はじめに

コロナウィルスの危機は中国から2019年末に始まり、あっという間に日本、そして世界の生活と経済に影響を与える世界的な危機へと発展し、2020年4月になった現在も先行き不透明となっています。

そのような状況下、コロナ危機が始まってからの、米国市場でのデジタルマーケティング、特に躍進するネット広告市場ではどのような変化が起きているのでしょうか? 米国では2019年ネット広告市場約130billion(約14兆円:e-marketer)と確実に成長し、全メディアの50%以上を占めるまでに成長しています。今回はWordstream社という米国でも著名なネット広告代理店が何万もの広告主を対象に調査を行った結果発表した、コロナ危機が始まってからのポジティブ、ネガティブ両面でインパクトを受けた21の業種、に関するレポートのサマリーをお伝えします。

オリジナルはこちら:The SmallBusiness Guide to COVID-19

コロナウィルス危機後、コンバージョン率は21%ダウン

米国では過去でいうと9.11、リーマンショック、そして今回のようなコロナウィルス危機など大きな危機は、Google広告のようなクリック型広告のパフォーマンスに影響を与えます。企業がテレワークを推奨し、人々が外出を自粛し、世界中の人がコロナウィルスの先行き、見通しを心配する中、その答えや新しいニーズに対する解決策をオンライン検索やニュースに求めるようになります。そのことはオンライン広告に出稿する広告主にも影響を与えます。

実際にデータを見ていきます。米国では、危機が始まったとされる2020年2月最終週以降Google検索広告のインプレッションが平均よりも7%ほど減ったそうです。ホリデーウィーク中に減ることは珍しいことではありませんが、今回はそのような時期ではないため、コロナウィルスの影響と言えるでしょう。また検索数の減少に比べ、広告のクリック数、コンバージョン率という意味では平均値は大きく下落しています。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

*Google広告のClick数は2020年年明け平均から比べ3月2日週以降大きくダウン。

また検索結果後の行動ですが、閲覧者は広告をクリックして購買する、という行動を控えていることがデータからわかりました。コロナウィルスが3週間前に米国で流行して以来、コンバージョン率は通常の平均より21%低下しています。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

*コンバージョンレートは平均で21%ダウン

平均の検索数・クリック数・コンバージョン率が下がったとはいえ、Google広告のパフォーマンスは業界によって異なります。まずはここでは、ボリュームが増加した7つの業界、これから変化を受けるであろう7つの業界、そして最も大きな打撃を受けた7つの業界をご紹介します。

検索ボリューム/広告パフォーマンスが改善した7つの業界

1. 非営利団体と慈善団体

危機的な時には、私たちはしばしば人々の善意を受けたいと思い、それはGoogle の検索上でも当てはまります。非営利団体、慈善団体とは例えば失業者の支援、貧困の支援、学生の支援、社会的弱者を支援する団体などです。寄付をする人、それを頼る人の関心が高まったと思われます。

  1. 検索広告のインプレッションが10%増加。
  2. 検索広告コンバージョン数が23%増加。
  3. 検索広告のコンバージョン率が20%上昇。

Google Adsは、非営利団体が無料で広告を掲載できるようにするために、Googleの助成金プログラムの数をサポートしているので、その広告も相まり、これまで以上にサイトが見られるようになったようです。

2. 健康・ヘルス業界、および医療業界

今回のウィルス、疫病などの危機下では当然我々は自分自身の感染しないなど、自分自身が健康でいることに細心の注意を払います。その考えは、ユーザーが店舗やネット検索で予防品、医薬品を購入するようになります。この業界で多くの広告主は、広告クリック数とコンバージョン率の両方が通常よりも大幅に高くなり、オンラインでの製品販売が伸びていることが伺えます。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

*コロナ危機以降の上昇率。健康業種、医療業種ともにクリック数、コンバージョン率がアップ。特に医療品の上昇率が高い。

3. リモート、Eコマース関連B2Bサービス

自宅待機令が出る状況下、従業員のリモートワークをサポートするサービス、買いだめするためのオフィス関連用品、小売が店舗からオンライン販売へシフトする中での物流などのB2B関連の検索が危機以降、23%増加しています。

  1. 人々がリモートワークの準備をする中で、事務用品が突如として伸びたした業界となりました。事務用品の検索数は90%増、有料検索広告のクリック数は35%増、コンバージョン率は41%増。
  2. 伝統的な小売業がオンラインでの販売に移したことで、商品の物流(梱包・配送)などのサービスに対する検索数は、検索広告のコンバージョン率(123%増)と検索広告のコンバージョン率(107%増)が2倍以上になった。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

4. ファイナンス

ここでは、資金の調達、保険、経理が含まれています。企業の業績の見通しが厳しくなる中、資金調達、銀行経由での補助金・助成金などの検索や、資金繰りに関するアドバイスなど専門家の意見を聞きたいニーズが増えているのかもしれません。一方で通常、最も高額なキーワードやクリック単価の高い業界ですが、CPCは低下しているようですが、CVRは上昇しているようです。

5. 美容とパーソナルケア

ここ数週間、人々は石鹸や手の消毒剤のような製品を探しているだけでなく、この厳しい時代にセルフケアを求めています。美容とパーソナルケアの検索数が41%増加しています。これらのカテゴリーの多くは、CPCが低く、CVRが大幅に高くなっており、検索結果ページでブームが起きています。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?

