はじめに

SEOコンサルタントの外山です。

2022年5月下旬から6月上旬にかけて、2022年最初のコアアルゴリズムアップデートである「May 2022 Core Update」が実施されました。昨年11月のコアアルゴリズムアップデートからずいぶんと間が空いたこともあり、今回のアップデートには多くのSEO担当者やウェブマスターが注目したのではないかと思います。

一方で、コアアルゴリズムアップデートの内容に関してはGoogleは明らかにすることはなく、ヘルプページを見ても以下の様な一般的な記述があるだけです。

コア アップデートは大きな影響を広範囲に及ぼすため、その実施にあたっては周知を図ります。一部のサイトでは、コア アップデート後に掲載順位が下がったり、逆に上がったりすることがあります。掲載順位が下がった場合はサイトを修正しようと思うかもしれませんが、間違った修正を行わないように注意してください。場合によっては、まったく修正の必要がないこともあります。

ページに問題がなくても、コア アップデート後にパフォーマンスが低下することがあります。こうしたサイトは、ウェブマスター向けガイドラインに違反したわけでも、手動またはアルゴリズムによって違反に対する措置が取られたわけでもありません。実際のところ、コア アップデートには、特定のページやサイトを対象とした変更はありません。コア アップデートの変更は、コンテンツ全体に対する Google のシステムの評価方法を改善するために行われます。この変更により、過小評価されていたページのパフォーマンス向上も見込めるようになります。

Googleのヘルプページより抜粋

では、私たちはコアアルゴリズムアップデートをどのように受け止め、どのように対処すれば良いのでしょうか。本ブログでは、Googleの最近の発信傾向やGoogle検索結果の変遷などから、今回のコアアルゴリズムアップデートの内容を推察するとともに、Google検索の未来を考察します。

目次

「コアアルゴリズムアップデート」についての基本的考え方

そもそも「コアアルゴリズムアップデート」とは何なのでしょうか? 先述したGoogleのヘルプなどを見るに、コアアルゴリズムアップデートとは、「Googleが目指す理想」に近づくための、一連の改修内容と捉えることができます。

GoogleにはGoogleとして目指すべき「Google検索の理想像」があり、その理想を達成するために、検索のアルゴリズムであったり、検索結果画面であったり、あるいはその他の要素であったりを、日々改良しています。そして年に数回行われる大幅な改良が「コアアルゴリズムアップデート」であると我々は位置づけています。

コアアルゴリズムアップデートの位置づけ

そうすると、SEOに携わるものとしては、

  • 「Googleの最近の発信傾向+検索結果画面の最近の変遷+直近のアップデートの傾向」から、「Googleが目指している理想」についての見解を持ち
  • 「今回のアップデートによる実際のウェブサイトの順位変動の分析」を行うことで
  • 「今後の対処方針(現状維持も含む)」を示すこと

が重要となると考えます。

つまり、今回のコアアルゴリズムアップデートだけに注目するのではなく、常日頃からGoogleの公式発表や、検索結果画面そのものの変化に目を光らせつつ、「Googleが何を目指しているのか?」を想像し(=仮説をたて)、その仮説を実際の順位変動などのデータで検証しながら、我々は何をすべきか、あるいはしないのか(=現状のままで良いのか)を、明確にすることが求められるのです。

Google検索の最近の動向に対する考察

では、「Googleが何を目指しているのか?」に対する私の仮説を、5つ紹介したいと思います。

1.「検索アルゴリズムの強化」にはもはや力を入れていない?

Googleが提供しているサービスは、今やGoogle検索だけに留まることはなく、多様な広告サービスの展開やブラウザ(Chrome)の開発、Android端末の開発など、そのサービスは多岐にわたっています。Google検索が、Googleにおいてメインの事業であることに変わりはないと考えますが、その「力の入れ具合」は、昔と比べると変化しているように思います。

その理由の1つは、Googleの検索アルゴリズムは日々改良はされていますが、その大部分は既に成熟していると考えられるからです。コアウェブバイタルや、BERT、MUM(Multitask Unfied Model)といった新しい概念が登場してはいますが、クロールやインデックス、内部リンクや外部リンク、ページタイトルやディスクリプション、重複解消の手段(canonical)など、SEOに関する基本的なことが今後大きく変化することは、あまり考えられません。

