本記事で触れているGoogleアナリティクスは、ユニバーサルアナリティクス(UA)を前提としています。
GA4を対象とした記事ではございませんので、ご注意ください。

我々がよく聞かれる質問のひとつに、KissmetricsはGoogleアナリティクスとどう違うのか、というものがあります。どちらも分析分野のサービスなので、似たようなツールと捉えられやすいのです。
しかし、ふたつのサービスには違いがたくさんあります。たとえば、トラッキング方法や最善のユーザー事例、またそれぞれのツールで可能なこと、不可能なことがあります。今回の記事ではそれらの違いをより詳しく掘り下げていきます。
まずは明確化するために、GoogleのユニバーサルアナリティクスとKissmetricsの違いを説明します。
(本記事はKissmetrics様のWhat is the Difference Between Google Analytics and Kissmetrics?の翻訳記事になります)

GoogleアナリティクスとKissmetricsはどのように“人”をトラッキングするのか?

Kissmetricsの分析は主軸として人にフォーカスしています。後ほどすぐに説明していきますが、ウェブサイトへの訪問をすべて人にフォーカスして記録しています。Googleアナリティクスは人のトラッキングを追加機能としています。製品の主軸ではありません。Kissmetricsを利用するユーザーの多くが個人をトラッキングする一方で、Googleアナリティクスを利用するユーザーの多くはその追加機能を使って個人をトラッキングすることをしていません。
人をトラッキングしようとすると、個人を特定するためには以下の2点が必要です。
ユーザー識別 – ユーザーが情報を入力した際、分析ツールでそのユーザーとユーザー情報を紐づけて識別可能でなければならない。
サインイン – デバイスごとにユーザーがサインインでき、サインインによって別デバイスを利用した同一ユーザーであると識別可能でなければいけない。
ログイン時に分析ツールがユーザーを識別できたとしても、双方のツールでは、その認識方法が少し異なっています。
では、KissmetricsとGoogleアナリティクスはどのように人をトラッキングしているのか具体的に確認していきましょう。

1. 登録前またはログイン前のセッションアクティビティでは何が起こっているのか?

だれかがウェブサイトを初回訪問したときに、KissmetricsとGoogleアナリティクスはどちらもその人物に匿名のIDを付与します。

Google アナリティクスの場合

Googleアナリティクスの場合、訪問と登録が同じ訪問セッションで行われます。もし誰かがウェブサイトを訪問し、去って、10日後に再訪し、登録した場合、最後のセッションがユーザーIDに連携されます。最初のセッションは関係のないものとして扱われ、ユーザーが識別されたセッションからのみデータが連携されます。これを回避するには、可能な限り多くのセッション時に人を識別する方法をサイト側で設定することが必要です。

Kissmetricsの場合


Kissmetricsでは上記の図のように顧客IDの割り当てを行っています。
以前のセッションのすべてのデータが別名に割り当てられます。
そして、どこかのタイミングでユーザーが会員登録をし、個人を識別できる情報を入力した段階で、過去の匿名IDについても顧客IDと紐づけを行い、登録前の動きも合わせてトラッキングを行います。
以上が両者の主なトラッキングの要略です。しかし、状況によって異なることもあります。

2. ユーザー識別後、セッションからのデータはどうなるのか?

ジョーイがサイトを訪問、登録し、ログアウトしてブラウザを閉じたとします。一週間後にサイトを再訪したときには、登録や再ログインをしないとします。この二度目の訪問時のデータはどうなるでしょうか?
Kissmetricsの場合、ジョーイのデバイスが記憶されているので、一度目、二度目の全てのデータがジョーイに連携されます。
Googleアナリティクスの場合、設定はそう簡単ではありません。GoogleアナリティクスのヒットがあるたびにユーザーIDを送信する必要があります。つまりGoogleアナリティクスのデータひとつひとつに対し、それに関連するユーザーIDが必要なのです。同一セッション内で発生するヒットをまとめるセッション統合が行われます。しかし、セッションごとにそのセッションと人を関連づけるユーザーIDが必要です。この場合、Googleアナリティクスは一度目と二度目の訪問を別人とみなすでしょう。

3. 複数のデバイスからのセッションアクティビティはどうなるのか?

