2022年のSEOを私なりに一言で振り返るなら、「2022年はGoogleのAI技術がより発展した」と言えます。

例えば、MUM(Multitask Unified Task)やBERT(自然言語処理モデル)などの人工知能がより活用されるようになり、またLink spam system(2022年12月)では初めてAIをベースにしたSpamBrainが初めて導入されました(不正リンクの検出精度が向上)。同時に海外圏では、画像検索や音声検索、画像とテキストを組み合わせた検索手法など日を重ねるごとに検索方法は多様化しており、これらの背景にはAI技術は必要不可欠であったと考えます。

今回の記事では、2022年のSEO界隈でのトピックなどを振り返りながら、2023年のSEO展望について考察します。

2022年にロールアウトされた主なGoogleコアアップデート

2022年にロールアウトされた主なアップデートは以下の4つでした。

May 2022 core update (2022年5月)

前回のコアアップデートから約6ヶ月振りに実施。(前回は2021年11月)

September 2022 core update (2022年9月)

英語圏サイトではコアアップデートの他に、「Helpful content system」と「Product review system」が立て続けにアップデートされ、変動の大きい1ヶ月でした。

Helpful content system (2022年12月)

このアップデートの目的は「検索エンジン向けのコンテンツ評価を低くし、ユーザーのために作成されたコンテンツ評価を高くする」ことでした。例えば、ユーザーにとって付加価値のないコンテンツや翻訳などの自動生成されたコンテンツは評価を落とすようになりました。海外の文献では、辞書サイトや楽譜・歌詞サイトなどが影響を受けたようです。※ 2023年1月12日にロールアウト完了

Link spam system (2022年12月)

AIをベースにしたSpamBrainを用いたスパム防止システムを採用しており、不正リンクの自動検出精度が格段に向上しました。このシステムを採用することで、不正リンク自体を無効化することが可能になりました。

2022年にあった主なSEO界隈のトピック

前述のコアアップデートに加えて、Googleからさまざまな情報が公開されました。ここでは主なトピックを3つ紹介します。

Google検索ランキングシステムを一部公表

2022年11月にGoogleは、主に使用している検索ランキングシステムを一部公開しました。

以下がその一例です。

  • BERT
  • 災害情報システム
  • 重複除去システム
  • 鮮度システム
  • MUM
  • ニューラルマッチング
  • 削除ベースの降格システム
  • パッセージ ランキングシステム

今回公開されたランキングシステムは、Googleが構築しているテクノロジーのほんの一部であると想像しますが、このような情報が公開されることで、Googleが理想とする検索プラットフォームがどのような形態なのかを少しは理解することができるかもしれません。

Helpful content systemのアップデート

Helpful content systemが2022年12月にアップデートされました。日本語圏では初めての実施ということもあり、サイト運営者は順位動向など目が離せない期間だったかと思います。(多くのSEO界隈の人間は、Product review systemよりも先にロールアウトされたことに驚いた方もいたことでしょう。)

Helpful content systemの主な目的は「検索エンジン向けのコンテンツ評価を低くし、ユーザーのために作成されたコンテンツ評価を高くする」ことです。Googleはユーザーファーストな検索プラットフォームの構築を目指す中で、将来的に「自然検索結果の上位に表示させる為だけの記事」や「周辺情報を整理しただけのコンテンツ」などが上位表示されることを極力避けたいのではないかと考えています。

例えば、「〇〇 おすすめ」や「〇〇 人気」と検索すると ”おすすめ1000選” や ”人気商品100選” など明らかに検索エンジン向けに作成されたであろうページが自然検索結果の1位に表示されます。実際に目の前に100個の商品を並べられても、ユーザーは困惑しますよね。
※ 全てではないが、一部ケースで確認される為に指摘

このようにユーザーにとってアンヘルプフルなコンテンツの評価を下げる取り組みは、Googleが目指す検索プラットフォームの実現に欠かせないのではないでしょうか。

E-E-A-T概念への刷新

Googleがコンテンツの評価指針としてきたE-A-Tが、E-E-A-Tに刷新されました。
※ 検索品質評価ガイドライン(General Guideline)より

具体的には、Experience(経験)が新しく仲間入りし、Trustworthiness(信頼性)が「Trust」に名称が変更されました。

Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trust(信頼)の4つから構成されるE-E-A-T概念ですが、その中でもTrust(信頼)の要素が最も重要(=核である)と述べられており、その周囲を取り巻く3つの要素が下支えしサポートしているといいます。

これまでは「誰によって制作されたか、どんな人が監修したか」が重要視されてきましたが、新たにExperience(経験)が加わり、制作者がそのテーマについてどの程度の実体験をしているか(そのトピックに対する実体験や人生経験)が重要となります。「その商品を利用したことがある」や「その場所へ実際に訪れたことがある」などといった体験談が高品質なコンテンツとして益々理解される前兆なのかもしれません。

検索品質評価ガイドライン(General Guideline)では、Trust(信頼)が中心に位置し、最も重要な要素であると述べられていますが、私個人としてはそれを取り巻く他の3つの指標も同時に重要であると考えます。「経験に基づいているから信頼に値する」「専門性が担保されているから信頼に値する」そして「権威性があるから信頼に値する」といったように各指標が掛け合わさり、Trustが高まると考察します。

