これからの新指標「トータルサーチカバレッジ(Total Search Coverage)」

多くのWEBマーケターがぶつかる悩み

SEOやリスティング広告の運用に関して、考えうる施策は全てやってきたが思うように成果が出ない・・・。」
「これ以上改善する施策が見つからず行き詰っている・・・。」

このような悩みを抱えるマーケターの方は数多くいることでしょう。弊社が支援させて頂いたクライアント様にも、そのような課題感を口にされる方が多くいらっしゃいました。自然検索からのサイト流入増加を促すための施策として、SEOやリスティング広告は代表的なもので、成果改善のための手法も多様に存在していますが、狙い通りに効果が出ないということもしばしばです。

  • サイト内部構造の最適化
  • コンテンツ制作による流入数増加
  • リターゲティング広告による再訪問促進
  • データフィードの見直しによる広告成果の改善

これらの施策は、サイトの訪問数を増やしながらKPIの獲得を目指しているWEBマーケティングにおいては頻繁に実施されているものではないでしょうか。あらゆる手を尽くしてきたにも関わらず、サイトのパフォーマンスがうまく改善されない。さらに、現状を打破する施策が見つからないというのは、多くのマーケターに共通する悩みの種と言えるでしょう。

そのような悩みを抱えるクライアント様に対して、弊社がよく提案するのが、

「トータルサーチカバレッジ」
という指標です。

これは弊社が独自に開発した指標で、今までに多くのWEBサイトのパフォーマンス改善に貢献してきました。実際に弊社が支援させて頂いたあるアニメグッズのECサイトの例では、トータルサーチカバレッジを導入して施策を打ったところ、自然検索とリスティング広告によるサイト流入の合計が前年比で10%増加。さらに、ROASは施策実施前のレートから10%アップし、更にCPCも20%低下するなど、WEBサイトの業績改善に役立った事例が多くあります。
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しかし、これまで日本とアメリカを合わせて1000社以上の支援をさせて頂いた弊社の経験からすると、このトータルサーチカバレッジの考え方を初めからWEBマーケティングに取り入れていた企業様はほとんどなく、まだまだやり切れていないサイトが多いようです。背景としては、SEOとリスティング広告の委託先が異なるため、この指標を取り入れられていないということが挙げられます。

そこで本ブログでは、トータルサーチカバレッジが表す数値の意味や、実際にマーケティング施策に繋げる際の活用方法を紹介しながら、SEOやリスティング広告における有用性をお伝えしていきます。

トータルサーチカバレッジとは

トータルサーチカバレッジは、以下の計算式で表すことが出来ます。

これが示しているのは、「あるWEBサイトのGoogle上での自然検索結果表示回数のうち、実際にサイト訪問(クリック)まで至った割合」です。検索キーワードごとに算出することができます。検索結果には、自然検索の結果とリスティング広告の2種類が表示されるため、自然検索によるサイト訪問の総数は自然検索からの流入とリスティング広告からの流入の合計で表すことができます。

そのためトータルサーチカバレッジでは、自然検索もしくはリスティング広告による流入の合計を全体の自然検索結果表示回数で割ることで、自然検索におけるサイト訪問率(クリック率)を算出しています。

しかし一般的にはあまり浸透している指標ではないので、意味だけ聞いてもイメージが湧かないという方がほとんどだと思います。分かりやすいよう順に説明していきます。

あるユーザーが何らかのキーワードでGoogle検索をしたと想定してください。すると当然、検索されたキーワードに関連するWebサイトやリスティング広告が、検索結果として表示されます。この時に、出来るだけ上位に自社サイトが掲載されるようになれば、必然的にユーザーの視覚に入るようになるので、ウェブサイトへの流入数が増えることになります。このように、あるキーワードでの検索時に自社サイトが上位表示されるようにしたり、もしくは自社サイトが上位表示されるような検索キーワードを増やしていこうとするのが、SEOの基本的な考え方です。リスティング広告の場合もベースとなる考え方は同じで、予め意図したキーワードを設定の上、検索結果に表示させることでユーザーの認知を向上させサイト訪問を増やしていきます。

しかしながら、たとえ検索結果で上位表示されたとしても、その後ユーザーが実際にサイトを訪問する場合もあれば、そうでない場合もあります。当然のことですが、検索結果として表示された際に、より高い確率でサイトに訪問してもらった方がいいですよね。

