ブランドリフトとブランディング広告

ブランドリフトとは読んで字のごとく、自社のブランドや新たな商品の認知度をより多くのカスタマーに広めること、またはそれらに対してより好印象を与えることを言います。そしてブランドリフトを達成するために行われる広告施策がブランディング広告です。従来のテレビCMや雑誌などに掲載されている広告がこれに当たりますが、近年では動画広告などのリッチメディアを通じてのブランディング広告も積極的に行われています。

このブログでは動画広告の一つである、YouTubeのTrueViewインストリーム広告(以下、TVISAと表記)でのブランドリフトについてご紹介します。

ブランディング広告とレスポンス広告の違い

検索広告やリマーケティング目的のディスプレイ広告などの、いわゆるレスポンス広告と違い、ブランディング広告はマーケティングファネルの上層段階で行われる施策です。つまり、ブランディング広告の目的はより多くの潜在層カスタマーを検討層に移行させることにあります。この時の最大の課題が「レスポンス広告と違い、成果の計測が行いづらい」ということです。

YouTubeのTrueViewインストリーム広告で行うブランドリフト調査

例えば検索広告の場合、複数のキャンペーンと広告グループを作成し施策を開始した場合、コンバージョンの獲得状況やCPAの値によって、どのキャンペーンまたは広告グループが高い成果を挙げているのかが数値として分かります。

しかしながら、ブランディング広告の場合はこうはいきません。例として、単純に動画広告の視聴回数が伸びた場合、それが必ずしも好印象によるものとは限りませんよね。ブランディング広告で目標とすることは、ターゲットとするカスタマーにブランドに対してのポジティブな認知を促すこと。これを計測するにはカスタマーに直接ブランドに対して良い印象や認知があるかを聞いてみる、つまりアンケートなどのブランドリフト調査が必要になってきます。
ではブランドリフト調査を行えば解決するのでは?とお思いでしょうが、そう簡単にはいきません。ブランドリフト調査自体の課題として、

  • 時間がかかる
  • 母数がある程度無いと信憑性に欠ける
  • ブランディング広告とは別に工数がかかる

などが残ります。特に、時間がかかる点に関しては、結果次第で施策の調整をなるべく早く行っていきたいウェブ広告にとっては致命的です。これらの問題をクリアして初めて有意義なブランドリフト調査と言えるでしょう。

TVISAで行えるブランドリフト調査

YouTubeのTrueViewインストリーム広告で行うブランドリフト調査

Googleはブランドリフト調査を5つの測定項目に分類しており、それぞれ

  • 広告想起
  • 認知度
  • 比較検討
  • 好意度
  • 購入意向

となっています。Googleはこれらのブランドリフト調査に加えて、サーチリフト測定といわれるものを交えた調査をブランド効果測定と呼んでいます。TVISAではある程度の予算をキャンペーンに費やしている場合、追加費用なしでブランド効果測定を、上記した課題を画期的に解決したうえで行うことができます。その際、調査したい測定項目を選択してGoogleの担当者に依頼することになりますが、出稿費用によっては複数、または全て選択することも可能です。どういった方法で行われるのか、詳しく見てみましょう。(キャンペーンに必要な予算については後述。)

ブランドリフト目的で新たなTVISAのキャンペーンを開始したとします。このキャンペーンにある一定の予算を費やしている場合、Googleの担当者の方に連絡を取り、ブランドリフト調査を含めたブランド効果測定を依頼することができます。

TVISAに対して行われるブランド効果測定は、「実験型」という手法で行われます。

  • まず、広告が配信されたグループと、広告が配信されなかったグループをGoogleが作成します。この時、両グループは同じ年齢層、性別、興味、関心などで構成され、唯一の違いは広告に接触したか否かになるように作成されます。
  • これらの両グループに、同じアンケートがYouTubeの動画開始前に配信されます。アンケートは選択式のものが一問なので、回答率も比較的高めです。
  • 広告に接触したグループとそうでないグループの回答結果の差異を比較し、ブランディング広告として行ったTVISAの成果があったかを判断します。
  • 約1か月ほどでGoogleからブランド効果測定の結果レポートが提供されます。
    アンケートの質問内容はブランドリフトの測定項目に沿って自動的に設定され、質問に対しての選択肢は個人で設定することができます。
YouTubeのTrueViewインストリーム広告で行うブランドリフト調査

それぞれの測定項目の使用目的

次に、5つのブランドリフト調査の測定項目とサーチリフト測定の一つずつの使用目的、つまりこれらの測定によって分かることを見ていきましょう。(以下、Googleが提供するブランドリフト調査の資料から抜粋。)

  • 広告想起:複数のTVISAを配信した場合、どの広告が最も覚えられていたか?
  • 認知度:どの属性グループが一番ブランドを認知してくれたか?
  • 比較検討:広告メッセージはオーディエンスに対し、ブランド(商品)の比較検討を促せたか?
  • 好意度:企業ブランディング、商品ポジショニングの定点観測
  • 購入意向:どういう属性のユーザーが広告接触により、商品を買う意向が上昇したか?
  • サーチリフト測定:広告内容がユーザーの興味・関心を引き、検索を促せたか?
  • Googleから提供して頂けるレポートの例として、購入意向を調査の対象に選択した際の一部が以下になります。
YouTubeのTrueViewインストリーム広告で行うブランドリフト調査

キャンペーン予算・TVISAによるブランドリフトの難点

最後に予算について。これがTVISAでブランドリフトを行う上での最大の課題点になります。既にお話した通り、TVISAを行う際にGoogleに依頼できるブランド効果測定は、約1か月で調査結果が分かり、追加費用もかからず多数のユーザーにアンケートを配信できるという非常に優れたものですが、測定を行うには一定の費用をキャンペーンに費やしていなければなりません。2019年6月現在、ブランド効果測定を行う上で必要なキャンペーン費用は以下になります。

YouTubeのTrueViewインストリーム広告で行うブランドリフト調査

ブランドリフト調査と合わせてサーチリフト測定調査を行いたい場合、1日当たり約$1,070相当、最低14日間出稿することが条件となります。注意点として、これらの予算はあくまで目安であり、アンケート回答率が低かった場合は信頼性の高い結果が得られずに調査失敗となる場合もあります。

あいにくご覧の通り、誰にでも手を出せる費用設定にはなっておりません。ブランドリフトの目的は、自社のブランドの認知度を高めること、即ち認知度が低い方ほど行いたい施策であるかと思います。しかしながら、TVISAでは動画広告の配信自体は出来ても、その成果を図るブランドリフト調査自体はある程度の予算がないと難しいです。そのような理由もあり、本機能で想定しているターゲットは「テレビCMを出稿するような企業で、予算をテレビCMから動画広告にシフトさせるかどうか悩んでいる」ような企業と考えられます。そういった大手の広告主ではTVISAを継続的に出稿し、毎月ブランドリフト調査のスコアを計測、それにより認知度や購買意向のリフトを定点観測し、配信素材や予算を見直しながら運用を行っているケースもあります。

終わりに

TrueViewインストリーム広告でのブランドリフト調査は、残念ながら誰にでも手が出せるものではありませんが、それでも従来のテレビCMなどと比較すると、動画配信及びそれに対してのリフト調査はかなり一般化されてきていると言えるでしょう。リフト調査には前述した3つの課題、もしくは費用の課題がどの媒体でもつきまとうのが現状ですが、近い将来誰もが気軽に行える日が来るかもしれません。

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池田将樹

アイダホ大学大学院卒。Ad Tehnical スペシャリスト。GAIQ、Adwords認定資格所持。

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