6. ネット配信動画サービス

私たちの多くが自宅待機をする中、自宅での楽しみ方、エンターテイメントの消費量があがっています。ほとんどのエンターテイメント広告主は、需要の増加を拾い上げ、ネット配信動画サービスは、過去数週間で急上昇し、そのコンバージョンを倍増させています。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

7. プレゼント(花・雑貨)

自宅にこもり、社会的な距離を置くことは孤独な経験であり、先行き不透明で今後、何ヶ月も離れているかもしれない、と思うと心が病んできます。そのような状況下でのプレゼントやお互いつながっているという小さなジェスチャーは、コロナウィルス危機で意味あるものとなっています。そのような関連サービスの広告主は素晴らしい結果を出しています。コロナウイルス危機以降過去3週間にわたって下記改善が見られました。

  1. 「カードやグリーティング」を検索すると、コンバージョン率が15%上昇しました。
  2. 「ギフトバスケット」を検索すると、コンバージョン率が30%増加しました。
  3. 「フラワーアレンジメント」を検索すると、コンバージョン率が43%増加しました。

これから変化を受けるであろう7つの業界

1. 不動産 関連

借入金利は低水準を維持しており、住宅市場は現在のところ持ちこたえているようです。検索トラフィックは比較的安定しており、検索ボリューム、CPC、コンバージョン率はほとんど変化していません。しかしながら高額な不動産を買え控える影響はすでに兆しが見えており、まもなくその悪い影響が実態数値となって現れる可能性があります。

  1. 不動産ディベロッパー業界と建設業界では、コンバージョン率の低下(それぞれ-53%、-7%)と検索ボリュームの減少が見られます。これらの分野での減速は、将来的に不動産供給の減少を引き起こす可能性があります。
  2. 不動産物件と不動産業者の検索の両方で、クリック単価が若干上昇しています(過去1ヶ月で+15%)。コンバージョン率において、不動産業者や仲介業者が30%の増加が見られ中、不動産物件を直接個人で検索するパターンのコンバージョン率はー25%の減少となっています。物件を検討する消費者が自宅待機でオープンハウスなど見れない中、よりプロのエージェントに頼ることになっているようです。
  3. 引越しや引越しサービスは、健全なCTR、CPC、CVRを維持しながら、検索ボリュームの11%増加となっています。

2. リフォーム業界

アメリカでは3月は季節要因としてリフォーム案件が少なくなることが多いので、ここ数週間は検索数が緩やかに減少していています。一方で不動産同様、今後の中長期での影響が気になるところです。

しかしながら自宅待機により自宅で過ごす時間が増えることは、家のメンテナンスをしたり、家具を買い足したりする可能性もあります。

3. 家具業界

家具などの高額商品については、検索ボリューム、CPC、コンバージョン率はすべて過去数週間で予想外にもプラスマイナス2%の範囲内にとどまっています。

家庭用品の中でも少額の家電製品や寝具などは検索数が増加し、コンバージョン率も上昇(それぞれ+7%、+12%)しており、消費者の購買意欲が高まっていることを示しているのかもしれません。

自宅でのネット環境から生活・睡眠の質を少しでもよくしようという行動の現れかもしれません。

4. 自動車関連

自動車業界は、ここ数週間で業界平均のコンバージョン率が30%低下とかなり大きめのインパクトを受けています。また販売店は41%のCVダウンとなっています。一方で、すべてコロナウィルス危機のせいではなく3月中旬はそもそも車の購入シーズンではないことも影響しています。一方で検索者がこの期間中に車のケア・修理・窓のスモークなど普段できていないメンテナンスをしていることがコンバージョン率アップによりわかります。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

5. 小売業

現在、既存の店舗を持つ小売業は、営業停止、もしくは営業制限を受けていることで甚大なビジネス上の影響を受けています。一方でEコマースが伸びているかというと必ずしもそうではなく、一部の家庭は、将来の雇用や収入がわからない不安定さの中でものを買わない状況にもなってきています。この不安定さは、検索広告からユーザーのコンバージョン率に影響を与えています。Eコマースサイトのコンバージョン率は14%下落しています。