サイトは様々な検索キーワードを通じて検索結果に表示され、キーワードが変われば、検索結果に表示されてからのサイト訪問(クリック)確率も変わってきます。そこで、検索結果として表示されるがあまりサイト訪問に結びついていないキーワードと、検索結果として表示されると高確率でユーザーをサイト訪問に導いているキーワードを知ることが出来れば、次の施策に繋げることが出来そうです。それらのキーワードを根拠のある確かなデータに基づいて示してくれるのが、トータルサーチカバレッジです。

【基礎知識編】トータルサーチカバレッジを導入すべき3つの理由

KPIとしての信頼性や妥当性が「検索順位」や「キーワード数」などよりも高い

SEOの観点で見たときに、トータルサーチカバレッジをKPIとすることは非常に妥当性が高いことであると我々は考えています。

自然検索(オーガニック)順位やキーワード数をKPIに設定して施策を打ち出していくのは、SEOにおいてはごく一般的なことでしょう。周知のとおり、検索順位が向上すればするほどユーザーはそのサイトをクリックして訪問する確率(クリック率)が高まります。一方、キーワード数においても、サイトが上位表示される検索キーワードが増えれば増えるほど、多くのユーザーの目にそのサイトが触れる機会(表示回数)が増えます。

しかしながら、本来KPIが果たすべき役割を考慮したときに、自然検索順位やキーワード数だけではカバーしきれない部分があるのではないかと我々は考えています。なぜならば、自然検索順位やキーワード数のみではユーザーが実際にサイトをクリックして訪問したかどうかが指標に反映されていないからです。

WEBマーケティングでは、一般的に「サイトのコンバージョンを向上させる」というKGIを達成するための下位指標としてKPIを設定します。従って、SEOやリスティング広告の施策やそのKPIも、基本的にはサイトのコンバージョンを上げる(KGIの達成に繋がる)ものとして妥当である必要があります。

この点、ユーザーへサイト訪問を促すための施策であるSEOやリスティング広告の施策においては、検索結果表示数だけでなく、サイト訪問数も反映した指標をKPIに設定することが必要と言えるでしょう。

ところが、自然検索順位やキーワード数が示しているのは、厳密に言うと、「より多くのユーザーがそのサイトの存在を知るための機会の数」に過ぎず、実際にサイトを訪問してくれた回数、すなわちクリック数を示してはいないため、KGI達成との繋がりはやや弱いと思われます。仮に自然検索順位やキーワード数の目標KPIを達成できたとしても、サイトへの流入は以外と少なかったといったケースも生じえますし、また実際にそうなったときに、何が原因でそうなったのかを特定し、対処することが難しくなってしまいます。

トータルサーチカバレッジでは、サイトのクリック数(サイト訪問回数)が計算に組み込まれており、キーワードごとに分析することができるので、クリック数をあまり創出していないキーワードを特定した上で対策を打つことが出来るようになります。従って、サイト訪問数を増やしたいという狙いで設定するKPIとして、自然検索順位やキーワード数よりも有効で妥当な指標であると考えられます。

正当なデータに基づいて施策対象のキーワードを選定することができる

ここからは、SEOとリスティング広告の両側面からトータルサーチカバレッジの有用性を説明していきます。

SEOやリスティング広告においては、施策を打つべきキーワードとそうでないキーワードの選定は非常に重要なポイントです。サイトのコンバージョンを上げるというゴールから逆算したときに、どのキーワードに狙いを定めてSEOやリスティング広告の施策を打ち出していくのかが正しく理解されていなければ、望ましい結果を見込むことが難しいからです。

正しいキーワードの選定というのは、口で言うほど簡単ではありませんが、トータルサーチカバレッジを用いることで、確かなデータを基に注力すべきキーワードとそうでないキーワードをより正確に選定することが可能になります。

図1をご覧ください。これは、トータルサーチカバレッジをキーワードごとに示したものです。一番右側の赤枠で囲まれた部分が、左にあるキーワードに対するトータルサーチカバレッジを表しています。ここから、数多くのキーワードの中でも、トータルサーチカバレッジが高い、すなわち検索結果に表示がされていれば高確率でサイト訪問までユーザーを結びつけているキーワードと、検索結果に表示されていてもあまりユーザーがサイトを訪問してくれていない(トータルサーチカバレッジが低い)キーワードが両方存在するのが分かると思います。


(図1:トータルサーチカバレッジ 出典:弊社作成)

次に、図2を見てください。左側にブルーでハイライトされているキーワードは、トータルサーチカバレッジが比較的低いキーワードです。例えば、ハイライトされた中で一番上にある【「ブランド」アウトレット】というキーワードの場合、トータルサーチカバレッジは20.86%であることが分かります。すなわち、ユーザーがGoogleに【ブランド アウトレット】というキーワードで検索してサイトが結果に表示された場合、実際にそのサイトを訪問してくれたのは10回あったとして2回程度だったという事になります。