※BERTやMUMなど、最近のGoogleアップデートの歴史はこちらで紹介しています。
【2021年最新】Googleアップデートの歴史を辿ってみた | 株式会社プリンシプル

もう1つの理由は、Google検索がPCでもスマートフォンでも、既にある程度のシェアを獲得していることです。スマートフォンでは、AndroidやiPhone(Safari)で標準の検索エンジンであり、特に検索機能やアルゴリズムの強化に力を入れなくても、ユーザーは獲得できています。パソコンにおいても、Chromeのシェアが高いことに加えて、Internet Explorerのサービス終了なども重なって、検索エンジンとしては圧倒的なシェアを誇っています。

Google検索が登場した2000年前後では、ユーザーに「選択」してもらうために、検索機能の強化や検索精度の向上はGoogleにとって至上命題であったと思います。しかし今となっては、それほど力を入れる対象ではなくなっているのではないでしょうか。

2.「悪質なSEO」との戦い

「検索アルゴリズムの強化にそれほど力をかけていない」と仮定したとして、それでもGoogleが年に数回、コアアルゴリズムアップデートを実施しているのは何故なのでしょうか?

それはGoogle検索の裏をかいた(仕組みを悪用した)「悪質なSEOとの戦い」があるから、と私は考えます。Google検索の歴史は、この「悪質なSEO」との戦いでもあったと考えることができます。

過去から最近に至るまで、ぱっと挙げられるものだけでも以下の様なものがあります。

  1. クローラーとユーザーで見せるコンテンツを変化させる「クローキング」や「隠しテキスト」「隠しリンク」
  2. 有料の外部リンクを購入して評価向上を狙う「悪質なバックリンク」
  3. 地域名掛け合わせなどで低品質なページを大量に作成してユーザーを誘導する「ドアウェイページ(誘導ページ)」
  4. ページタイトルやデスクリプションの内容とページの中身が違う「タイトル詐欺」
  5. 有名なサイトのサブディレクトリを貸し出す「大手サイトのホスト貸し・サブディレクトリ貸し」

もちろん、このような「悪意を持った行為」への対策強化だけがコアアルゴリズムアップデートの目的ではありませんが、その比重は、年々強まっているのではないでしょうか。

3.「客観的で公正・公平な検索」の実現

検索エンジンとしてのGoogleのシェアが高いことは、Googleにとってはもちろん良いことですが、別の問題を生みだしてもいます。例えば「Google検索一強」の弊害として、欧州などでは(独占禁止法などの観点から)危険視もされています。日本においても、「デジタル市場」や「デジタルプラットフォーム」の健全な発展という文脈の中で、検索サービスのあるべき姿が政府レベルで議論されています。

参考

このような動きに対して、Google検索には「客観的で公正・公平な検索」が今まで以上に求められています。

では、「客観的」かつ「公正」「公平」な実現のために、Googleは何をしているのでしょうか。その1つが、検索品質評価ガイドライン(General Guideline)の公表とアップデートであると私は考えます。

参考:2021年10月の検索品質評価ガイドライン(英語)

検索品質評価ガイドラインはGoogleのアルゴリズムそのものではありませんが、Goole検索において、Googleが重要と考えられる要素が解説されています。例えば、SEOにおいてよく話題になる「専門性、権威性、信頼性」(E-A-T)も、この中で言及されているものです。

このようなガイドラインを作成し、それをユーザーやウェブサイトの制作者に対して幅広く公開すること(オープンにすること)は、「客観的」かつ「公正」「公平」な検索を実現するための1つの方法であるといえます。それ故に、コアアルゴリズムアップデートなどにおいても、ここに書かれている内容に沿った改善が、多く行われていると考えます。

