2025年4月24日に弊社解析コンサルタントの長谷川実由が「すぐに使える!ECサイトの購入率アップを実現するデータ分析術」というテーマでウェビナーを開催しました。
本ウェビナーでは、ECサイトのCVR改善に向けて、サイトの課題を把握するための分析方法について解説しました。この記事では、本ウェビナーの内容をまとめてご紹介します。ECサイトのマーケティングや分析担当者の方、GA4のレポートを用いた具体的な分析手法を知りたい方にお役立ていただける内容です。
WEB解析の重要性
WEB解析の主な目的は、ユーザーの行動データから課題を発見し、改善策のヒントを得ることです。ECサイトにおいて、CVRの改善は売上に大きなインパクトを与えます。
例えば、月間セッション数10万、CVR1.0%、平均購入単価1万円のECサイトでは、月間売上は1,000万円です。CVRがわずか0.1%上昇するだけで、売上は月間100万円増加し、EC売上全体が10%アップします。
このように、些細な改善でも売上への影響は非常に大きいため、WEB解析は不可欠です。

CVR改善までのステップ
CVR改善の実現に向け、大きく分けて3つのステップを踏む必要があります。
- ステップ①:アクセスデータからユーザーの行動を正しく把握
- ステップ②:CV導線上のボトルネック等、サイト課題を抽出
- ステップ③:課題解決のための施策を実行
以上3つのステップのサイクルを回していくことで、WEBサイト全体のCVRを上げることを目指します。
セミナー本編では、ステップ①「アクセスデータからユーザーの行動を正しく把握」、つまりアクセス解析に焦点を当てて、その方法をご紹介しました。
GA分析の基本3ステップ
以下の3つのステップを踏むことで、GA分析を効果的に進めることができます。
- ステップ①:標準レポートでトレンドを把握する
- ステップ②:トレンドから課題の仮説を立てる
- ステップ③:仮説の具体化のために深掘り分析を行う
森から木へという形で、まずは全体のトレンドを把握した上で詳細へと深掘りする形が最も効率的です。それでは、それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
ステップ①:標準レポートでトレンドを把握する
GA4の標準レポート(デフォルトで用意されている20種類以上のレポート)を利用して、サイト全体の数値の傾向や変動を大まかに把握します。
以下は主要な標準レポートと、把握できるトレンドの例です。
- 集客の概要レポート:ユーザー数、新規ユーザー数の推移等
- トラフィック獲得レポート:流入経路(チャネル)別の流入数、CV数等
- ランディングページレポート:ランディングページ別の流入数、CV数等
- 購入経路レポート:流入から購入までの離脱率等
- ユーザーの環境の詳細レポート:デバイス別流入数・CV数・エンゲージメント率等
これらの標準レポートを使用すると以下のようなトレンドを読み取ることができます。
自然検索経由の購入率が低い一方で、リファラル経由やメール経由の購入率が高いことが分かります。
セッションを開始した後、商品詳細まで到達しないユーザーが7割以上であることや、決済手続きを開始したにもかかわらず、その約半数のユーザーが購入前に離脱している等のトレンドが分かります。
ステップ②:トレンドから課題の仮説を立てる
ステップ①でトレンドを把握したら、どこに課題がありそうか仮説を立て、より深堀りする分析の方向性を検討します。
以下は「把握したトレンド例」と「トレンドから立てた課題の仮説、深堀り分析の方向性例」をまとめたものです。

ステップ③:仮説の具体化のために深掘り分析を行う
課題の仮説を立てたら、実際に深掘りの分析を行います。今回は、ステップ②で立てた仮説のうち、「決済フローにつまずくポイントがあるのでは?」を深堀り分析してみます。
以下のレポート例は、収益配下の「決済経路」レポートを探索レポートにエクスポートし、より詳しく数値を表示したものです。

これを見ると、支払い方法を追加する時の離脱率が最も高く、特にその中でもモバイルユーザーの離脱率が高いということが分かります。この結果から、「モバイルビューで支払い情報を入力するフォームに改善余地がありそう」等の当たりを付けることができます。
すぐに使える分析手法
ここまで、GA分析の基本の流れをご紹介しました。
購入経路レポートを活用した分析
- 目的:購入の妨げになっているボトルネック・サイト内で強化すべき導線の特定
- 可視化される情報:セッション開始から購入までの離脱状況
- 施策への落とし込み例:
- カート追加率が低い場合、商品詳細ページ内のコンテンツを改善したり、CTAボタンの配置を変更する
- 決済到達率が低い場合、カート投入ユーザーへのリターゲティング広告やリマインドメールを配信する
- レポートへのアクセス方法:レポート>収益>「購入経路」レポート

