はじめに

2019年1月よりアメリカで広告代理店のチームを発足させて業務を行っている。日米で同じビジネスを立ち上げたわけだが、やはりアメリカの営業スタイルは日本とは異なる部分が多いようだ。

日本流の営業スタイル

ところで、日本流の営業というと皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか? ブランドが構築されている会社ではないいわゆるスタートアップなどでは、 “アポ電”からスタートするのが一般的だと思う。私もサイバーエージェントの初期の頃にいたが、まず電話をして先方とアポイントメントを取り、数度の商談を経て決めるというやり方をやっていたし、それが日本での典型的なベンチャー会社の営業スタイルだと思う。つまりアポを取って、“会って話す”ことが前提なのだ。しかし、それは東京など大都市に企業が集中しているからできる。

アメリカだからこそアナログな「対面営業」が価値を生む

アメリカ流の営業スタイル

対してアメリカでは、国土が広いために対面すること自体が難しい。会わないで営業することが基本なのだ。よく聞くパターンとしては

  • ①一斉メール配信(比較的新しい手法)
  • ②一斉にアウトソース先がリストにアポ電をかける(今では自動化されたプログラム音声がかけるパターンも増えた)
  • ③それらを場合によってはフィリピンやインドなどから行う

などである。

彼らは片っ端からリストに対してメールや電話をし、商品説明デモをさせて欲しい、とデモの日程まで取り付ける。するといよいよ営業が出ていくような形である。その後はその営業が電話やビデオコールでデモを行い商談につなげていく、というスタイルである。
それが基本のスタイルだ 

アメリカだからこそアナログな「対面営業」が価値を生む

ネットワーキングイベントが営業活動に結びつく

一方で当社はアメリカでブランドも無ければ歴史もない新参者企業だ。他と同じことをやっていては勝てない。なので当社では広いアメリカで、あえて対面営業を基本方針としている。その理由は、現在アメリカ支社長を任せているマックス・トーマスから学んだからだ。彼は名門コロンビア大を卒業し、イェール大でMBAを取得した超エリートである。サンディエゴで広告代理店を起業した彼が最初に行ったのは、「ネットワークイベント」に参加することだった。

ネットワークイベントとは、大規模な人材交流会のようなもので、参加者は多種多様だ。あらゆる業種のビジネスマンが集い、そこで顔を合わせて話をする。自己紹介に始まり、そこから話が発展して新規ビジネスにつながることも多い。マックスもそうして新規顧客を着実に開拓し、単身で起こした会社を社員50人規模にまで拡大できたのだ。

アメリカに来る前は、私もアメリカ流の営業スタイルがイメージできなかった。アメリカでもアポ電や飛び込み営業で顧客を獲得していくのだろうかとも思ったくらいだから、このようなネットワーキングイベントが営業活動に結びつくというのは、新鮮な体験だった。

マックスのようにタフなビジネスエリートでも、人と会って地道に関係を深めて仕事を取っていくという、原始的でアナログな手法によって成功したことは、私にとって驚きでもあった。当社でも、アメリカで今年1月から6件の受注に成功したが、うち5件はネットワークから生まれている。アメリカで起業した日本人経営者の知人も、主にイベントを通じて営業していると話していた。

アメリカだからこそアナログな「対面営業」が価値を生む

アメリカでは全国的にネットワーキングイベントが盛んだが、シリコンバレーでは特に多い。多くの起業家たちがそこに足繁く通い、新規の顧客獲得を目指している。ITが発達したデジタル・マーケティングの時代にあっても、対面型営業の強さが証明されたわけだ。ただし、私にはむしろデジタル全盛だからこそ、対面の重みが表れているように思える。今は起業してサイトを立ち上げれば、個人でも簡単にビジネスを始められる。一方で、似たようなサービスが無数にあるサイト上で同業者とどう差別化していくかは難しい。

その点、目の前で生身の人間と対話をすることで、そのこと自体が差別化になる。ネット上でどんなにメリットを謳われたところで、今目前で熱弁を振るっている人のほうが優位に立てることは言うまでもない。サービス自体は似たり寄ったりでも、やはり顔が見える人のほうが信頼できるのだ。顔を合わせずにビジネスを行うことが多いアメリカだからこそ、対面することの価値が日本よりずっと高いのである。

この7月からの四半期では、とにかく数多くのイベントに参加し、対面で話す人の数をKPIにするつもりだ。現在アメリカでターゲットとして定めているのはコスメ業界なので、化粧品関連の展示会をはじめ、アパレル、家電、ゲーム関連といった業界のイベントに数多く参加することを目標としている。

まとめ

サービスの差別化で価値を生むことが難しくなった現代。私たちは「人に会うこと」を主眼にした営業手法に、より力点を置くつもりだ。さらに、今後は我々自身がミートアップやセミナーなどのイベントを主催しようとも思っている。

自分たちからターゲットなどを定めて仕掛けることで、より積極的な営業につなげられるからだ。対面営業が主流の日本とは違い、アメリカでは対面することそのものが価値を生み出せることに注目してほしい。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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