2025年4月22日(火)に「北米進出でつまずかない!マーケティング失敗あるあると成功企業の逆転劇」というテーマでウェビナーを開催しました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました!
本ウェビナーでは、北米市場におけるマーケティングの典型的な失敗パターンを取り上げ、それを乗り越えた企業がどのように戦略を修正し、成果を上げたのかをご紹介しました。
この記事では、本ウェビナーの内容をまとめます。
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1. 北米市場の魅力と落とし穴
USデジタル広告市場
米国のデジタル広告市場は非常に広大で、年々需要が拡大しています。広告費は毎年およそ10%ずつ成長しており、現在では企業の約8割がデジタル広告に投資するまでになりました。
こうした成長を牽引しているのは、Alphabet(Google)、Meta(Facebook)、Amazonといった巨大プラットフォームです。広告費の大部分がこれらのプロダクトに集中しており、実際の運用もAlphabetやMetaを中心に展開されるのが一般的です。
もっとも、米国市場にはこれら大手以外にも多様な媒体が存在します。目的やターゲットに応じて、複数の選択肢を組み合わせることが、広告戦略を最適化する上でのポイントとなります。
アメリカ市場の特性:Z世代とミレニアル世代の影響力は大きい
アメリカは人口構成が多様であり、人種だけでなく世代による違いも顕著です。
人口の約42%を占めるZ世代とミレニアル世代は、インターネットが身近にある環境で育ったデジタルネイティブです。一方、残りの半数以上はベビーブーマーとX世代で構成されています。
興味深いのは、世代によって利用するメディアが異なる点です。
- Z世代:TikTok、Instagram、Snapchatを頻繁に利用
- ミレニアル世代:Facebook、Instagram、YouTubeなどを好んで使用
また、好むコンテンツの形式も世代間で異なります。短編動画を好む世代もいれば、長編コンテンツを好む世代もいるため、それぞれの世代に合わせたアプローチが重要になります。
アメリカ消費者の価値観と購買行動:各世代には明確な違いがある
世代ごとの人口構成を詳細に見ると、人種構成の大きな変化が明らかになります。
ベビーブーマー世代では白人が大半を占め、マイノリティは20%未満です。しかし、Z世代では人口の約半分がマイノリティ(ヒスパニック/ラテン系、黒人、アジア系など)となり、特にヒスパニック/ラテン系人口の増加が顕著です(4%から25%に増加)。アジア系も増加傾向にあります(1%から6%に増加)。
このように人種や価値観が多様な世代が台頭することで、消費者の購買行動や価値観に変化が生じています。たとえばZ世代は、商品やブランドに対して信頼性、多様性、そして社会的責任を重視します。購買行動においては、SNSが大きな影響力を持っています。インフルエンサーのおすすめ、あるいはSNSのアルゴリズムによって表示される商品に影響されやすく、オンラインでの情報収集が購買のきっかけとなることがよくあります。
一方、ミレニアル世代もまた信頼性や社会的責任を重視しますが、それに加えてキャリアアップや個人の達成といった自己成長にも高い関心を持っています。彼らの購買行動は、Z世代とは少し異なり、SNSの影響を受けつつも、それ以上にブランドの評判や商品の品質を重視する傾向が強いです。
米国消費者:すべての広告に同じように影響されるわけではない
同じアメリカの消費者を対象とした広告であっても、世代によって受け取り方は大きく異なります。たとえば、インフルエンサーを通じた広告は、SNSを日常的に利用しているZ世代やミレニアル世代にとって、商品の魅力を効果的に伝えるポジティブな手法です。一方、音楽鑑賞やゲーム中に表示されるような集中を妨げる広告は、どの世代からもネガティブな印象を持たれがちです。
現在、アメリカの消費者の半分が広告付きのストリーミングサービスを利用しており、Amazon CTVやNetflix向けの広告も増えています。消費者の4人中3人以上が広告に大きく影響される現状を考えると、特にSNSとの接点は無視できません。
