「来期から部署移動で突然Webマーケティングに取り組むことになって困った、、、」というケースは少なくないのではないでしょうか。また、実店舗マーケティング担当様など、一見Webとは関係のない部署でもホームページのアクセスデータの報告が来たり、Webマーケティング部署と連携が必要なケースもあるかと思います。

今回はそのような方に向けて、「Webマーケティングの全体像」や「どのように学習してスキルを身に着けていくべきか」を解説していきます。

Webマーケティングの概要と注意点

Webマーケティングとは

Webマーケティングとは、Webサイトなどへ集客し、自社の商品やサービスの魅力を伝えて、購入や資料請求などのアクションを促す活動全般のことを指します。

具体的な施策は後述しますが、やるべきことは多岐にわたります。たとえば集客では検索時に自社サイトを上位に表示させるための施策や、SNS上に広告を掲載してサイトに誘導する施策など様々な手法が存在します。また集客後はウェブサイトでの顧客の行動を分析し、より使いやすくするなどがあります。

下図は弊社でWebマーケティング全体を支援した事例の全体像です。

Webマーケティング全体像の例

このように、Webマーケティング施策は多岐にわたっています。

優先順位をつけて施策を実行する

Webマーケティングの施策が多岐にわたる一方で、経営資源(人・予算・時間)は限られており、全てを実行するのは厳しいと思います。そのため、自社の現状によって優先するべきことを決めて取り組むことが大切です。

「どこから取り組むことが、何を重点的に取り組むのが自社にとって一番売上へのインパクトが大きいのか」という戦略を策定した上で、各種施策(戦術)を実行することが必要になります。

Webマーケティングに着手する前に「マーケティング思考」を身に着ける

実際にWebマーケティングに着手する前に、「マーケティング思考」を身に着けることがおすすめです。なぜなら、Webマーケティングは、Webというツールこそ使いますが、マーケティングを理解していて初めて本来の力を発揮するからです。

マーケティングには様々な定義がありますが、「買われるための仕組み作り」という言葉がわかりやすいと思います。市場を調査し自社のターゲットを定め、魅力的な商品を作り、広告などで知ってもらい購入を促すなどの活動全般 ≒ 経営そのものといっても過言ではないと思います。

Webマーケティングは商品やサービスが既に存在していることが前提になります。マーケティングの中でも、「プロモーション」に近い領域なので、どちらかというと戦術(施策)になります。

また、それぞれの施策でも様々なデータが取れるので、その数値を見るだけでも時間がかかったり、各施策を理解するための学習が必要になります。そのため、Webマーケティング担当としていきなり施策を任されると、覚えることでいっぱいになり最も重要なターゲット理解など戦略の視点が抜けてしまう可能性があります。

マーケティングから学ぶと戦略の重要性から学べるので、Webマーケティング施策を行う際も原因分析や施策実行の精度が高まります。弊社の研修サービスでもWebマーケティング施策全般を学ぶことをゴールにしていますが、戦略の考え方などについてもカリキュラムに組み込んでおります。

マーケティングを学べるおすすめ書籍

マーケティングの具体的な定義や方法論については様々あり、記事内では紹介が難しいため、ここでは初学者向けと中級者向けのおすすめ書籍を2冊ご紹介させていただきます。

■おすすめ書籍① USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門(初学者向け)

https://amz.run/6UEr

USJ再建や丸亀製麵の復活で有名な株式会社刀の森岡さんの書籍です。「実の娘がわかるように」というコンセプトで執筆されたという背景もあり、非常にわかりやすく実例も交えながらマーケティングを勉強することができます。

■おすすめ書籍② マーケティング〔新訂〕 放送大学教材(中級者以上向け)

https://amz.run/6UEt

わかりやすくマーケティングの全貌が示されています。ややアカデミックに見えますが、記載されていることは基礎の部分なので意外と読みやすいです。ややとっつきにくさがあると思い中級者向けとしました。

Webマーケティングの実際のステップ

弊社ではWebマーケティング全般を支援しているため、実戦に近いステップで解説します。(色々な方法があるためあくまで一例)

  • Step① 戦略立案
  • Step② データ計測基盤構築
  • Step③ 集客
  • Step④ サイト改善
  • Step⑤ ダッシュボード化による社内連携

Step① 戦略立案

①-1 現状把握

3C分析、定量・定性調査などの調査で自社の強み・弱みを把握します。弊社ではGoogleアナリティクスや外部ツールを用いて自社サイトや競合サイトを定量的に分析しています。

