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Column

【独自調査】ChatGPTとPerplexityのクエリファンアウト設計を比較分析

ChatGPTやPerplexityに何かを質問したとき、AIは内部でどのようにクエリを組み立て、情報を検索しているのでしょうか。表示される回答だけを見ていると意識することは少ないですが、両AIともにユーザーの質問をそのまま検索エンジンに渡しているわけではありません。AIが内部で生成する「クエリファンアウト(Query Fan-out)」と呼ばれる検索クエリが、回答の元になる情報源を決めています。

「どちらのAIも似たような検索をしているのだろう」と思われるかもしれません。しかし、実際に調べてみると、両者には明確な違いがありました。

結論からお伝えすると、ChatGPTは元の質問を平均2倍に拡張し、英語化や年号付加で情報量を増やす「情報拡張」をしています。一方、Perplexityは質問を約20%短く整理し、ユーザーが入力した単語をそのまま組み替えてキーワード列に変える「情報圧縮」をしていました。

本記事では、Ahrefs Brand Radarが収集しているChatGPT・Perplexityの応答データから5,307件のユニーク質問と10,352件のクエリファンアウトを分析し、両LLMの内部検索クエリの違いについて解説します。

本記事の位置づけ

本調査は、過去3本の記事をさらに掘り下げた続編です。

過去記事『AIが推奨するブランドの共通点は?8業界200ブランドのSEO相関分析』ではブランド単位、『AIの推奨は比較軸や業界で変わる|1,440回のAI回答から見えた傾向』では業界単位、そして直近の『LLMは何を引用するのか|5,366問で表示の28,803ドメインを分析』ではクエリ単位の引用ドメイン分析を行いました。

直近の記事では「ChatGPTとPerplexityで引用するドメインが根本的に異なる」ことを示しましたが、なぜそうなるのかまでは明らかにできていませんでした。本記事では、両LLMの引用ドメイン差を生み出す「源流」にあたる、内部検索クエリの生成過程を分析します。

調査の設計

対象LLMの選定

直近の記事と同様、対象はChatGPTとPerplexityです。GeminiやAI Overviewsなどは、Ahrefs Brand Radarのデータ仕様でクエリファンアウトを取得できないため、両LLM比較に絞っています。

データの取得方法

データソースはAhrefs Brand Radarです。Ahrefs Brand Radarは、ChatGPTやPerplexityへの質問と、その応答メタデータを収集するサービスです。内部で生成された検索クエリ(クエリファンアウト)もAPI経由で取得できます。具体的にはbrand-radar-ai-responsesエンドポイントから、応答に紐づくクエリファンアウトのテキストを抽出することが可能です。

本調査ではcountry=jp、prompts=ahrefsの条件で、Ahrefsが標準プロンプトとして投じている質問への応答ログからクエリファンアウトを抽出しました。取得結果は以下の通りです。

  • ユニーク質問数:5,307問
  • クエリファンアウト総数:10,352件(ChatGPT 5,249件、Perplexity 5,103件)
  • 両LLM共通でクエリファンアウトが取得できた質問数:4,123問

分析した指標

各クエリファンアウトについて、以下の指標を算出し、LLM別に集計しました。

  • 文字数・トークン数(長さの指標)
  • 英字含有率・純英語クエリ比率(言語化の指標)
  • 年号含有率(情報の現在化の指標)
  • 疑問符残存率(元クエリ形式の保持の指標)
  • 元クエリとの一致率・部分抜き出し率(元クエリ流用の指標)

前提情報:クエリファンアウトとは何か

分析結果に入る前に、本記事で「クエリファンアウト」と呼んでいるものの位置づけを整理しておきます。

ChatGPTやPerplexityは、ユーザーが質問を投げた時、その質問をそのまま検索エンジンに渡しているわけではありません。LLMは内部で回答に必要な情報を探すための検索クエリを判断し、検索クエリを組み立てて検索エンジンに渡します。この「LLMが内部で生成する検索クエリ」がクエリファンアウトです。

