運用型広告で気軽に行えるABテスト。皆さんも活用されていますか?

運用型広告では、GoogleやFacebookをはじめ、各媒体にABテストの機能が備わっているため、試している方も多いのではないでしょうか。しかし、簡単に始められるからこそ、効果的なテストが実施できていないという問題もあります。

私自身も、ABテストは身近な施策ですが、効果検証がうまくいかない経験が何度もあります。

そこで本記事では、Googleなどの検索広告で利用する広告見出し文や、ディスプレイ広告に利用するバナーでABテストを行う前に確認しておくべきポイントについて、私の経験を元にまとめます。少しでも皆さまの参考になれば幸いです。

ABテストの目的

定量的な視点から考えると、ABテストは成果を改善するためのものです。

これに加えて個人的な経験から言うと、テストを通じてユーザーのニーズを理解することを目的にすると、より楽しく、有意義なテストになることが多かったです。

運用型広告のABテストでは、以下のような要素でテストを繰り返すことが多いのではないでしょうか。

  • 訴求軸
  • デザイン
  • リンク先

以下では、これらの要素について、どのような考え方でABテストを行えばよいか考えてみます。

①訴求軸のABテストの考え方

下記の人材紹介サービスを想定して作成した訴求案を例にご説明します。

  • タイトル案A:求人数●●●件以上|△△の求人なら[ブランド名]
  • タイトル案B:働きやすい企業へ転職|△△の求人なら[ブランド名]

ABテストでは、仮説を立てて検証することが必須です。たとえば、Aパターンでは「求人数」を、Bパターンでは「求人の特徴」を訴求しており、どちらの訴求軸がより成果を上げているかをテストします。

年末に上記のABテストを実施し、分析の結果A案【求人掲載数】のほうが高い成果を出したとします。

年末の休暇中にキャリアプランを再考する転職希望者が、今後の働き方を見直すために多くの求人を検討するために登録が増加したのかもしれません。ではB案【求人の特徴】のほうが優位性が低くなったのはなぜでしょうか?

・・・

上記はあくまで例ですが、ABテストの結果を振り返る際には、定量・定性の両面から次の仮説を導き出せるような構成にすることが重要です。よくABテストで「勝ちパターンを見出す」と言われますが、私は特定の成果を出したバナーに特化してPDCAを回すものではないと考えています。

ユーザーの行動は複雑です。経験上、同様のバナーがずっと成果を出し続けることはありませんでした。得られたデータをもとに、さまざまな外部要因(季節や時流、競合など)を掛け合わせて「ユーザーニーズを定量・定性の両面から丁寧に探り、ユーザーを理解すること」が広告におけるABテストの意味ではないでしょうか。

訴求軸の見つけ方

  • タイトル案A:求人数●●●件以上|△△の求人なら[ブランド名]
  • タイトル案B:働きやすい企業へ転職|△△の求人なら[ブランド名]

先ほどの例でBパターン「働きやすい企業」という訴求は、どこか漠然としていて自分ごととして捉えにくい印象を受けませんか?広告バナーを制作する際には、ターゲットとなるユーザーの解像度(何を求めているのか)を理解し、どこまで具体的に説明するかを意識することが重要です。

たとえば、CVデータやサイト上の動き、アクセス数が多いページを分析した結果、「働きやすい環境」を重視するユーザーが一定数いることがわかったとします。人材紹介サービスのサイトにおけるGA4データをもとに、コンバージョン数が多い求人ページの特徴を簡易的にカテゴライズし、グルーピングしたものが下記です。

【働きやすい企業とは?】

  • お休みが多い:年間休日120日以上、完全週休2日制育休あり
  • 働き方が調整しやすい:フルリモートOK、定時あがり

この具体化により、

タイトル案B:働きやすい企業へ転職|△△の求人なら[ブランド名]

タイトル案B’:年間休日120日以上|△△の求人なら[ブランド名]

のような訴求も考えられます。

B案のように、「働きやすい企業へ転職」といった文言をそのまま広告文に反映して運用するのも良いと思います。しかし、より効果的な訴求を検討する場合は、グルーピングを活用してより具体的な文章を作成することで、「働きやすい企業」の具体性が増し会員登録を検討するユーザーが増えるかもしれません。

大幅な改善にはつながりにくいかもしれませんが、成果が出ている訴求軸の見せ方を少し変えるだけでも反響を得られることがあります。

②デザインのABテストの考え方

ターゲットとなるユーザのニーズに沿ったキャッチコピーが固まったら、次に挑戦したいのはデザインのテストです。たとえば「イラスト調が親しみがあって良いのか、それとも写真の素材のほうが良いのか」といった検討をします。接触するユーザやサービスによっても変化するところでしょう。

私は一定の成果が見込める訴求軸に対して、デザインをテストしながら最適化するのが良いと思っています。

タイトル案:働きやすい企業へ転職||△△の求人なら[ブランド名]

たとえば、上記のタイトルAでは、「働きやすい」ことを打ち出しています。そのためバナーとして使用する画像の例としては、

  • コーヒー片手にゆったりとお仕事ができる画像
  • 早い時間帯に退社している画像
  • 仕事をしながら家族やペットと一緒に過ごす画像

など、イラストや画像だけで訴求内容を連想させるようなものを選定することが効果的かもしれません。

今回は人材紹介サービスを例にしているため、ユーザーの働き方やワークライフバランスの良さを彷彿させるようなクリエイティブを例にしました。自社サービスを利用する上でのメリットをイメージとして落とし込むことが大切だと思います。

