こんにちは、プリンシプルの楠山です。今週は、アメリカやシリコンバレーで注目されているデジタルマーケティングの企業を紹介していきます。

1:データ活用ニーズの高まりと、足りないデータサイエンティスト

e-marketerのレポートによると、2016年の「デジタル広告・マーケティング領域で今後、データの活用は進むか?」というデジタルマーケターへの質問に対し、YESと答えた割合は68.6%(下図棒グラフの5番28.3%+4番40.3%)となり、前年の調査から12.3ポイントアップするなど、アメリカでも確実にデータをデジタルマーケティングに活用していくニーズは高まってきているといえます。

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(グラフ引用:emarketer.com)
そして事業会社や代理店で実際にデータをマーケティングに活用する役割を演じるのがHarvard Business Reviewで21世紀最もセクシーな職種と言われたデータサイエンティストやデータアナリスト。しかしながら実際にビジネスの現場でデータをマーケティングや経営に活かしていくにあたって、データサイエンティスト、つまりデータ分析の専任を雇う際に企業サイドでは3つの大きな課題があるそうです。

課題1:データサイエンティストが足りない

2015 MIT Sloan Management Reviewによると全米の40%の会社が、データサイエンティストを探したり、また引き留めたりするのに苦労をしており、その状況は悪化の一途をたどっているそうです。
またIDC(International Data Corporation)の予想によると2018年には18万人の高度なデータ分析スキルを持ったデータサイエンティストが必要とされ、募集の数はその5倍になるといわれており、スキルの高いデータサイエンティストの確保はますます難しくなりそうです。

課題2:報酬が高い

一方、需要の高まりにともないデータサイエンティストの給与も上昇傾向です。アメリカの大手求人サイトindeedによると、アメリカのデータサイエンティストの平均給与は123,000ドル(約1400万円:2016年7月時点)であり、下記のように上昇傾向にあります。もちろんこの数字は平均であるので、分野や会社によっては20万ドル、30万ドルというような報酬を払ってようやく迎え入れられる、というようなこともあるようです。

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(グラフ引用:Indeed)

課題3:ノウハウを持ったまま辞めてしまうリスク

上記2つをクリアして雇うことができたとして、2-3年でよりよい職に転職するのが一般的なアメリカ、特にそれが早いシリコンバレーである。自社のデータ取得/分析のノウハウがその人に集中したまま、その人が辞めることになり引き継げる人がいなくなってしまう、というリスクも当然あるといえます。
つまり企業にとっては探すのも大変、見つけても給与が高いので当然経営リスクは高く、専門性が高いため、辞めてしまったときに大変、という状態です。また、そもそもデータを元に判断する文化が会社や経営者になければ宝の持ち腐れとなり、データサイエンティストという人材資産を経営に活かすことができないリスクもあります。

2:ACR Analyticsという会社について

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(HP画像:航空会社がデータ活用し座席予約数を増やす、というメッセージ)
そのような中、データサイエンティストが欲しい、部分的なプロジェクトから始めたい、データ活用の文化を根付かせたい、社員教育をしてほしい、という様々なニーズに応え、データサイエンティストを派遣し、常駐させるサービスもでてきています。その会社の1つがACR Analyticsというオレゴンの会社です。
ACR AnalyticsはBrian Agranoff氏というWebtrends社のエンジニアが2008年に立ち上げた企業であり、50名未満の経験豊かなデータサイエンティストの集団から構成されています。主要なクライアントはFortune500クラスの会社から中規模の会社のようです。

3:サービスの特徴について

サービスを見ると、データの取得からタグマネジメント、A/Bテスト、ダッシュボード作成、そしてデータを元に経営判断につなげるコンサルティングを強みとしている会社です。最近はスマホアプリの解析などにも領域を広げていますが、自社で解析ツールを開発する、というよりも解析のツールを使っていかにそれを売上アップや経営判断などのアクション、つまりデータドリブンなマーケティングにつなげていくか、というところを意識しているような印象を持ちます。
実際にホームページのメイン画像を見るとデータを活用して「航空会社の座席予約数をいかに増やすか」、「ECサイトの売上をいかに増やすか」、「アクションにつながる知見を得るか」、というようなメッセージが並びます。
また利用するツールについては、解析ツールではWebtrends、Google Analytics、Adobe Analytics、 Kissmetrics。タグマネジメントでは ensighten、SIGNAL。ダッシュボードではGoodDataやTableau、スマホ解析ではFLURRYやGoogle AnalyticsのFirebase Analyticsなどとのこと。日本でもおなじみのツールもあれば、聞いたことのないツールもありますが、それらを駆使してサービスを提供しているようです。
ビジネスモデルは、作業に応じて人月単位でチャージすることをベースとしたコンサルティングモデルになります。$499ドルのマーケティング診断から入っていくスタイルをとっています。

4:データサイエンティスト常駐サービスについて

そのようなサービスラインアップの中、最もニーズが高まっていると思われるのがスタッフの育成とプロジェクト単位でデータサイエンティストを派遣する常駐モデルです。彼らのHPでは「Staff Augmentation &Marketing/Analytics On-Demand」(直訳すると、オンデマンド型のスタッフ強化とマーケティング/分析)と呼んでいます。
実際に、知り合いのエンタープライズ向けBtoB企業の担当者から聞いた話ですと、オレゴンから出張ベースでミーティングすることもあるようですが、最終的にはリモートでチームに入り、事業側のマーケティングマネージャーと協力をして、例えばあるキャンペーンの成果を図るためのデータ取得設計、タグマネジメント実装、取得したデータの解析、レポーティングなどの業務を行っているようです。
専門性が高い分野であるため、データ取得回りはacrからアサインされたプロフェッショナルに任せ、事業会社側のマーケティングマネージャーや担当者は取得されたデータにもとづき、実際のビジネス判断を行ったり、社内向けのレポーティングを通じて会社全体のビジネス判断をデータドリブンに変えていくことに集中できるため、メンバーの一員として手放せない存在になっているようです。
またもしその常駐メンバーが辞めてしまったとしても、アウトソースする先の会社内でノウハウを共有しているため、すぐほかの担当者がメンバーに加わることで業務遂行ができることも安心とのことでした。

5:このサービスが解決するもの

事業会社側からみると、データ解析業務をアウトソースする、ということであるが、この「データサイエンティスト常駐モデル」こそ、事業会社側が抱えているデータサイエンティストが「見つからない、高い、引き継ぎができない」を解決するサービスといえると思います。
このような会社に依頼をし、プロジェクト期間だけ依頼することでコストを管理し、個人ではなく、会社単位での契約のため引き継ぎもスムーズにいく。また自社スタッフをそばにつけることで教育を施すことで、最終的には自社でデータサイエンティストを保有する、ということができることもメリットだと言えます。基本的に、アメリカでは代理店を使わず、自社で広告の買い付けからマーケティングまでを行うインハウスが主体の文化であるが、そのような中での、「データ解析業務の常駐モデル」今後注目していきたいモデルです。
プリンシプル社でも同じようにデータを収益に変える、というコンセプトのもと、データ取得からタグマネジメント、データサイエンティストの常駐など、条件に応じて対応しておりますのでぜひお問合せください。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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