たとえば「最新のiPad Airの値段はいくらですか?」というユーザー質問に対して、ChatGPTは内部で「iPad Air 2024 price Japan Apple iPad Air M2」のような英語混じりの拡張クエリを組み立て、Perplexityは「最新のiPad Air 値段」のような短いキーワード列を組み立てるという挙動がみられました。

クエリファンアウトの設計が両LLMの引用ドメインや回答品質を決める最初の一歩になります。であれば、クエリファンアウトそのものを比較することは、両LLMの設計思想の差を見るうえで最も粒度の細かい切り口になると考えました。

発見1:ChatGPTは「情報を足す」、Perplexityは「情報を削る」

まず、クエリファンアウトの長さを比較しました。両LLMのクエリファンアウトを基本指標で並べると、以下のようになります。

【ChatGPTとPerplexityのクエリファンアウト 主要指標比較】

指標ChatGPTPerplexity
平均文字数27.5字13.5字約2.0倍
中央値文字数21字13字約1.6倍
平均トークン数5.32.4約2.2倍
文字数の標準偏差19.43.8ChatGPTがより多様
文字数の最大値137字38字ChatGPTの上限が明確に長い

※トークン数:LLMがテキストを処理する最小単位の数。日本語では1文字あたり1トークン前後、英単語では1単語あたり1トークン前後が目安。

※標準偏差:データのばらつきの大きさを示す統計量。値が大きいほど個々のクエリの長さが平均から離れて分散していることを意味する。

ChatGPTのクエリファンアウトはPerplexityの約2倍の長さで、しかも文字数のばらつきも約5倍大きいことが分かります。Perplexityのクエリファンアウトは13字前後にきれいに集中しているのに対し、ChatGPTは10字台から100字超まで幅広く分布しています。

ここで気になるのが、「元のユーザー質問と比べた時、両LLMはクエリファンアウトを長くしているのか、短くしているのか」という点です。各クエリファンアウトと元のユーザー質問の文字数を比較したのが、次の集計です。

【元クエリ→クエリファンアウト 拡張率/圧縮率の分布】

元クエリとの関係ChatGPTPerplexity
クエリファンアウトが元より長い(拡張)58.1%2.3%
クエリファンアウトが元と同じ長さ4.3%17.6%
クエリファンアウトが元より短い(圧縮)37.6%80.1%
平均圧縮率(クエリファンアウト字数÷元字数)1.63(63%増0.78(22%減

両LLMの方針の違いがここで明確に浮き彫りになりました。ChatGPTは58.1%のケースで元クエリより長くしており、平均すると元の63%増しに膨らませているのに対し、Perplexityは80.1%のケースで元より短くしており、平均すると元の22%減に圧縮していることが分かります。

この差は、同一質問単位で見ても一貫しています。両LLMでクエリファンアウトが取れた4,123質問のうち、74.0%でChatGPTのほうがPerplexityより長いという結果でした。質問の内容によらず、両LLMが構造的に異なる方針を取っていると言えそうです。

なぜこのような差が生まれるのかは仮説の域を出ませんが、ChatGPTは「LLM自身の知識で元クエリを補足・詳細化してから検索する」設計、Perplexityは「ユーザーの語をそのまま検索エンジンが解釈しやすい形に整理する」設計、というそれぞれの設計思想の違いが背景にあるのかもしれません。

発見2:ChatGPTだけが「英語化」と「現在化」を行う

ChatGPTがクエリファンアウトを長くする時、具体的に何を足しているのかを掘り下げてみました。結論を先に言うと、ChatGPTが追加している情報の大半は「英語表記」と「年号」でした。

まず言語パターンを見てみます。各クエリファンアウトを「純日本語」「日英混在」「純英語」の3カテゴリに分類した結果です。

【両LLMのクエリファンアウト 言語パターン構成比】

言語パターンChatGPTPerplexity
純日本語55.9%75.9%
日英混在28.4%24.1%
純英語15.6%(821件)0.02%(5,103件中1件)