2023年のSEO展望を推測してみた

2022年はAI技術の発展やHelpful content systemの登場、E-E-A-T概念など変化は多岐に渡りましたが、2023年はどのようなスタンスやマインドを持っておくことが大切なのでしょうか?私なりにまとめてみました。

固定概念からの脱却 (SEO=自然検索1位という固定概念)

2022年だけに限った話ではありませんが、ここ数年でSEOは大きく様変わりをしたと考えています。これまでのSEOでは「ゴール=自然検索で1位を獲得すること」が目的でしたが、Googleの検索技術が日々進化すると同時に、SEOの目的も変化しています。

例えば、「スニーカー」と検索すると画像一覧や人気商品枠など、以前のGoogle検索結果画面とは一味違う見え方に変化しています。さらに「他の人はこちらも質問(People also ask)」や「他の人はこちらも検索(People also search)」といった機能も頻繁に見かけるようになりました。

このように、従来の考え方(SEO=自然検索1位)では真正面からSEOパフォーマンスを最大化することは難しく、Googleのテクノロジーの変化とともに、我々も柔軟にそして臨機応変に対応していく必要があるのではないでしょうか。

E-E-A-T概念の強化

前述したように、2022年にE-E-A-T概念が生まれました(実際には刷新された)。2023年はこれまで以上に重要視されてくると想定します。

一般的なコンテンツライティングでは「特定のテーマに対して、どういった構成や見出しで執筆するか」に重点を当てていたと思われます。しかし今後は「誰が書いているのか?」にも焦点を当てる必要があり、高品質なコンテンツを目指すには、コンテンツ制作者の実態を明示することが重要になります。

また、E-E-A-T概念はコンテンツ制作者がそのテーマについてどの程度の実体験をしているかが重要とありましたが、併せて「特定の商品やサービスを利用することで、ユーザー側にとってどのような経験が得られるのか」もコンテンツ制作を進める上で大切な取り組みになるでしょう。

例えば、最近のECサイトには商品ごとに購入した方のレビューが掲載されるケースが多いと思います。このように、単に商品を売ろうとするのではなく、購入を検討している人に「意思決定するための情報」を提供することもサイトの役割として重要視されるかもしれません。つまり「意思決定ができる手助け=付加価値」としてGoogleが解釈し、評価を高めていくと私個人は想像しています(ユーザーにとってヘルプフルなコンテンツとして認識される)。

ユーザーの検索行動も日々変化している

我々はお客様のサイトパフォーマンスを最大化させるため、Googleと向き合って些細な変動を察知していますが、変化するのはGoogleだけではありません。「ユーザーの検索行動」も日々変化しています。

世界で利用されている検索エンジンのシェア率トップはGoogleではあるものの、近年では、若年層を中心にSNSやYoutubeといった媒体で検索する層も増えています。一方で、依然として予測キーワード(サジェスト枠)を使って検索をするユーザーもいるでしょうし、検索結果画面上だけで知りたい情報を得て離脱するユーザーもいることでしょう(例えば、強調スニペットだけで知りたい情報が獲得できるなど)。

2022年10月にイギリスのブライトンで開催されたSEOカンファレンスでは「ユーザーによるゼロクリック検索が割合が増える」といった報告もなされました。実際に何かしらクエリで検索した際に、検索結果ページをクリックするのではなく、関連キーワードや他の人はこちらを検索(PAAボックス)、画像や動画一覧をクリックする層が増えているとレポートされました。このゼロクリック検索が増えている背景には検索画面の多様化が1つの要因として考えられますが、バタフライサーキットと呼ばれるユーザーの検索行動バターンの概念が変化していることも影響します。
参考: 「さぐる」「かためる」を蝶のように行き来するバタフライ・サーキットとはなにか:バタフライ・サーキットと 8 つの動機 – Think with Google

つまりはユーザーの検索行動も日を重ねるごとに変容しており、「Google」と「ユーザー」「サイト運営者」のトライアングルは切っても切り離せない関係にあると言えます。2023年も引き続き、対Googleだけではなく、対ユーザー視点も踏まえた対策や取り組みが必須になってくると考えています。

最後に

この記事では、2022年のSEO界隈のトピックを振り返り、さらに私が推測する2023年の変化をまとめました。未来を予測する取り組みは新鮮なものでした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

予測自体は不確実なものであり誤っている部分もあるかもしれませんが、日々さまざまなサイトと向き合いながら、より高い視座で物事を捉えられるよう日々鍛錬を積んでいければと思っております。

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滋田健斗

Marketing Division / SEMコンサルタント。2021年2月より株式会社プリンシプルへ参画。大規模サイトを中心としたSEO戦略立案や実装フォローまで丁寧な支援を心掛けている。過去執筆には『【2023年最新】Googleアップデートの歴史を辿ってみた』や『テクニカルSEOにも効果的! Webサーバーの生ログ解析による新たなSEO課題の発見』、『【2023年SEOを展望】Googleテクノロジーの発展と固定概念からの脱却』など多数。外部セミナーの登壇経験も数回あり。

保有資格: Google アナリティクス認定資格(GAIQ)、Google 広告 検索広告認定資格、Google広告「ディスプレイ広告」認定資格

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公開日:2023年03月

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