他のキーワードを見てみても、低いものでは10%を下回っているものもありますね。逆にトータルサーチカバレッジが50%を上回るキーワードがいくつもあることを考慮すると、これは大変な機会損失であると言えます。

このように、トータルサーチカバレッジを用いることでデータに基づいたキーワード選定をすることが可能になります。


(図2:トータルサーチカバレッジが低いキーワード 出典:弊社作成))

SEOとリスティング広告にかかるコストの最適配分を可能にしてくれる

これまでにも述べてきたように、SEOもリスティング広告も、検索からのサイト流入を増加させるための施策です。とはいえ、闇雲に両方の施策に取り組んでも、無駄な広告費用や時間、人員を費やしてしまいかねません。では、どのようにそれぞれの施策を使い分けていけばよいでしょうか?

SEOであれば、ざっくり言うと自社サイトそのものを改善していく取組みなので、リスティング広告と比べてほとんど費用がかかりません。しかし、施策の結果必ずしも成果が発揮されるとは限らない上、施策開始から効果が出るまでに時間がかかることが多いなどの欠点もあります。

一方のリスティング広告では、基本的に多くの費用をかけた分だけ、検索結果に表示させることができます。また即効性もあり、広告を打てばすぐにその効果を見込むことが出来るという利点もあります。しかしながら、リスティング広告にはコストがかかってしまうため、注意が必要です。SEOでしっかり露出ができているキーワードについては、あえてリスティング広告として掲載する必要がないキーワードも存在します。

以下にSEOとリスティング広告それぞれの特徴をまとめた表を記載しました。

WEBマーケターとして、コストをかけずともSEOで十分なキーワードと、リスティング広告に頼りたいキーワード、もしくはその両方を用いたいキーワードをそれぞれきちんと把握しておくことは、効果的な施策の実行においてとても重要であると思われます。トータルサーチカバレッジを上手く利用すれば、それらのキーワードの判別に役立つだけでなく、リスティング広告の掲載内容の修正まで、データをもとに行うことが可能になります。

次の章では、具体的なトータルサーチカバレッジの活用方法を説明していきます。

【実践編】トータルサーチカバレッジの実用

施策を導くデータの可視化

トータルサーチカバレッジという指標についての理解や、導入すべき理由とその利便性などについては、ある程度ご理解いただけたのではないでしょうか。ここからは、実際に弊社プリンシプルがクライアント様に提案する際に、どのようにしてトータルサーチカバレッジを使用しているのか、紹介していきます。

トータルサーチカバレッジの実践利用では、Googleサーチコンソールを使って自然検索結果のデータを抽出し、以下のデータを組み合わせて図に可視化させていきます。
→GoogleサーチコンソールのSEO活用に関してはこちらこちら

トータルサーチカバレッジによる施策策定に必要なデータは以下の通りです。

  • トータルサーチカバレッジ
  • 自然検索表示順位
  • 流入数(トラフィックボリューム)
  • Paid比率(自然検索結果とリスティング広告それぞれが全体の流入に占める割合)
  • インプレッションシェア

以下の図は、弊社が実際に提案で使用したものです(図3~6は全て同じもの)。Tableauというデータ可視化ツールを使用して上記に挙げたデータを左右二つの散布図に表してあります。少し図の構造が複雑なので、先ずはこの図の見方から説明していきます。基本的に左の図も右の図も、検索キーワードのデータを示している”〇”の色を除けば、構造は同じです。縦軸は各キーワードのトータルサーチカバレッジを表し、横軸は自然検索順位を表しています(自然検索順位は左にいくほど1に近づいていく=高まる)。”〇”の大きさはサイト流入の大きさを示しています。


(図3:トータルサーチカバレッジと自然検索順位 出典:弊社作成)

左側の図内で色分けされているのは、自然検索流入とリスティング広告流入それぞれの割合です(図4)。検索結果からのサイト流入は、自然検索結果からの流入とリスティング広告からの流入に大別できるため、例えばリスティング広告流入の割合が10%であれば、自然検索流入の割合は90%というように試算出来ます。図の下にスペクトラムで示してあるように、〇の色が濃い青に近づく程、自然検索流入の割合が多いことを示し、色が褐色に近づくほど、リスティング広告による流入が多いことを示しています。


(図4:全体流入に対する自然検索流入とリスティング広告流入の割合 出典:弊社作成)

右側の図では、リスティング広告でのインプレッションシェアがキーワードごとに色分けされています(図5)。緑色のデータはインプレッションシェアが高いことを示し、色が褐色に近づくほどインプレッションシェアが低いことを表しています。