既にマーケティング部署で調査したものがある場合には、そちらを使っても良いかもしれません。

①-2 戦略立案

調査した結果を基にWebマーケティング戦略を立案します。

ここでいきなり施策を列挙するのではなく、自社の顧客とその顧客が自社商品・サービスを知って購入してもらうまでの一連の流れ(カスタマージャーニー)を作成し、その流れにそって適切なKPIと施策を立案していきます。

ペルソナ設計

ペルソナ設計の一例

「自社のサービスを使用する典型的な顧客像」を明確にします。更に細かくユーザー心理などを深堀りする場合もございます。さまざまな型があるので、自社のビジネスに合わせて考えていきましょう。

カスタマージャーニー設計

設定したペルソナを使いながらカスタマージャーニーを設計します。ポイントは、タッチポイントだけでなくユーザーの心理や行動まで具体的にし、KPIまで落とし込むことです。以下にイメージを一つ紹介します。

カスタマージャーニーの一例

KPI設計

ジャーニー上の改善すべき課題や施策から逆算し、追いかけるべき指標を明確にします。様々な定義方法があるので、以下に一例を記載いたします。ここまで落とし込むことで、やるべき施策が明確になっていきます。

KPI設計の一例

弊社でもデジタルマーケティング戦略立案を支援しておりますので、ご興味のある方はご覧ください。

Step② データ計測基盤構築(タグ管理ツール/改修アクセス解析ツール実装/改修)

※計測基盤構築においてはプログラミングスキルなど必要なケースもあるため、簡易的にご紹介します。

なるべく正確な数値を計測するため、タグ管理ツールとアクセス解析ツールの実装及び改修を行います。弊社では主にタグ管理ツールはGoogleタグマネージャーを、アクセス解析ツールはGoogleアナリティクスの設定を支援しています。

最近では企業の大多数が活用しているGoogleアナリティクスの新バージョン(GA4)への移行間近ということもあり、Googleアナリティクス移行支援のご相談をいただく機会が増えております。

Step③ 集客

③-1 SEO対策

自社商品・サービスと関連のある検索がされたときに、検索結果で上位表示をさせるための施策です。弊社では全体像を以下のように定義しています。

seo対策の全体像

まずはGoogleが正しく評価してくれる基盤を構築してから、コンテンツマーケティングに取り組むことが望ましいです。

  • 1. サイトが正しく評価されるための構造的な課題(テクニカル課題)を解消
  • 2. 検索結果に表示されるテキストの最適化等によりクリック率を上げるための施策
  • 3. ユーザーに有益のある情報を盛り込んだ記事(コンテンツマーケティング)を作成

上記に加えテレビCMや外部サイトからのリンクを得てサイトの権威性を高めていく(ブランディング)ことでより検索順位が向上しやすくなります。

弊社のSEOコンサルティングサービスのページでも、SEOについて概要を説明しております。

③-2 Web広告

こちらも本当にたくさんの手法がありますが、最初に取り組む場合は、購入に近い層にアプローチできる施策から取り組みます。以下はWeb広告全体像と概要の図です。

web広告の全体像

既に悩みを持って検索しているユーザーなど、比較・検討している方にアプローチできる広告の方が費用対効果は良くなっていきますので、まずはそこから取り組んでいくことが良いです。しかしそれだけだと頭打ちになるため、非検討層にもアプローチして認知を高めていくことも中長期的に重要になります。

弊社でもWeb広告コンサルティングを提供しており、どの広告手法から取り組むべきかからコンサルティングを行っております。

その他様々な施策が存在するので顧客を理解して取捨選択することが重要

その他、PR、Googleマップ対策など本当に様々な集客手法があります。自社の顧客を理解することにまずは時間を使い、どうすれば顧客に効率よくアプローチできるかを考えて施策を取捨選択しましょう。

Step④ サイト改善

集客後のサイトに訪れた方を購入まで導くために、サイト改善は非常に重要です。

それだけではなく、使い勝手が悪いとネガティブな印象を与えてしまい、二度とサイトに来てくれない可能性もあります。実データを取得できるWebマーケティングのメリットを活かし、サイト改善に努めましょう。

ポイントは定量、定性両方で取り組むこと

アクセス解析ツールのデータを見れば、閲覧数が多いページや購入に繋がっているページなど、様々なことが定量的にわかります。しかし「なぜ購入が多いのか」などの心理的な情報は入ってこないため、仮説を立案し実際に顧客にインタビューをするなど定性的な情報と組み合わせることが非常に重要です。