ChatGPTのクエリファンアウトのうち、約6件に1件は完全に英語のクエリです。これに対しPerplexityで純英語クエリが生成されたのは5,103件中わずか1件で、純英語化は事実上ChatGPT固有の挙動と言えそうです。

次に、年号の付与挙動です。ChatGPTのクエリファンアウトのうち、13.2%が「2026」「2025」「2024」などの西暦を含んでいました。Perplexityでは2.3%にとどまります。

決定的なのは、元クエリに年号が含まれていない場合の、新規付与率です。

  • 元クエリに年号なし→ChatGPTが新たに年号を付与:11.3%
  • 元クエリに年号なし→Perplexityが新たに年号を付与:0.6%

つまりChatGPTは、ユーザーが指示していない年号を約11回に1回の頻度で勝手に付加しています。「ユーザーが訊いていないことを補完する」という挙動が、これだけ高い頻度で起きていることは興味深いです。

ChatGPTが付与する年号の内訳を見ると、その意図がより明確になります。

【ChatGPTのクエリファンアウトに付与された年号の頻度】

年号出現回数構成比
202657382.8%
202514420.8%
2024243.5%
その他(1960年代〜2027)111.6%

※構成比は重複付与(1クエリに複数年号を含む場合)があるため合計100%を超えます。

付与される年号のほぼすべてが「現在」と「直近過去」です。ChatGPTは、ユーザーの質問に対して「いま検索すべきは2026年の情報だ」という判断を能動的に組み込み、最新情報を取りに行こうとしていることが見えてきます。一方Perplexityは、ユーザーが年号を指定しない限り、年号を付け足すことはほぼありません。

英語化と年号付与を合わせて見ると、ChatGPTは「ユーザーの曖昧な日本語質問を、英語ソースと最新情報の両方を取りに行ける形に変換している」と言えそうです。検索対象を広げつつ最新情報を取得する設計思想だと考えられます。

発見3:Perplexityのクエリファンアウトは過半数が「元クエリの組み替え」

最後に、Perplexity圧縮方法を見ていきます。発見1で示した通りPerplexityは元クエリを圧縮する傾向が強いわけですが、その圧縮の中身は何なのかを確認しました。

クエリファンアウトと元のユーザー質問を文字列で比較した結果が以下です。

【クエリファンアウトと元クエリの一致パターン】

一致パターンChatGPTPerplexity
完全一致(元クエリと同一)0.2%15.3%
疑問符を除けば一致(元クエリそのまま流用)1.1%16.2%
クエリファンアウトの全トークンが元クエリ内に存在(部分抜き出し)20.6%51.8%

Perplexityのクエリファンアウトの過半数(51.8%)は、ユーザーが入力した語の組み合わせだけで生成されています。この51.8%のなかには、元クエリの語をそのまま使ったキーワード列に並べ替えただけのものや、元クエリから一部の語を抜き出しただけのものが含まれます。

ChatGPTでは「クエリファンアウトの全トークンが元クエリ内に存在」する比率は20.6%にとどまり、Perplexityの約4割の水準です。ChatGPTは外部知識を能動的に追加するのに対し、Perplexityは外部知識の追加に慎重と言えます。

もう一つ特徴的だったのが、「疑問符の残存率」です。元のユーザー質問は本調査の全件で疑問符付きの質問形式ですが、これがクエリファンアウトに残るかどうかは両LLMで大きく異なります。

元クエリの疑問符の残存率

指標ChatGPTPerplexity
元クエリの疑問符がクエリファンアウトに残存する率1.7%15.5%

Perplexityは約6件に1件の頻度で、元の質問形式(疑問符付き)をそのままクエリファンアウトに残しています。一方ChatGPTは、ほぼすべての質問を「キーワード列+補足情報」の形に整形しており、質問形式自体を保持しません。

