分割と詳細化

各作業カテゴリを具体的なタスクやサブタスクに分割します。必要に応じて、これらをさらに詳細化します。

ステップ4: タスク詳細の定義

各タスク毎に、成果物、あるいは完了の状態を定義します。

完了の状態とは例えば、「Web広告を配信する」というタスクの場合、「管理画面上で配信ステータスがオンになっている」という状態がその定義になり得ます。更に「目視で掲載確認をする」や「管理画面上で、表示回数がついたことを確認する」といった後続タスクも想定されます。

そして、各タスク毎に、想定作業工数、期日、作業担当を定義します。作業担当が未定の場合は、その旨を記載します。

ステップ5: WBSのレビューと調整

作成したWBSをレビューし、全体的なプロジェクトのスコープを適切にカバーしているか、過度に詳細化していないか、作業の重複や欠落がないかなどを確認し、必要に応じて調整します。このレビューはタスクを実行するメンバーを含めて行うことが必要です。レビューによって、定義が曖昧なタスクや、タスクの過不足の洗い出しが可能になります。

以上が、WBSの作り方です。

まとめ

この記事では、マーケティング活動におけるプロジェクトマネジメントの重要性をお伝えしました。

「明確な目標設定」「計画立案」「リソース管理」「成果の評価」の適切な設計・運用なくして再現性の高いマーケティング活動は困難であることを指摘しました。その上で、プロジェクトマネジメントの基礎として、WBSの作り方をステップに分けて紹介しました。

まずはぜひ皆様の日々のマーケティング活動にも、プロジェクトマネジメントの概念を取り入れて頂ければと思います。その上で、現場の活動に取り入れる上での課題などございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

弊社では、マーケティング支援の際に、プロジェクトマネージャーをアサインし、SEOコンサルタントや解析コンサルタントなどの社内チームの進行管理はもちろん、クライアント企業の複数の部署の方とのコミュニケーションを行っています。これにより、目標であるマーケティングKPIの達成に向けてタスクを効率的に処理し、プロジェクトの円滑な進行をサポートしています。

マーケティング活動でより良い結果を達成するため、どのようにプロジェクトマネジメントを活用できるのか、さらに詳しく知りたい方はぜひ私たちにお問い合わせください。

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早川雅人

デジタルマーケティングコンサルタントとして10年以上の経験。PPC広告において大規模案件運用の実績を持つ。GAIQ、Google広告資格、英検1級保持。

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