以下のような行動をどうトラッキングするか考えてみましょう。
1.アナが自分のデスクトップからサイトに登録する。
2.一週間後、自分のiPadからサイトを訪問するがログインはしない。
3.同日、またサイトを訪問し、今回はiPadからログインする。

Kissmetricsの場合

一旦登録すればデスクトップからの全データはアナの顧客IDに割り当てられます。iPadでの訪問時には、新しい匿名IDが割り当てられます。アナがiPadでログインするまで、この訪問者がアナであるという認識はありません。一旦ログインすれば、iPadからのすべてのセッションがデスクトップで登録したときに作成された最初のIDに連携されます。つまり、新しいデバイスで訪問し、ログインしなかった2.のパターンのデータも同一の個人としてトラッキングされることになります。

Googleアナリティクスの場合

アナは初回訪問時に登録したので、そのセッションのアクティビティは新規登録したユーザーIDに連携しています。二度目の訪問時、アナは新しいデバイスを使ってログインしなかったので、その際の行動はトラッキングすることはできず、データは失われます。
2.でも同じデバイス(今回の場合はデスクトップ)を使っていれば、そのあとのセッションはすべて正確にアナのユーザーIDに割り当てられていたでしょう。また、別のデバイスから訪問しても、初回訪問でログインしていれば、同じセッションのデータはデスクトップでの登録時に割り当てられたユーザーIDに連携され、トラッキングが可能となります。
Googleアナリティクスは“ユーザーが識別されたセッションから”のみデータを連携させることを覚えておく必要があります。

4. 複数の人が同じデバイスを使用したらどうなるのか?

次は以下のようなパターンを考えてみましょう。
ブレンダは今夜開催されるショーのチケットを探しています。ホテルのPCから貴社サイトを訪れたもののお目当てのチケットが見つからずサイトを去ります。
スティーブも同じチケットを探しているとします。彼もホテルのPCから貴社サイトに訪れ、お目当てのチケットを見つけ、登録後にチケット代を払います。
この場合、KissmetricsとGoogleアナリティクスはどのように処理するのでしょうか?

Kissmetricsの場合

スティーブの登録後、ブレンダの行動データはスティーブに割り当てられます。つまり、同一コンピュータからの訪問はすべてスティーブに連携されます。この場合の技術的な回避方法はありません。

Googleアナリティクスの場合

Googleアナリティクスでは正確なデータを記録できます。ブレンダはサイトを訪れたものの、登録しなかったので、彼女のセッションのデータはトラッキングされません。
スティーブは訪問と同じセッションで登録したので、データは正確にスティーブに連携されます。

5. 複数の人が同じデバイスでログインしたらどうなるのか?

次のようなパターンも起こることが想定されます。どのようにトラッキングされるのでしょうか。
同じデバイスを使って同じウェブサイトにアクセスしたブレンダとスティーブの例に戻りましょう。
今回、ブレンダはログインし、チケットを探し回ったあと、ログアウトしたとします。同日のその後の時間にスティーブがやってきて登録したとします。

Kissmetricsの場合

ブレンダがサイトを訪れてログインしたときに、全データが正確に彼女に連携されます。
しかし、スティーブがサイトを訪れて登録しても、Kissmetricsはまだウェブサイトを訪問しているのはブレンダだと認識しています。スティーブが登録する前のデータはすべてブレンダの顧客IDに連携されます。スティーブが登録後にようやくKissmetricsはこれが新しい人だと認識して、それ以降のデータを彼の顧客IDに連携します。
このような間違いを回避するために、KissmetricsではclearIdentity callを実行することができます。これを利用することでブレンダのログアウト後に彼女のIDをクリアして、 同一コンピュータから次の人が訪れたときに、新しい匿名IDを割り当てることができます。それからスティーブが登録すると、ブレンダのログアウトからスティーブの登録までの全データがスティーブの顧客IDに連携されます。
これができるのは、ログアウトのイベント時だけです。訪問後ごとに、名づけられたIDをすべてリセットすることはできません。