実例を見ると、違いはさらに明確です。

【同一質問に対する両LLMのクエリファンアウト比較(実例)】

元クエリChatGPTのクエリファンアウトPerplexityのクエリファンアウト
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並べて見ると、ChatGPTは「元クエリ+追加情報+並列化」、Perplexityは「元クエリの一部抜き出し」または「元クエリそのまま」という構造的な違いが明確に出ています。

以上のことから、Perplexityはユーザー入力に対する忠実性が高く、ChatGPTはユーザー入力を起点とした能動的な情報補完を行うという、両LLMの設計の差がクエリファンアウトの段階ですでに現れていると感じました。

調査の限界と今後の展望

本調査の結果を読み解く際は、以下の点にご留意いただければと思います。

相関は因果ではない

クエリファンアウトは「LLMが情報源を取りに行く中間ステップ」であり、両LLMの引用ドメインの違いを完全に説明するものではありません。

実際の引用には、検索エンジン側の挙動、LLMが返ってきた検索結果から情報源を選定するロジック、コンテンツの権威性・新鮮性など、複数の要因が絡んでいると考えられます。

対象はChatGPTとPerplexityのみ

本調査では、対象LLMをChatGPTとPerplexityの2つに限定しています。Gemini・AI Overviews・AI Modeは、Ahrefs Brand Radarのデータ仕様でクエリファンアウトが取得できないため除外せざるを得ませんでした。また、クエリはAhrefs Brand Radarの標準プロンプトに依存しており、すべての利用シーンを網羅するものではありません。

2026年5月時点の分析

本調査は2026年5月時点のデータに基づいています。LLMはアップデートされ、内部のクエリファンアウト生成ロジックも変更される可能性があるため、本記事で示した設計差は今後変化する可能性があります。

これらの限界を踏まえつつも、10,352件のクエリファンアウトという規模で、両LLMの内部検索設計の差を定量化できたことには、一定の意味があると考えています。LLMの内部挙動はブラックボックスと言われがちですが、出力データから構造を読み解くことは可能だと、今回の分析を通じて改めて確認できました。今後はデータの定期取得・継続観測を行い、LLMアップデートに伴うクエリファンアウト設計の変化や、より詳細な質問タイプ別の分析を進めていきます。

まとめ

本調査で明らかになったことを整理します。

  • 発見1:ChatGPTは「情報を足す」、Perplexityは「情報を削る」

ChatGPTは58.1%のケースで元クエリより長く(平均63%増)、Perplexityは80.1%のケースで元より短く(平均22%減)クエリファンアウトを生成。同一質問4,123ペアでも74.0%でChatGPTのほうが長く、両LLMの構造的な設計差として一貫している。

  • 発見2:ChatGPTだけが「英語化」と「現在化」を行う

ChatGPTは純英語クエリを15.6%、新規年号付与を11.3%の頻度で生成。Perplexityはいずれも事実上ゼロ(5,103件中1件、0.6%)。付与年号の8割超は「2026」で、ChatGPTは最新情報を能動的に取りに行く設計が読み取れる。

  • 発見3:Perplexityのクエリファンアウトは過半数が「元クエリの組み替え」

Perplexityのクエリファンアウトの51.8%は元クエリのトークンを組み替えただけ。完全一致も15.3%、疑問符残存率15.5%と、ユーザー入力への忠実性が高い設計。

今回の分析から、両LLMはクエリファンアウトの段階で異なる設計思想を持つことが分かりました。今後も継続的に観測し、両LLMの挙動変化や新しい構造的差異の発見をお伝えしていく予定です。

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本記事ではクエリファンアウトの設計に焦点を当てましたが、そのクエリファンアウトが実際にどんなドメインを引用しているかについては、別記事『LLMは何を引用するのか|5,366問で表示の28,803ドメインを分析』で詳しくお伝えしています。

過去記事については、ブランド単位の分析を行った『AIが推奨するブランドの共通点は?8業界200ブランドのSEO相関分析』、業界単位の分析を行った『AIの推奨は比較軸や業界で変わる|1,440回のAI回答から見えた傾向』も併せてご覧ください。

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