同じ広告媒体であっても世代によって広告への印象が異なるため、どのようにすれば広告を魅力的にできるか、どのような体験や価値を持たせられるかを考えることが重要です。この世代間の違いこそが、マーケティングを面白く、そして挑戦的なものにしています。
USユーザーのメディア利用から見る広告の媒体
アメリカの消費者はインターネットに最も多くの時間を費やしており、テレビやSNS、音楽ストリーミング、オンラインニュースの利用が一般的です。テレビでもYouTubeのようなストリーミングサービスを見るのが当たり前になっています。
広告媒体も多様で、米国ならではのさまざまなチャネルが活用されています。広く普及している検索広告やディスプレイ広告、効果的な広告配信が可能なプログラマティック広告、そして意外に思われるかもしれませんが、メールマガジン内の広告やスポンサー記事も主流です。
音楽配信サービスへの広告出稿も増えていますが、消費者の集中を妨げないよう、広告の挿入タイミング(冒頭や終わりなど)を工夫することで、広告の印象をポジティブに変えることができます。このように消費者のメディア利用シーンに合わせて、さまざまな媒体を使い分け最適な出稿プロセスを考えることが、マーケティングの面白さであり大きな魅力なのです。
消費者にまず「知ってもらう」ことの重要性
米国市場進出における「チャレンジな部分」とは、消費者が信頼するブランドを選びがちであるという点です。選択肢が多く競争が激しいので、まずブランドを知ってもらい、信頼を築くことが重要なのです。
男女の違いによってもブランドへの信頼度は異なります。例えば、男性は車に関して特定のブランドを選ぶ傾向が強い一方で、女性はさまざまなブランドを試す傾向があります。消費者が商品を購入したりリサーチしたりする際、このブランド認知が極めて重要な役割を果たしています。ブランドを認知してもらうことがマーケティングにおける大きな壁であり、挑戦的な領域です。
北米市場の魅力と落とし穴
巨大な市場があるアメリカでは多くの企業が成長していますが、その立ち位置によっては、魅力が「落とし穴」に感じることもあります。
広告の反応が世代によって違うように、これからはZ世代やミレニアル世代(デジタルネイティブ)の影響力に対するマーケティングが主流となるでしょう。彼らが今後、上司やマネージャーになるにつれて、彼らの価値観を深く理解する必要があります。
また、多岐にわたるメディアの中から適切なデジタルメディアを選択することが重要です。激しい競争の中で顧客に選んでもらうには、BtoBのように問い合わせにつなげるだけの価値をどう表現するか、試行錯誤していく必要があります。
このように、情報収集や購入までの流れが世代によって異なるので、リサーチを怠り間違った施策を実行してしまうことが、この市場における最大の「落とし穴」と言えます。
2. 北米マーケティング「あるある」失敗事例
失敗事例① 質の悪いデータを釣ったマーケティングと広告の実施
「Garbage in, garbage out」は、「質の悪いデータを入力すれば、質の悪い結果しか得られない」という意味です。つまり、どんなに高度な処理をしても、元となるデータが悪ければ最終的に出てくるものも悪いものになってしまいます。
AIや機械学習の分野では、この原則が特に重要です。AIはデータから学習するため、学習に使うデータの質が、AIの精度を大きく左右します。人間がAIを良い方向に導くためには、まずAIに質の高いデータをインプットさせる必要があるのです。
−データに基づいた意思決定の重要性
機械学習(ML)とは、予測や最適化に特化したアルゴリズムのことです。人間の知能を再現することを目指すAIの一部であり、その具体的な応用例としては、YouTubeの「次に見る動画」や「関連動画」の推薦機能などが挙げられます。
機械学習の強みは、人間の直感や当てずっぽうな予測を減らし、次に取るべき行動や視点をデータに基づいて正確に予測できる点にあります。これにより、データに基づいた意思決定を可能にし、マーケティングの効率を飛躍的に高めることができます。
したがって、効果的なマーケティングにはデータの精度が非常に重要です。具体的には、クリックデータ、コンバージョン(CV)、売上データといった質の高いデータを正確に収集・分析することが成功の鍵となります。
−機械学習が誤った方向へ進むとどうなるか?