このように、トータルサーチカバレッジと自然検索表示順位の他に、複数のデータを組み合わせて可視化することで、広告でのキーワード戦略やSEO施策考案を迅速かつ適切に行うことができるようになります。より具体的なデータの抽出方法やデータの可視方法をもっと知りたいという方はお気軽にお問合せ下さい。→こちらこちらから

次に、この図から示唆される施策の例を紹介します。


(図5:リスティング広告のキーワード別インプレッションシェア 出典:弊社作成)

トータルサーチカバレッジから得たデータからの施策例

以下に、この図から示唆される有効な施策の例を挙げました。図6を参照してみて下さい。

  • リスティング広告の出稿を弱めても良いかもしれないキーワード
    左図内の左上部に注目してください。SEOによる自然検索結果が上位にあり、トータルサーチカバレッジも高いキーワードがここに位置していますが、いくつか褐色のデータ(サイト流入全体におけるリスティング広告の割合が高いキーワード)も見受けられます。すなわち、ここに褐色で示されたキーワードは、自然検索結果では上位に表示され、かつユーザーが実際にサイトをクリックして訪問する確率が高いキーワードであるため、リスティング広告をわざわざ出稿しなくてもSEOだけで十分にサイト流入を取れている可能性があります。

    従って、無駄な広告費を抑えるために、これらのキーワードに対するリスティング広告の入札を弱めることも、今後の選択肢の一つになりえます。

  • リスティング広告の出稿を強めるべきキーワード
    次に、右図の下部に焦点を当ててみましょう。赤枠で囲われているのは、自然検索順位に関わらずトータルサーチカバレッジが低い(検索結果に表示されてもユーザーがサイトを訪問していない)キーワードです。この中にも、褐色(リスティング広告のインプレッションシェアが低い)のキーワードが含まれています。つまり、サイトが検索結果に表示されてもユーザーが実際にサイトを訪問する確率が低い上、さらにリスティング広告掲載欄にサイトが表示される確率も低いキーワードであるという事です。

    もしこの中にマーケティング戦略上どうしても取りたいキーワードが含まれているのであれば、リスティング広告の入札を強化することでユーザーにサイト訪問を促すことが有効であると考えられるでしょう。

  • 掲載されるリスティング広告のタイトルとディスクリプションを見直すべきキーワード
    また、右図下部の赤枠内には、緑色で示されたキーワードも見受けられます。緑色はリスティング広告のインプレッションシェアが高いことを示しているので、これらのキーワードは、検索結果ではリスティング広告掲載欄にしっかりと表示されているにもかかわらず、実際にはユーザーがあまりサイトを訪問していないキーワードということになります。

    せっかくコストをかけてリスティング広告を出稿しており、更にきちんと表示までされているにもかかわらず、サイト流入に結び付いていないという事は、広告表示に問題があると考えられます。従って、タイトルとディスクリプションを見直すことで、リスティング広告のパフォーマンス向上が期待できます。


(図6:トータルサーチカバレッジによる施策への示唆 出典:弊社作成)

以上にトータルサーチカバレッジを利用したマーケティング施策提案の例を紹介しましたが、他にもその時のケースに応じて様々な施策を提案することが出来ます。

最後に

多くのWEBマーケターが試行錯誤を繰り返し、ウェブサイトの業績向上に努めていますが、課題は常に山積しており、その道のりは常に険しいものであると思います。今回は、弊社が使用している指標であるトータルサーチカバレッジについてご紹介しました。前述の振り返りにはなりますが、以下に弊社が考えるトータルサーチカバレッジの有意性をまとめます。

  • SEOとリスティング広告の最適配分をキーワード別に行うための助けになる。
  • 無駄な広告コストを抑えることができる。
  • サイト訪問を促進させるだけでなく、実際のクリック(サイト訪問)数をダイレクトに示す指標であるため、よりサイト業績の向上と密接に関わっている。
  • Paid比率など他のデータと組み合わせることで、より具体的な施策への示唆に繋げてくれる。

いかがでしたでしょうか。本ブログを通じて少しでも多くの方々が、今後のマーケティング活動を行う上でのヒントになれば幸いです。また今回は触れませんでしたが、更に詳しいトータルサーチカバレッジの抽出方法や、成功事例などについてご関心がある方は、お気軽にお問合せ下さい。

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加藤紘章

法政大学経営学部卒業。「やり抜く力を高める方法」をテーマに英語論文執筆。LAで1年間、貿易会社とマスコミ通信会社にてインターンシップに従事。100人以上のハリウッドスターを取材した。

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