決済経路レポートを活用した分析
決済経路レポートは、購入経路レポートをブレイクダウンした「決済経路」のみに特化したレポートです。
- 目的:決済フローの中で改善すべき導線の特定
- 可視化される情報:決済開始から購入までの離脱状況
- 施策への落とし込み例:
- フォームの入力必須項目の見直し、入力サポートを強化する
- レポートへのアクセス方法:レポート>収益>「決済経路」レポート

ファネルデータ探索を活用した分析
- 目的:ユーザーに辿ってほしい導線の遷移状況の把握
- 可視化される情報:任意の開始ステップ、次のステップ、到達ステップの離脱状況
- 施策への落とし込み例:
- ページ間の導線を強化する(リンクの配置変更等)
- (会員登録フローのファネルを可視化した場合)会員登録フォームを改修する
- レポートへのアクセス方法:探索>「ファネルデータ探索」レポート

CVユーザーの初回接触経路分析
- 目的:CVユーザーの獲得に貢献しているチャネルの把握
- 可視化される情報:初回訪問時のチャネル×購入時チャネルの組み合わせ別CV発生状況
- 施策への落とし込み例:
- CVユーザー獲得貢献度が高いチャネルの集客を強化する
- レポートへのアクセス方法:レポート>集客>「ユーザー獲得」レポート

上記キャプチャはレポートの一例で、少しアレンジを加えています。
ユーザーが初めてサイトを訪れた際の流入経路を表す「ユーザーの最初のデフォルトチャネルグループ」というディメンションに、セカンダリディメンションとして「セッションのデフォルトチャネルグループ」を追加しています。
そのため、「最終的なCVユーザーが多いチャネルの集客を強化する」等の施策に落とし込むことができます。
コホートデータ探索を活用した分析
- 目的:新規ユーザーの購入検討期間の把握
- 可視化される情報:初回訪問から何日後の購入が多いのか、何日後まで発生するものなのか
- 施策への落とし込み例:
- リターゲティングの有効期間を検討する
- 広告変更タイミングを検討する
- レポートへのアクセス方法:探索>「コホートデータ探索」レポート

キャプチャと同じように設定すると、赤枠部分には「新規獲得したユーザーのうち、何日目に何%のユーザーが購入を発生させたのか」の合計が表示されます。
おすすめの追加実装
最後に、より詳細で多角的な分析を行うための追加実装例をご紹介します。
おすすめの追加実装①:eコマース関連イベント
下記の名称のイベントを取得すると、eコマースイベントとしてGA4に認識されます。特に赤字のイベントは標準レポートで確認可能になるため、実装をおすすめします。

eコマースイベントを実装することで、先ほどご紹介した購入経路レポート・決済経路レポートを活用できるようになります。キャプチャの赤枠部分が、eコマースイベントの実装によって取得可能になるデータです。

おすすめの追加実装②:「訪問回数(ga_session_number)」
デフォルトで取得されているイベントパラメータ「ga_session_number」をカスタムディメンションに登録すると、「そのユーザーにとって何回目のセッションか」をレポート上で可視化できます。

おすすめの追加実装③:「コンテンツグループ」
コンテンツグループは、ページパスなどの条件を使用しサイトのコンテンツをカテゴライズする機能です。イベントパラメータに content_group を付与することで、「ページとスクリーン」レポートにディメンションとして反映されます。

例えばコンテンツグループを、「特集」や「商品詳細」等でグルーピングしておくと、それぞれのコンテンツグループのパフォーマンスを見ることができます。これをセグメントと掛け合わせると、「どのページグループがCVユーザーの関心の高いコンテンツなのか」などのよりリッチな示唆が得られるようになります。
以下は、コンテンツグループを活用した分析の例です。

まとめ
この記事では、ウェビナー「すぐに使える!ECサイトの購入率アップを実現するデータ分析術」の内容をまとめてご紹介しました。要点は以下の4点です。
- ECサイトの購入率を上げるには、ユーザー行動の把握が不可欠
- GA4の基本的な流れは、全体のトレンド把握→詳細の深堀り
- 標準レポート・探索レポートを活用することで、初回接触から購入までの一連の行動をユーザー単位で可視化できる
- イベント・ディメンション等の追加実装を行うことで分析の幅が広がる
自社が持つアクセスデータを最大限に活用し、購入率改善施策の立案にお役立ていただけるような内容となっています。
また、弊社ではGA4を活用したアクセス解析に加え、Webマーケティング支援を多数行っております。お困りごとがある際は、いつでもお気軽にお問い合わせください。