データの活用は売上の向上には不可欠ですが、コントロールできない範囲(例:GAFAのアルゴリズム変更)の影響で、SEOランキングやコンバージョン率(CV)が変動することがあります。
これは「Garbage in, garbage out」とは異なる要因で、質の良いデータを選んでも売上やCVに影響が出ることを意味します。例えば、Metaのアルゴリズム変更によって、CVが3分の1にまで落ち込むケースも珍しくありません。
このように、外部環境の変動によって成果が左右されるため、どのようなデータを選び、どのように活用するかは非常に重要です。外部の変化に柔軟に対応できるような、多角的な視点を持つことが求められます。
失敗事例② アメリカ市場の期待に響かないウェブサイトの立ち上げ
サイトの立ち上げ時には、以下の3点に気を付ける必要があります。
- 文法やスペルの間違い
- 不安と心配を招く商品ページの文言、ポリシーなど
- 海外向けにサイトのデザインを過度に投資、カスタマイズし逆効果になるケース
−1. 文法やスペルの間違い
アメリカの大手サイトであっても文法やスペルミスが見られることはありますが、このようなミスはブランドへの信頼を損ない、顧客の不満につながる可能性があります。
コンテンツにおいては、伝えたいことを正確に伝えるためのデザインが非常に重要です。
また、ウェブサイトのデザインや施策は、現地の好みに合わせる必要があります。アメリカの消費者がどのようなデザインに親しみを感じるかを理解し、それに沿った施策を実施することで、より効果的にメッセージを伝え、信頼を築くことができます。
−2. 不安と心配を招く商品ページの文言、ポリシーなど
Shopify上の日本サイトの例にあるように、「カートに追加」ボタンのすぐ下に長い説明文を記載すると、第一印象が悪くなる可能性があります。また、本来商品の説明をすべき箇所でもあるので、そこに「発送が遅れるかも」といった顧客の不安を煽る記載があると、カート放棄の原因にもつながります。
アメリカでは返品文化があるため、返品されないための注意書きを記載することは仕方ありませんが、このような情報はポリシーページにまとめるべきです。ユーザーに不安を与えることなく、商品の魅力を最大限に伝えることが重要です。
−3. 海外向けサイトのデザインに過度に投資、カスタマイズし逆効果になるケース
ウェブサイトへの最初の投資は、デザインなど見た目に偏りがちですが、アメリカ市場では注意が必要です。過度なカスタマイズはかえって信頼を損なう可能性があり、シンプルで使いやすいデザインが好まれます。
日本の「かわいい」文化や価値観は、アメリカでは必ずしも受け入れられるとは限りません。また、無理にアメリカン風にしようとしたり、不自然な英語や迷路のような複雑なサイト構成は、顧客をイライラさせてしまう原因になります。ユーザーの信頼を得るには、シンプルで直感的、そして自然なデザインと構成が最も重要です。
アメリカ市場に参入する際の対策として、すでに確立されたテンプレートやデザインをベースにサイトを制作する方法は非常に有効です。このアプローチにおける最大の差別化ポイントは、商品やサービスの魅力を最大限に引き出すことです。
また、売れているサイトのユーザーエクスペリエンス(UX)は、すでにユーザーに受け入れられている証拠なので、参考にしながら、どのような情報が最低限用意されているかを学ぶことが重要です。顧客に選ばれるためには、見た目の派手さではなく、シンプルで使いやすいサイトを通じて、商品やサービスの価値を明確に伝えることが鍵となります。
失敗事例③ 合理的であっても、筋が通らないスモールスタート
この資料は、月額$5,000の広告予算を特定の広告媒体に投下した場合の、4つの異なる成果パターン(保守的、現実的、ベスト、成功)を示したものです。その中でも、1.保守的、2.現実的、3.成功の3つのパターンを詳しく見ていきましょう。
1. 保守的なパターン(ROAS 3.5%):
CPMが$28、CPCが$3.5と比較的高い水準です。これは、SNS広告、特にMeta広告のベンチマークに近いと考えられます。この場合、CTR 0.8%、CVR 0.5%という低いコンバージョン率となり、コンバージョン数はわずか7件です。
ROAS(広告費用対効果)はわずか3.5%で、これは100の広告費に対して3.5しか売上が戻ってこない計算になり、明らかに失敗パターンと言えます。
