はじめに

「海外進出で重要なこと」、4回目の今回は、世界戦略成功のカギを握る肝、「ローカライゼーション」についてだ。前回、日本企業が陥りがちな「Made in Japan神話」のことや、土地の広いアメリカのような場所では、地域によってマーケティングを行う必要がある話をした。それらの話をもう少し突き詰めていくと必然的になるのが、販売現地での商材適応、つまり「ローカライゼーション」となる。

ローカライゼーションは重要

ローカライゼーションは、例えどんなに売れている優れた商品であっても、必須のプロセスだ。このシリーズでも繰り返し述べてきているように、異国の地では「日本流」はすべてにおいて通用しない。アメリカであればアメリカ人が理解するように商品やその特性を打ち出す必要があるし、同じアメリカ国内であっても州によっては販売戦略などを変える必要もある。日本で使っている既存の商品説明を英語にするだけでは、到底それには足りないのだ。

「ローカライゼーション」を一言で説明すると、「文化慣習と商習慣を考慮し、商材を販売する国または地域に適応させるプロセス」となろう。それが必要なエリアは広範囲に及ぶが、海外戦略で重要なものは、主に二つに分けられる。

第4回 海外進出で重要なのは (全5回シリーズ)「海外戦略のポイント「ローカライゼーション」がカギ」

ブランド・ローカライゼーション

海外で勝負をする場合、その土地のターゲット層にリーチするように、ブランドの視覚的要素、印刷物の書体やそれに関連するデザイン要素、またはメッセージング要素をいくつも作り直す必要がある。

特に注意したいのは商品名だ。日本で育てたブランドを大切にしたい企業も多いだろうが、海外で勝負する場合は必ず現地のコピーライターや、マーケティング専門家の意見を取り入れた名前に変えるほうがいい。日本的にしっくりくる名称でも、現地では意味が通じなかったり、誤解を含む意味合いをもつということもあるからだ。知らないで使えば、ブランドそのものを傷つけてしまう言葉もあるわけなので、注意が必要である。

製品ローカライゼーション

グローバル市場に標準化された商品であれば、自社商品をそのまま海外に持っていっても受け入れられる可能性はある。例えば車や家電製品など、「これを使えば時間もお金もXX%節約できる」、「燃費がよく丈夫」などを訴求できる商品には普遍的ニーズがある。だから購買者にその利便性をアピールできれば、比較的売りやすいのだ。しかし、その土地に「馴染みがないもの」を売ろうとするときには、商品そのもののローカライゼーションも必要になる。

例えば、日本でもお馴染みのケンタッキーフライドチキンは、海外市場展開に際し、進出先の感性をアピールするために、その土地の食材や文化慣習を加味したメニュー構成を取り入れる方針を取っている。日本にも「和風チキンカツサンド」などオリジナルメニューがあるが、シンガポールでは朝食メニューにお粥、イスラム圏では現地宗教を意識したラマダン特別メニューがあったりする。同社は各国の文化慣習に合わせた戦略で、市場を開く間口を広げているのだ。

まとめ

ローカライズを成功させるための鍵は、前回お話しした「その市場を知り尽くしている専門家の起用」と、「徹底的な市場調査の実施」にかかっている。これらをうまく機能させることなしには、正しい市場特性も把握できないだろうし、ターゲティングも出来ないだろう。

日本で大切に育てた自社ブランドに愛着がある企業ほど、ローカライゼーションに抵抗を感じるかもしれないが、オリジナルブランドのメッセージ性は、上手に入れ込めばよいのだと思って欲しい。オリジナルにこだわり続けることは日本国内では大切かもしれないが、海外ではそのブランド自体に新しい価値を付加することの方が、現地での勝負がしやすくなることを意識してほしいと思う。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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