④-1 サイト定量調査

アクセス解析ツールのデータを使って調査します。弊社ではGoogleアナリティクスというアクセス解析ツールを用いて調査しています。

【定量調査(アクセス解析)の一例】
定量調査(アクセス解析)の一例

④-2 サイト定性調査

顧客インタビュー等を通し、サイトの課題を定性的に把握します。

【定性調査の一例】
定性調査の一例

④-3 サイト改善の実行

課題を洗い出し、改善インパクトの大きい施策から反映させていきます。

サイト改善施策のイメージ

上記は弊社で展開している解析コンサルティングサービスの、改善案提示や調査の一部抜粋です。優先順位を付けるなど社内の開発リソースを鑑みることで実行がしやすくなります。

弊社の解析サービスであるハイブリッド診断のサービスぺージでも、分析のアウトプットイメージやスケジュールのイメージを掴んでいただけると思います。

Step⑤ ダッシュボード化による社内連携

各施策の数値をダッシュボードにまとめて可視化しやすくすることで、社内連携や次の施策の検討がスムーズになります。

Webマーケティングは様々なデータを数値化することができますが、専門用語なども相まって担当外の人にとっては少々ハードルが高く見えます。普段携わらない経営陣や別部署の方へ説明するときなどは、特に難しいと思います。そんな時に、ダッシュボードを作ることで社内連携がスムーズになります。

Googleアナリティクスデータを活用したダッシュボード

上記はGoogleアナリティクスのデータを使ってBIツールで作成したダッシュボードです。毎回Googleアナリティクスの画面からデータを引っ張ってくる必要もなくなりますし、各種主要指標がひと目でわかるので、打ち手を検討しやすくなり社内連携もスムーズになります。

弊社でもダッシュボード構築支援を行っており、サービスページではどのような流れでダッシュボード構築を行うのかがイメージできます。

おすすめのスキル習得法:インプットとアウトプットを繰り返す

Webマーケティングのスキルを習得するためには、インプットとアウトプットを繰り返していくことが非常に重要だと考えます。

というのも、Webマーケティングは本を読んでインプットするだけや、広告代理店から出されるレポートの数値を見るのみだったり、Googleアナリティクスをぼんやり眺めるだけでは成果改善、個人の成長に結びつけることは難しいからです。

本で読んだことは使わないと忘れますし、Googleアナリティクスなど各種ツールも、結局自分で触らないとわからない部分が多いです。本で読んだことを現場の同じ場面で使ったり、Googleアナリティクスの解説本を読みながら自分で手を動かすことで知識がスキルとなり、売り上げ改善に貢献するWebマーケターになっていくと考えます。

ですので、インプットとアウトプットを繰り返していくことをおすすめします。

オフラインのデータと連携すればさらに活用できる

今回はWebマーケティングということで主にWebサイト内の施策のみに絞りましたが、店舗での購入データなどを使うことで、オフラインの行動とWebの行動を結びつけることもできます。

「webサイトに訪れた方が、店頭で購入しているのか」
「webサイトの資料請求経由で発生した商談が受注に繋がっているのか」

がわかれば、オンラインのみならず全体のマーケティング活動にも活かすことができます。

上記はWebのデータと実店舗の購入データを紐づける手法のアイデアの一つです。

実現可否は現状のデータの取得状況などを確認する必要がありますが、BigQueryというGoogleが提供しているCDPにデータ統合をします。弊社では主な支援領域であるGA4やBigQueryを通じて実現の支援をしております。

様々なツールや情報があふれており、近年の購買行動はどんどん複雑化しています。それに伴い、データを統合して分析し施策を立案していくことはさらに重要になります。まだWebマーケティングに取り組んでいない企業は少ないかとは思いますが、改めてWebマーケティング全体を理解して、中長期的にデータ活用について考え、取り組んでいきましょう。

まとめ

この記事では、Webマーケティングの全体像を実行ステップに沿って解説しました。

  • Step① 戦略立案
  • Step② データ計測基盤構築
  • Step③ 集客
  • Step④ サイト改善
  • Step⑤ ダッシュボード化による社内連携

改めてにはなりますが、Webマーケティングでは効果の高いところから取り組むことが重要です。ご紹介した通りWebマーケティングの手法は多岐にわたるため、まずは自社のビジネスモデルや顧客、競合を分析し、売上までのフローを分解したKPIを立て、伸びしろはどこなのかを定めて最もインパクトの大きい施策から取り組みましょう。

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鈴木雄介

広告代理店にてSEO・広告・LP/サイト制作・PRなど、デジタルマーケティング全般のディレクション経験を経てプリンシプル入社。

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