4.「多様な情報」の提示

「客観的」かつ「公正」「公平」な実現のために、Googleが取り組んでいると考えられる別の取り組みが、「多様な情報」の提示です。

以下は、2001年当時の検索結果画面と、2022年7月現在の検索結果画面です。

■2001年に「グーグル」で検索した結果
2001年に「グーグル」で検索した結果

■2022年に「コロナワクチン」で検索した結果
2022年に「コロナワクチン」で検索した結果

検索クエリの違いにもよりますが、2022年の検索結果画面では、実に多様な情報が提示されていることがわかります。「コロナワクチン」などではない、通常の検索クエリに対しても、強調スニペットやナレッジパネル、トップニュース枠、SNS枠、画像検索枠、動画検索枠、人気商品枠、「他の人はこちらも検索」など、いわゆる「通常の10個の検索結果」以外の要素が、検索結果画面に表示されることが多くなっています。

コロナ禍により、各所でデジタルシフト(DXなど)が進んでいる中で、特に医療情報などは、誤った情報が提供されると人命の損失にもつながりかねません。YMYL領域をはじめとして、Googleは自身が示す検索結果に対して、より慎重になっていると私は考えます。その「慎重さ」のあらわれが、現在の「多様な情報」の提示なのではないでしょうか。

1つの問い(検索クエリ)に対して1つの検索結果を示すだけでなく、検索者の検索意図を広げたり、「他の人はこちらも検索」など別観点からの検索結果を示したりと、「情報の多様性」は今後のGoogle検索において、重要な要素となっていくことでしょう。

5.「情報収集の更なる強化」 – Googleは敵か味方か

Google検索は、世界中にあるウェブサイトを「クローラー」が巡回することで情報を収集していますが、近年、Googleはその情報収集力を、別の方法で強化しているのではないかと考えます。

例えば、リッチリザルトを「インセンティブ」にして、構造化データを各サイトに導入させるのも、Google Merchant Centerにおいて、無料ショッピング枠を「インセンティブ」にして、商品フィードを送らせようとしているのも、ビジネスプロフィール(旧マイビジネス)で営業情報を登録させているのも、その「情報収集強化」の表れではないかと考えます。

そうして集めた多くの情報は、「人気商品枠」など、通常の検索結果以外の場面で活用しているようです。果たして「多様、かつ、膨大な情報」を集めるGoogleの真の目的は何か、Googleはウェブサイトにとって敵なのか味方なのか、そんなことを考えることも重要なのかもしれません。

今回のコアアルゴリズムアップデートに対する考察

以上、Google検索が目指すところに対する、私の仮説を紹介しました。その仮説をもとに、今回のコアアルゴリズムアップデートの影響をみてみると、以下の様にまとめられるのではと思います。

【全般的傾向】

弊社がトラッキングしているキーワードの傾向をみてみると、大手サイトの順位がやや悪化しているように思えます。「大手サイトのホスト貸し・サブディレクトリ貸し」の対策の一環で、ウェブサイトよりも、ページの内容そのものに重きが置かれるようになった(=ページ内容そのものがより評価されるようになった)可能性があります。言い換えれば、ページ評価における「ドメインのバイアス」が薄まった、とも言えるかもしれません。

【記事系コンテンツについて(メディアサイト)】

E-A-Tに基づいたコラムや、高い頻度で記事を更新しているサイトが、良い影響を受けた印象です。例として、弊社が支援しているサイトにおいて、今回良い影響を受けたサイトが直近で実装した施策は以下のようなものでした。

  • 記事ごとのカニバリの解消
  • 記事同士、または記事と他のコンテンツとの内部リンクの設計
  • ユーザーの意図に沿ったコンテンツ設計
  • 更新日と投稿日の明記
  • 構造化データの精緻化(Author情報の明記など)

【データベース型コンテンツ(ECサイト・求人サイトなど)】

今回のアップデートでは記事系サイトの変動が比較的大きかったですが、データベース型コンテンツにおいても、ある程度の変動はあった印象です。

さいごに

以上、本ブログでは、Googleの最近の発信傾向やGoogle検索結果の変遷などから、今回のコアアルゴリズムアップデートの内容を推察するとともに、Google検索の未来を考察しました。

コアアルゴリズムアップデートについては、多くの方が様々な観点から多様な情報をまとめていますが、その中で、このようなブログ記事があっても良いのではないかと思い、今回執筆に至りました。

本ブログ記事が、読者のみなさまの何らかの一助となれば幸いです。

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外山大

東京大学大学院、修士課程修了。11年間の文部科学省勤務の後、ITベンチャーにてメール配信システムやウェブサイトの開発に従事。

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