こんにちは。プリンシプルのプロジェクトマネージャー、早川です。
マーケティング戦略の策定は、事業を成功に導く上で欠かせないプロセスです。しかし、多岐にわたる分析や関係者との合意形成に多くの時間とリソースを費やし、「時間切れ」で戦略が不十分なまま施策を開始してしまった、という経験はないでしょうか?
この記事では、そんな課題を解決すべく、生成AIを最大限に活用してマーケティング戦略を効率的に、かつ効果的に策定する方法を、具体的なステップと共にご紹介します。
1.デジタルマーケティング戦略策定の7ステップ
まずは、マーケティング戦略を成功に導くための標準的な7つのステップをご紹介します。これらのステップを踏むことで、網羅的かつデータに基づいた戦略策定が可能になります。
ステップ1. 市場分析:
3C分析、PEST分析、4P分析といった一般的なフレームワークを用いて、事業を取り巻く市場環境を整理します。
ステップ2. 顧客分析:
ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成し、顧客への理解を深めます。
ステップ3. ポジショニング分析:
STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を明確にし、自社の立ち位置を確立します。
ステップ4. フォーカス領域の特定:
上記1~3の分析結果に基づき、戦略的に注力すべき領域を特定します。例えば、STP分析で明らかになった特定のセグメントの深掘りなどが挙げられます。
ステップ5. 事業KGIから戦略KPIの策定:
事業全体のKGI(重要目標達成指標)をブレイクダウンし、特定したフォーカス領域と連動する戦略上のKPI(重要業績評価指標)を設定します。
ステップ6. 戦略KPIの定量目標を策定:
設定したKPIに、具体的な達成目標となる数値を定めます。
ステップ7. 戦略KPI達成に向けた戦術の策定:
KPI目標を達成するための具体的な戦術を立案します。この際、戦略との一貫性を保つことが非常に重要です。
2.効率化できる箇所と時間をかけるべき箇所
前述の7ステップは、「基礎調査部分(ステップ1~3)」と「関係者協議を含めた構築部分(ステップ4~7)」に分けられます。
多くの企業をご支援する中で、基礎調査部分にはリサーチ会社へのアウトソースなど、一定のリソースを割いているケースが多い一方で、構築部分における関係者との協議や合意形成に十分なリソースが割かれていないという状況をよく目にします。
その結果、戦略の根幹部分で認識のズレが生じたり、戦略と戦術の整合性が取れていないといった問題が発生しがちです。これは、基礎調査に時間をかけすぎた結果、「時間切れ」となり、肝心な協議が不足したまま施策がスタートしてしまうことが背景にあるのではないでしょうか。
戦略策定から施策実行開始までの期間は限られていることがほとんどです。だからこそ、プロセス全体を俯瞰し、「効率化できる箇所」と「時間をかけるべき箇所」にメリハリをつけることが、同じ時間で最大の効果を得るカギとなります。
特に、その後の戦術実行をスムーズに進めるためには、戦略の十分な合意形成が不可欠です。
そのためには、構築部分、とりわけ関係者間の合意形成にしっかりと時間を割くことを強く推奨します。そして、その時間を確保するためには、基礎調査部分をいかに効率的に進めるかが重要になります。
次節では、その具体的な方法として生成AIの活用法を解説します。
3. 生成AIで効率化するための2ステップ
基礎調査部分、具体的には「1.市場分析」「2.顧客分析」「3.ポジショニング分析」は、生成AIを活用することで驚くほど効率的に進めることができます。具体的な2ステップと、さらに踏み込んだ活用法をご紹介します。
ステップ1:リサーチ用プロンプトの作成
生成AIの回答精度は、入力するプロンプトの質に大きく左右されます。AIモデルの進化により、簡易なプロンプトでもある程度の回答は得られるようになりましたが、より精度の高い、ビジネスに活用できる情報を得るためには、質の高いプロンプトが不可欠です。
では、どのようなプロンプトを入力すれば良いのでしょうか? 実は、その答えも生成AIに尋ねてしまうのが一番です。以下のような「プロンプト作成プロンプト」を活用しましょう。
#あなたは世界トップクラスのプロンプトエンジニアです。マーケティング戦略を策定するために、生成AIを活用して市場分析を行いたいです。精度の高いリサーチを行うためのプロンプト案を作成してください。
このプロンプトへの回答を元に、調査プロンプトを作成し、リサーチを進めていきます。
ステップ2:AIエージェントを活用した連続的な分析
「市場分析→顧客分析→STP分析」と、一連のリサーチを連続的に進める際には、1つ前の分析結果を参照させることで、リサーチの精度を飛躍的に高めることができます。
生成AI上でチャットを続けていくことも可能ですが、より効率的に進めるためにはAIエージェントの活用を推奨します。
例えば、「Dify」のようなAIエージェントツールを活用すれば、市場分析、顧客分析、STP分析の一連のステップを連続で実行する簡易アプリを簡単に作成できます。
筆者が作成したアプリでは、調査対象の「事業」と「特徴」を入力するだけで、上記3ステップの調査アウトプットを一括で出力することができます。例として弊社のデジタルマーケティング支援事業の調査イメージを掲載します。
このように、基本的な調査の初稿を短時間で作成することができます。この調査結果を叩き台として、自身の思考の整理をして、具体的な戦略案の策定とチームのみなさまとの協議・合意形成にしっかりと時間をかけていただくことができます。
おわりに | 戦略策定ワークショップのご紹介
弊社では、上記で言及のDifyで作成したマーケティング基礎調査アプリを活用した戦略策定ワークショップを行っています。基礎調査の時短効果と、関係者で協議を進めていくプロセスを体感いただくことができます。
現状のマーケティング課題の棚卸しや、次期マーケティング戦略策定のきっかけ作りとしてご活用いただければと思います。詳細については、ぜひお気軽にお問い合わせください。