2. 現実的なパターン(ROAS 10%):
CPMやCPCを下げつつ、CTRとCVRをそれぞれ1%まで改善したケースです。これにより、コンバージョン数は20件に増え、ROASも10%に向上します。
しかし、多くのビジネスにとって、このROASはまだ十分な利益を生み出すレベルとは言えません。
3. 成功パターン(ROAS 50%):
CTRとCVRを2%にまで引き上げ、CPCも$1に抑えた理想的なケースです。コンバージョン数は100件に達し、ROASは50%を達成しています。
しかし、この数値は媒体にもよりますが、一般的な米国の広告運用では非常に達成が難しいと言えます。たとえこの成功パターンを実現できたとしても、商品単価が低いビジネスモデル(例:20ドルや30ドルの小売商品)の場合、ROAS 50%でも十分な利益を確保するのは難しいでしょう。
3. 失敗から学ぶ!成功企業の逆転劇
成功事例① Vuori
ソフトバンク・ビジョン・ファンドからも投資を受け、時価総額5,200億円という巨大企業に成長した「Vuori」は、最近ではモール内でも見かけるようになりました。
創業者であるジョー・クドラ氏は、収益性を重視しています。当初、商品は男女で分けられていませんでしたが、誰も投資してくれない中、彼は友人から250万ドルの投資を受け、男性向け商品から事業をスタートさせました。
彼のビジネス戦略は、短期的な売上よりも長期的な売上を重視するというもので、この点は日本の多くの企業にも共通する考え方です。2021年に高い評価を得ていますが、こうした初期の堅実な戦略が、現在の大きな成功へと繋がっています。
成功事例② AG1
飲料会社のAG1は、サプリメント市場のトレンドである「身体に良い成分」に着目し、すでにそうした商品を持っていた強みを活かして急成長しました。
彼らはインフルエンサーマーケティングを活用し、熱心なコミュニティに訴求することで初期の成功を収めました。その後、長期的な安定収入を目指してビジネスモデルをサブスクリプションへと変更。同時に、データ分析を徹底してマーケティングの無駄をなくす方針に転換し、PDCAサイクルを高速で回すことで継続的な成長を続けています。
成功事例③ THE LIP BAR
かつて黒人女性向けの化粧品会社だったこの企業は、現在、20名以下の社員で広告費用に月10万ドルをかけるような企業へ成長しています。彼らはウォルマートなどの大手小売店での商品販売をきっかけに、黒人だけでなく、多人種やヴィーガンなど幅広い層をターゲットとする方向に転換しました。
もし最初から多角的に展開していたら成功しなかったと思われますが、1つの商品、1つのターゲットに絞って事業をスタートさせた「スモールスタート」の戦略が、現在の成長へと繋がったのです。
まとめ:北米進出を成功に導くためのヒント
北米進出を成功させるには、まず徹底した市場調査を行い、消費者の特性や価値観の違いを理解することが不可欠です。特に巨大なデジタル市場では、データとクリエイティブが成果を大きく左右し、インフルエンサーマーケティングが成功の鍵を握ります。
その上で、競争の激しい環境で選ばれるためには、ブランド認知の確立も欠かせません。ウェブサイトの最適化においても、単にコンバージョン率(CVR)を高めるだけでは不十分です。ユーザーの目線に立ち、文法ミスのない正確な説明文を用意するなど、信頼性を高める工夫が必要です。
さらに、AI時代においては「スモールスタート」を意識した戦略が効果的です。大規模な投資から始めるのではなく、既存のテンプレートやデザインを活用し、最小限のリソースでサイトを制作することで、市場の反応を見ながら改善を繰り返すことができます。
このように、市場理解・ブランド認知・信頼性の確保・スモールスタートの4つを組み合わせることで、顧客に響く価値を生み出し、効率的に成長を遂げることができるのです。
プリンシプルのサービス全体像
プリンシプルは、ウェブ解析などデータを強みとするエージェンシーです。
サービスの全体像として、現地の市場や顧客を深く理解する「ローカリティ」を重視しています。これにより、各分野の専門家「スペシャリティ」を持った担当者が、お客様をきめ細かくサポートします。また、各拠点に窓口を設けているため、密なコミュニケーションが可能です。
データに基づいた戦略で、ネット広告やSEOなどを通じて、お客様のビジネスに具体的な成果と結果をもたらします。