バナーのABテストをする前に振り返りたいポイント

バナーを改修する前に、配信面にも注意を払うことが重要です。なぜなら、ディスプレイ広告の配信面によっては文字が潰れて読めなかったり、見えにくくなることがあり、成果が上がらないこともあるためです。

広告を配信する前に、可能であればどのような形で広告が表示されるのかを目視で確認することをおすすめします。

③リンク先のABテストの考え方

広告のリンク先を「商品ページ」や「TOPページ」にするべきか、それとも「ランディングページ(LP)」にした方が良いのか、迷ったことはありませんか?

たとえば求人系のABテストを例に、画像のような構成の2つのページがあったとします。

(1)「魅力的な求人コンテンツ+会員登録用フォーム」だけを設置したシンプルなLP
(2)サイトのトップページ

広告のリンク先にこれらが設定された場合に、ユーザーはそれぞれどのような行動を取るでしょうか。

(1)の場合、ユーザーは「会員登録すれば魅力的な求人情報が得られる」と認識し、会員登録に至りやすいかもしれません。(2)の場合、サイト内を回遊して求人情報を探す動きが生まれるかもしれませんが、サイト上での回遊が多いだけで離脱してしまう可能性もあります。

コンバージョンという視点だけで見ると、正解は(1)かもしれません。しかし、コンバージョンしたユーザーがその後どのような動きをしているかを確認することも重要です。

リンク先のABテストを実施した後に振り返りたいポイント

ユーザーに見せるコンテンツがROASにどれだけ影響を与えるかを意識することも、効果的なABテストを行う上で重要です。

たとえば、(1)のLPページから会員登録をしたユーザーは、転職活動を始めたいと思っているものの、具体的な求人内容はまだ頭の中でイメージできていないかもしれません。そのため、会員登録後に休眠ユーザーになってしまう可能性もあるのではないでしょうか。

一方、(2)のように、求人情報を検討しているユーザーはコンバージョン率は低いかもしれませんが、積極的に転職活動を行っている可能性が高いかもしれません。結果的にROASベースで見ると、(2)のほうが成果が良かったという結論になる事もありえます。

ユーザーの動きを直感的に把握するために、ヒートマップツールを導入するのも効果的です(私はMicrosoft社が提供している無料ヒートマップツール「Clarity」をおすすめします)。

1人ではなくチームワークで行う

ここまでの内容を要約すると「ユーザに即した訴求やコンテンツを打ち出しましょう。」という話に集約されます。しかしこの「ユーザ理解」は1人ではとても難しいものです。ABテストが曖昧に終わってしまうのは、多忙な業務と並行して仮説検証のアイデアが枯れてしまい継続が厳しくなる、という一面もあると思います。

そのため、ABテストは1人ではなく複数人で進めることをおすすめします。たとえば、社内のマーケティング部内で切り口を探ったり、ユーザと接する機会が多い他部門(たとえばセールスチーム等)にユーザの肌感をヒアリングしたりするととても楽になります。

チームワークのポイント

もし可能であれば、実際にコンバージョンしたユーザと接触した際に「なぜサービスを購入したか」などをヒアリングできたりすると良いでしょう。マーケティング部門だけでは厳しいと思うので、こちらもセールスチームやカスタマーチームと連携すると解像度が上がりやすいと思います。

体制的に難しい場面も多いかもしれませんが、大仰にミーティングという形ではなく、「最近お客様とどんな話する?」というような雑談ベースでユーザの肌感を確かめてみると、意外な訴求の切り口が見つかるきっかけになるかもしれません。

また、競合の広告や、コンバージョンしたユーザが自社サービスを利用してくれた理由(カテゴリー毎にまとめておく)も、広告文やバナークリエイティブのネタになります。

まとめ

本記事では、Googleなどの検索広告で利用する広告見出し文や、ディスプレイ広告に利用するバナーでABテストを行う前に確認しておくべきポイントについて、私の経験を元にまとめました。

定量面である「広告バナーの勝ちパターン・訴求の勝ちパターン」という観点も大切ですが、それらは時期などの要因によって常に変化するものと捉えています。勝ちパターンであったバナーを回していたけれど成果がでなくなってきた…といった事も突然現れるのがマーケティングの大変なところであり面白いところでもあります。

真に意味のあるABテストは、テスト結果から「ユーザはなぜ自社のサービスを選んでくれたのか」を定性・定量の面から深堀していくことが大切ではないかと私は感じています。普段の施策だけでは、ユーザニーズを大雑把にしか把握できませんが、仮説をもとにニーズを検証していく1つの手段としてABテストを活用できます。ABテストの結果、ユーザーへの理解が深まれば、新しい施策や新規顧客の開拓もしやすくなり、より発展的なマーケティングが実現できるのではないでしょうか。

長くなりましたが、少しでも皆様の参考になりましたら幸いです。楽しいマーケティングライフを!

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西山麗

新卒でSEO会社に入社しSEOコンサルタントとして従事。その後、事業会社で様々なサービスのマーケティング業務を経てプリンシプルへ入社。

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