はじめに

無償版のモバイルアプリ向けGoogle Analytics(以下、「モバイルアプリ向けGA」)の提供が今年1月31日で終了し、約3ヶ月が経過しました。

現在は管理画面は疎か、データにアクセスすることすらできなくなっています。この機能を利用していた多くの企業は、既に何らかのアプリ計測ツールへの移行が済んでいることと思います。

考え得る代表的な移行先のツールの一つとして、モバイルアプリ向けGAを提供していたGoogle社が移行先としてアナウンスしていたFirebase Analyticsがあります。Firebase Analyticsは、FirebaseというモバイルおよびWEBアプリケーション向けmBaas型の開発プラットフォームの中に含まれる一部の機能です。

2020年にリリースされたGoogle Analytics4(以下、「GA4」)は、FirebaseのUIを採用しています。

モバイルアプリ向けGAとの違いは、以下のようなAnalyticsデータをFirebaseプラットフォームの別の機能と連携して活用することができる点です。

  1. In-App Messaging
    特定の行動(○○の商品を見た、購入をした等)を行ったセグメントに対し、アプリ内メッセージを配信
  2. Cloud Messaging
    セグメントに対し、通知を送信
  3. A/B Testing
    セグメントに対し、A/Bテストを実施

上記はFirebaseプラットフォームの一部の機能です。
Analytics単体での利用も可能ですが、Firebaseにアプリ基盤を構築する場合は、各機能を連携することでよりデータ利活用を行いやすい環境に整えることができると言えるでしょう。

これらの機能を部分的、あるいは全体的に利用していくことは、後述するモバイルアプリ向けGAとの違いからややハードルが高いかもしれません。
移行する場合には、データの持ち方・考え方が大分異なるので、「計測指標の違い」を念入りに調査・設計を行う必要があります。

本記事では、BigQueryでの実際のテーブルをお見せしながら、両者の指標の違いについて触れていきます(※Firebase Analyticsの話を軸としており、アプリ計測を中心に記載しております)。

集計方法

Firebase Analytics及びGA4は、イベントを軸としてデータが集計されます。

モバイルアプリ向けGAではセッションベースを主軸としてデータを切り分けましたが、Firebase AnalyticsとGA4ではイベントベースで集計され、イベントデータに参照元情報やスクリーン名の情報がパラメータとして記録されます。

その為、新たな計測仕様でデータを取り扱う際、おさえておくべき項目一覧は3つあります。

①標準イベント

Firebase Analyticsでの標準イベントのうち、利用頻度が高いと考えられるイベントを抜粋して以下に記載します。
https://support.google.com/firebase/answer/6317485?hl=jafirst_open:
ユーザーがアプリをインストールまたは再インストールした後に、そのアプリを初めて起動したとき

in_app_purchase:
iTunes の App Store または Google Play で処理されるアプリ内購入(定期購入の初回申し込みを含む)をユーザーが完了したとき

screen_view:
スクリーンが移動したとき

ドキュメントを見ていただくと、モバイルアプリ向けGAではディメンションや指標として存在していた項目がイベントに置き換わっていることが分かります。

②イベントに付与されるパラメータ情報

イベントデータには、下記ドキュメント内のパラメータ情報が付与されます。
(正直、①と②のドキュメントは1ドキュメントにまとめてほしいです)
https://support.google.com/firebase/answer/7061705?hl=ja&ref_topic=7029512

firebase_screen:
このイベントが発生したスクリーンの名前

ga_session_id:
セッション内で発生する各イベントに関連付けられた一意のセッション識別子(session_start イベントのタイムスタンプに基づく)

message_id:
FCM(Firebase Cloud Messaging)通知メッセージの ID

③BigQueryで有効となるフィールド情報

最後に、Firebase Analytics及びGA4とBigQueryを連携した際に閲覧可能となるフィールド情報です。
モバイルアプリ向けGAでの、ユーザースコープ、セッションスコープにあたる情報が記録されます。
https://support.google.com/firebase/answer/7029846?hl=ja&ref_topic=7029512

device:
デバイスの情報を格納するレコード

user_first_touch_timestamp:
ユーザーが初めてアプリを開いた時刻(ミリ秒単位)

geo.city:
イベントが報告された都市(IP アドレスベース)

BigQueryでのテーブルについて
ご紹介した①~③の情報が、Firebase AnalyticsとBigQueryを連携すると閲覧可能です。
BigQuery上に生成されるテーブルを見てみると、以下のような形式で生成されています。

実際のテーブルは以下のようなイメージです。

Firebase AnalyticsとGoogle Analyticsの計測項目の違い

ポイント:

  1. event_nameフィールドに①イベント名が記録
  2. event_params関連フィールドに②パラメータ情報が記録
  3. event_paramsの右に③フィールド情報が記録
Firebase AnalyticsとGoogle Analyticsの計測項目の違い

この2つのテーブルから、Firebase AnalyticsやGA4がイベントベースで、GAがセッションベースと、全く構成が違うことが分かります。

ですので、例えばGAのデータをデータポータルで接続してレポートを作成する場合、画面の指示に従って進めば簡単に作成へと進めますが、FirebaseはBigQueryを通して接続する必要があり、この癖のあるテーブルに従ったSQLを作成する必要がある注意しなければなりません。

Firebase Analytics及びGA4を利用する際に考えるべきこと

  1. 指標の選定
    Firebase AnalyticsとGA4には、①でご紹介した標準イベントに加え、アプリ種別に応じたイベントが存在します。
    https://support.google.com/firebase/answer/6317498?hl=ja&ref_topic=6317484
    標準指標のうち、KGI・KPIとして利用可能な指標の選定を行い、不足していれば別途実装していく必要があります。
    昨年、アプリとWEBのデータを統合するアプリ+WEBプロパティ(現GA4)がGAの機能群に追加されましたが、それでもまだFirebase Analyticsデータを閲覧するためのレポートは発展途上です。
    今のところはデータポータルやTableau等、BIツールでの閲覧が主要だと思うので、エクスポートを考慮した設計・実装を行うことをおすすめします。
  2. 利用料金
    Firebaseは基本無料で利用可能ですが、Firebaseをアプリ基盤とする場合や、BigQueryと連携して利用する際は、利用範囲に応じて課金が発生する可能性があります。
    Firebase上でAnalytics単体での利用であれば、無料版で問題ありません。
    Firebase料金表
    https://firebase.google.com/pricingBigQuery料金表
    https://cloud.google.com/bigquery/pricing?hl=ja
    ※連携方法は、Firebase管理画面( https://console.firebase.google.com/ )から対象プロジェクトを選択 > 歯車アイコンから [プロジェクトを設定] > [統合] > [BigQuery] より行います。
Firebase AnalyticsとGoogle Analyticsの計測項目の違い

まとめ

Firebase Analytic及びGA4sとモバイルアプリ向けGAの違いは、いかがでしたでしょうか。
同じGoogle社から提供しているツールであり、移行アナウンスもありましたが、計測項目が完全互換ではないので利用時には計測の再設計が必須となってきます。
しかし、GAほどメジャーなツールではまだないので、情報があまり出回っておらず、自力での実装はハードルが高いかもしれません。

弊社プリンシプルでは、アプリデータをTableauやデータポータルへエクスポート・レポート化等のサポートを行っておりますので、ご興味ある方はお問い合わせください。

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Ray

2017年にDMM.comに入社し、Google アナリティクスをはじめとしたGoogle製品の社内統括と設計に従事。元Google アナリティクス公式エキスパート。

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