アメリカにおけるデジタルマーケティングのホットな話題の一つが、日本でもおなじみのインフルエンサーマーケティングです。

そのトレンドはここ数年で急速に変化しています。しかしそのトレンドを調査する際に、英語の情報を追いかけるのはなかなか大変かと思います。

この記事では、海外でのWebマーケティングに携わるコンサルタントが、アメリカにおけるインフルエンサーマーケティングの現状や、運用する際の注意点などを解説します。

記事の内容

  • 米国インフルエンサー市場の変遷
  • インフルエンサーマーケティングのトレンド
  • インフルエンサーマーケティングの2つの大きな課題
  • マーケターが考えるべきこと

米国インフルエンサー市場の変遷

アメリカのインフルエンサー市場は年々拡大しており、2022年までに全米ではインフルエンサーマーケティングに最大150億ドルが投入されると予想されています。


2013年から2020年までの世界のInstagram インフルエンサーマーケティング支出額


参考:日本のトレンド – Google Trendsで見るSNSプラットフォーム

また、インスタグラム単体に焦点を当てると、2018年の全世界のインフルエンサーマーケティング支出額は56.7億米ドルに達しました。

しかしこのような好調な市場においても、コロナ禍の影響は避けられていません。2020年5月の調査では、米国のマーケティング担当者の41%が、第2四半期インフルエンサーマーケティングの予算を削減したことが分かっています。

インフルエンサーマーケティングのトレンド

インフルエンサーを独占しているプラットフォーム

インフルエンサーキャンペーンの90%以上がInstagramを利用しており、他のプラットフォームと大きく差を付けています。

インスタグラムのユーザー数は、世界で7億1500万人に迫る勢いで増加しています。これは、オーガニック広告やインフルエンサーを介してリーチできる潜在顧客が単純に多いということを意味します。

また近年、アメリカではTikTokが急速に伸びています。アプリのダウンロード数で比較(2019年)すると、YoutubeやInstagramなどよりも多いです。

TikTokは比較的新しいプラットフォームのため、調査対象から外れている場合も多いです。データを見る際には注意が必要でしょう。

マイクロインフルエンサーが活躍し始めている

2019年の調査で、メガインフルエンサー1人につき10人のマイクロインフルエンサーが使われていることが分かりました。有名人の影響力は衰退しており、マイクロインフルエンサーが活躍し始めているのです。

その理由は、マイクロインフルエンサーのほうがエンゲージメント率が高いこと。ナノインフルエンサー(フォロワー数1,000人未満)は、メガインフルエンサー(フォロワー数10万人以上)に比べてエンゲージメント率が7倍も高いことがわかっています。

そのため、フォロワー数だけでインフルエンサーを選定することはできません。大事なことは、ブランド、インフルエンサー、オーディエンスの価値観がマッチしていることです。

インフルエンサーを選定する際には「リーチ」「ニッチ」の2軸で考えるとわかりやすいです。

  • リーチ:一般的に、フォロワー数が少ないほどターゲットを絞ったリーチ、費用対効果、エンゲージメント、信頼性、アクセスしやすさのすべてが上昇する。
  • ニッチ:関連性のあるニッチなインフルエンサーを活用して、より意図的にオーディエンスをターゲティングすることができる。

参考:App Development Concept for Landing Pages

インフルエンサーマーケ支援ツールへの新規参入が加速

2019年には、インフルエンサーマーケティングに特化したプラットフォームや代理店の380社が新たに参入しました(拡大したインフルエンサーマーケティング市場に商機を見出した企業も多いというわけです)。

しかし、広告運用でまず重要なことはツールではなく運用方法です。インフルエンサーマッチングツールも成熟していますが、現地感覚で運用することを第一に考えるべきでしょう。

インフルエンサーマーケティングの2つの大きな課題

課題1.インフルエンサーを見つけるのは難しい

最大の課題は、最適なインフルエンサーを見つけることです。

事実、調査対象となったブランドの39%が、最も困難なこととして「キャンペーンに参加してくれるインフルエンサーを見つけること」を挙げています。そして、インフルエンサーを選定した後に維持することも難しいです。インフルエンサーやクリエイターがブランドにとって常に最適であるとは限らないためです。

したがって、インフルエンサーマーケティングでは運用の他に「選定」や「維持」を織り込んだ計画が求められます。

課題2.ブランド毀損の懸念

ここ数年、不適切な行動をするインフルエンサーがメディアに取り上げられている例が増加しており、インフルエンサー詐欺の懸念が高まっています(調査回答者の68%が懸念を表明しており、前年の64%から増加)。

こういった状況から連邦政府の規制当局が動き出し、広告主へのガイドライン強化が迫っています。規制当局はインフルエンサーに警告書を出していますが、広告主には厳しく取り締まる予定です。

参考:8 Important Influencer Marketing Trends to Watch Right Now

マーケターが考えるべきこと

最後に、われわれマーケターが考えるべきことをまとめておきます。

企業が採用するインフルエンサーは数ではなく質

前述のとおり、フォロワー数だけでインフルエンサーを選定することはできません。インフルエンサーを評価・採用する重要な基準はリーチできる数ではなく、クリックやエンゲージメントです。

繰り返しになりますが、インフルエンサーマーケティングキャンペーンを成功させる鍵は次の2つです。

  • インフルエンサーのファンが自社の客層に似ていること
  • 価値観が合うインフルエンサーとブランドをマッチングさせること

例えば、マイクロインフルエンサーも選択肢に入れるべきでしょう。知名度のある芸能人ではなく、マイクロ(ナノ)インフルエンサーのもっている少なくても熱狂的なオーディエンスにブランドを広めてもらうことは今後も重要です。

施策の効果をどう計測するか

インフルエンサーマーケティングの目的とKPIは合致していますか?手段が目的になっていませんか?

インフルエンサーキャンペーンの主な目的はブランドの認知度を上げる事と回答する一方で、成功をどう計測するかについてはコンバージョンや売上と答えるマーケッターの割合は少なくありません。

効果を適切に測定することは、ビジネスを改善・成長させるためには必要不可欠です。測定方法に関しては慎重に検討する必要があります。

まとめ

この記事では、アメリカにおけるインフルエンサーマーケティングの現状や、運用する際の注意点などをご紹介しました。アメリカでのマーケティング活動の一助となれば幸いです。

プリンシプルはアメリカにもオフィスを持っており、より現地のトレンドに沿った、充実したコンサルティングが可能です。米国でのデジタルマーケティングや広告でお困りの方は、ぜひPrincipleにお問い合わせください。

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Kris Irizawa

Logitechなどのシリコンバレー・スタートアップ企業で9年間マーケティング解析を経験。プリンシプルアメリカの解析ディレクターとしてLA在住。

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