Amazonを含む大規模なEコマース企業は、Google広告で予算を削減しており、その結果、Google上のCPCは9%ほど減少、結果として他の小売業者のROASが見合うようになってきたようです。

逆に卸売業者などは、CPCが14%高騰したが、コンバージョン率が9%改善しているようです。

6. 仕事と教育

全国の学校や大学が数週間から始まり、数ヶ月単位での休校となり、eラーニングや研修・トレーニング関連キーワードの強い上昇が見られます。教室がオンラインへと変わったとはいえ、教育の広告主の業績に短期的な変化はまだないようです。なお大学の出願ラッシュが終わり、6月のSATがまだキャンセルされていない中、入学希望者の検索上での行動は変わっていません。

過去数週間で、新しいキャリアと職業訓練のための広告のトラフィックに多少の増加(+10%と+8%、それぞれ)も見られます。ただコンバージョン数が大きく変更していないので、まだ検索段階で実際の申込みまではいっていない慎重な行動を表している可能性があります。一方で、コロナ危機で大幅に増えたレストラン・小売店員などの失業者が新しいIT企業の仕事を掴むべく、サイト制作、プログラミングなどの職業訓練をする流れは考えられる。

7. 法律関連サービス

法律業界は、検索ボリュームとコンバージョン率にわずかながらの上昇(5%未満)しか見られない。しかし、これらのコンバージョンの多くは、ウェブサイトでの問い合わせではなく、電話という形で発生しているようです。ただ残念なことに、これらの電話の30%以上は応答対応できていないようです。

最も大きな打撃を受けた7つの業界

コロナウィルス危機の間の最大の関心事は、間違いなく衛生面である。残念なことに、これはいくつかの産業を危険にさらしており、これらの産業で働く人々は特に検索という部分で影響を受けている。

1. 旅行と観光

企業、政府、消費者は、不必要な旅行を避けるために、飛行機・ホテルなどの旅行・出張関係の予約を減らしています。その結果、当然ですが多くの旅行関係の広告主は、自社サイトでの訪問者数減少、そしてコンバージョン率の減少に苦労しています。

2. バーやレストラン

多くの都市でレストランやバーでの営業制限・停止などの制限がある中、集客にGoogle広告などを使っていた飲食業界の中小企業は大きな打撃を受けています。広告のインプレッション数はレストラン、バーはそれぞれ-18%, -26%となっており、またコンバージョン率に至っては60%近くの減となっています。多くはデリバリーやテイクアウトサービスにシフトしていますが、検索数も減り、打開策を見つけるのに苦労しています。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?

3. ライブ・エンターテイメント

公共の安全や人が集まることへの厳格な制限により、ライブ、コンサート、演劇などは世界中でキャンセルとなっています。その結果、ライブエンターテイメントの検索ボリュームは24%減少し、コンバージョン率は30%低下しました。

4. コンファレンス(大規模会議、展示会など)

多くの大規模な会議がキャンセルされたり、秋までイベントを延期が続いています。B2B企業を中心にこれらの展示会などはまだまだマーケティングファネルの中に組み入れ依存しているため、これらのイベントキャンセルは主催者側のみならず、出展企業にも波及効果をもたらすことになります。2月末にコロナウィルス危機が発生して以来、コンバージョンが33%減少しています。

5. スポーツとフィットネス

主要なスポーツ(野球・アメフト・バスケ・サッカーなど)は当分の間はキャンセルされています。また多くの地域で人との密集を避けるため多くのジムが閉鎖され既存会員からの会費売上ダウンの影響も大きく、また新規会員の数が減少することになります。この結果、スポーツやフィットネスに関連する多くの業種では、コンバージョン率が大きく低下しています。

6. 建築・建設関連

急激な景気後退や現場の閉鎖は、建築・建設業界に思わぬ影響を与えます。今後のプロジェクトが停滞し始めたり、遅れたりすると、見込み客も同様に、コンバージョンする可能性が低くなってきています。通常、これから広告費用を増やして集客を増やそうとしているタイミングなので最悪のタイミングともいえます。

7. メーカー・製造業

広範囲にわたるメーカーの稼働が鈍化しているため、広告にも当然影響が出ています。1クリックあたりのコストは5%上昇し、業界のコンバージョン率は緩やかに低下していますが、検索トラフィックが13%減少したことで打撃を受けています。

【米国コロナ危機】Google広告から見るコロナ危機が影響した21の業種とは?
「引用:Wordstream The Small Business Guide to COVID-19」

アメリカのサンフランシスコ・ロサンゼルス・ニューヨークに拠点を持つプリンシプルでは、引続き中長期化するコロナ危機の中で、どの業界が影響を受けるか?そしてこのような状況下をチャンスと捉えている業界、サービスなどを引続き調査し公開していきます。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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