海外に進出したいと考えている企業が増えている。だが海外のマーケットは、日本にいては分からない複雑さと熾烈な競争がある。したがって海外を視野に入れるのであれば、経営陣の本気の覚悟と投資が必要である。

では実際に海外進出をしよう、というときにはどのようなパターンが考えられるだろうか。

本記事では、海外進出コンサルティング案件を手がけてきた経験から見えてくるリアルな状況を、予算感と成功の鍵から3つのパターンにまとめてみよう。

パターン1 予算100万円以内の場合【海外事業の模索型】

JETROのサービスを活用

海外進出にあたり、JETRO等の統計情報・現地人の嗜好等の定性情報から、海外マーケットをなんとなくイメージしている段階である。

JETROのトレードショーに参加して、グループでブースに出展する。単独でブースを製作すると、通常1社で数百万円相当の負担がかかるところ、共同で出展することにより30万円〜50万円で出展が可能であるからだ。

手探りで現地のバイヤーなどに声をかけて、フィードバックを直接得る機会となるも、学びの段階であり商談化までいくのは一般的には難しい、という声を聞く。ただしやり方によっては当然進出への大きな一歩となる。

自社でランディングページ・ミニサイトを立ち上げ

実際はこのパターンが一番多いケースのように思える。

翻訳とデザイン料を100万円程度かけて、日本で成功している商品・サービスを英語バージョンで用意し、Webマーケティング(広告・SEO)を試してみて、感触を狙う。

最初のうちは健康食品、美容品、日本食等の販売実績がある程度見られるのだが、日本のホームページに記載してある内容そのものの翻訳・直訳になっているため、現地目線で響かなかったり、現地のニーズとのアンマッチによって、次第に集客がなかなかうまくいかなくなる。

ローリスク・ローリターン型となっているため、ここで失敗してもダメージは最低限であるとして、より大きな投資をして攻めて行こうとはならない。したがって、この時点で撤退するケースが中規模までの企業に多く見られている。

パターン2 予算2000万円前後【リサーチ調査徹底型】

弊社でもそうだが、日本で100億円〜1000億円を超える年商規模の会社になると、日本のビジネスでもしっかりとマーケティング活動予算をたてており、海外投資に対しても同じように対応するようになる。

少なくとも2000万円前後の金額でしっかりと現地調査を自分たちで行い、現地のニーズを直接把握し、商品作り、コンセプト・ブランド作り、ホームページ作成、マーケティング・宣伝活動をすることが多い。一流の調査会社や現地に精通したマーケティング会社を使うこともある。

海外事業として日本本社に海外専任の担当者、担当役員などを置くようになり、会社・組織としてもコミットを感じるレベルである。

ここで弊社のマーケティング現地調査に基づく提案資料の一部を紹介したい。実際の現地のターゲットユーザーに対するグループ調査などで、商品の新たな魅力や可能性を現地目線で探ったものだ。


(出典)弊社によるターゲットユーザーに対する調査の事例

パターン3 予算5000万円〜【海外事業の深耕型】

本気で取り組むパターンである。

決裁稟議は取締役会レベルで承認され、社内の優秀な社員を現地に赴任させるようになる。現地にオフィスを持ち、現地人1~2名を採用して営業を仕掛けることで、様々な取引先とネットワークを構築するようになる。

現地では、言語の壁を乗り越えることができる高いコミュニケーション能力が必要である。空気を読む、会議中は静かに話を聞くに徹する、という日本独特の風習は通用しないからだ。

また、法慣習・商習慣の違いからビジネス上のトラブルが生じないようにするリスクヘッジも大切である。日本ではこうだった、というのは往々にして通じない。

「お~いお茶」の仕掛け方は、成功例としてとても参考になると思う。数名の専任チームを配置し、まず現地で調査しながらターゲット層を把握した。その結果をもとに、日本でお馴染みのスーパーマーケット展開からではなく、Google等の大手IT企業へ働きかけて、商品ブランドの認知度を向上させることに成功した。

海外事業の進出にあたり、メルカリなどのように最初から億単位の予算を用意できる大企業はあるが、それは例外といえよう。ただメルカリや楽天はトップが海外に出ると強くメッセージを出していることに注目されたい。

経営者の覚悟と投資額の物差しのマトリックス

これらの経験から、海外進出の本気度を伺う以下のような「投資額の物差し(目安)」があると考えている。

【経営者の覚悟と投資額の物差しのマトリックス】

経営者の覚悟 初期投資額 手法・手段
100万円以内の予算で小さく始めて感触をつかむ ・JETROの海外催事場で試す
・海外のECサイトで試験販売
中~高 少なくとも2千万円ぐらいをかけて本気の調査を行う ・商品のユーザー調査をする
・ブランドの認知度調査を行う
5千万円から1億円ぐらいをかけて本気で海外事業を展開する ・適切な人材を配置する
・海外現地に事務所を置く

海外進出は、大手で資金潤沢なところでも苦戦するので、中小・中堅企業にとってはさらにハードルが高くなる。まずは経営者の覚悟とそれに紐づく投資、というのが重要になってくるのである。

また、経営陣の本気度はトップダウン型で社内に周知をすることが良いだろう。そうしなければ社内でコンセンサスが見られず、むしろ部門間の軋轢が生まれて、海外事業がスムーズに進まなくなるからだ。

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楠山健一郎

国際基督教大学卒。シャープ、サイバーエージェント、トムソン・ロイターを経て株式会社プリンシプル設立。

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