Googleアナリティクスの場合

GAはこれを正確に処理します。ブレンダがサイト訪問時にログインすれば、彼女のセッションの全データが彼女のIDに割り当てられます。そのあと、スティーブが訪問して登録した場合、訪問時からの全データは正確にスティーブに割り当てられます。

トラッキングに関する情報のまとめ

ユーザーをトラッキングするとき、分析には以下のどちらかひとつを仮定する必要があります。
・同一デバイスからの個々の訪問は同一人物からのものである。
・個々の訪問は、識別されるまで新しい人物として扱うべきである。
Kissmetricsはひとつのデバイスからのアクティビティは同一人物のものであると仮定します。ユーザーの一人がデスクトップ、タブレット、そして電話からサイトを訪問するとき、Kissmetricsはサインイン後にその人物を認識して顧客IDに連携します。
Googleアナリティクスは訪問ごとに新しい人物であると仮定します。これを回避する唯一の方法は、その人物の行動のすべてを確認するためにセッションごとに人物を特定することです。

具体的な使用事例

KissmetircsはGoogleアナリティクスの模造品ではありません。どちらも分析ツールですが、それぞれ特有の使用事例があります。一般的な使用事例を要約して、どちらのツールが適しているのかをみていきましょう。

訪問者と訪問のトラッキング

もしこれがあなたの求めることであれば、Googleアナリティクスを使いましょう。Kissmetricsでも訪問者をトラックすることはできますが、トラッキングだけが目的の場合はあまり意味をなしません。

直帰率、ページ閲覧時間、離脱のトラッキング

これらの指標はGoogleアナリティクスを使ってください。Kissmetricsでは現在トラックできません。

ファネルトラッキング

Googleアナリティクスでもファネルを設定できますが、いくつか不便なことがあります。
・ファネルの設定以降のデータしか閲覧できない。ファネルが設定されるより前のデータは閲覧できない。
・同一訪問時でしか連続した手順をトラッキングできない。複数の訪問でプロセスを完了した場合や定義パスから退去した場合、データは失われてしまいます。サインアップの流れ、またはEコマースの支払いだけをトラックしたい場合(かごに商品を入れた人の数はトラックできない)、Googleアナリティクスを使うことはできます。全体的な顧客獲得のファネルを構築することはできません。
対照的に、Kissmetricsのファネルは過去のデータを取り出すことができます。そのため、サインアップのファネルを設定した直後に、何ヶ月も前からトラックした期間のパフォーマンスを見ることができます。だれかが今日ウェブサイトを訪問して半年後にファネルが完成していなくても問題ありません。

コンバージョンのトラッキング

もう少し高度な分析をしてコンバージョンのトラッキングを始めたい方もいるでしょう。コンバージョンをトラックすることで、ニュースレターのサインアップ、白書のダウンロード、発注などのサイトにとって重要な行動をとった人の率を調べられます。

Googleアナリティクスの場合

目標設定が必要です。またコンバージョンには90日の制限があります。初期設定ではコンバージョンは同じ訪問で起こらなければいけません 。トライアルにサインアップしてもらうような、テスト段階で早急にコンバージョンを求める場合にこれは有効です。より深いもの、障壁の高いコンバージョンを求める場合は、測定が少し難しくなります。これの唯一の回避方法はmulti-channel funnelsを使用することです。特定のレポートを使ってどのコンバージョンのデータを調べているのか注意する必要があります。

Kissmetricsの場合

コンバージョンのトラックにファネルレポートを設定する必要があります。よくあるファネルレポートはサインアップまたは発注人数のトラッキングです。以下にSaaS企業の例を挙げてみます。

ここでは、サイトを訪問し、トライアルのサインアップを行い、会費を支払うに至った人を確認できます。Eコマース企業では、売上ファネルは以下のようになるでしょう。

このファネルで、サイトを訪問後、かごに商品を入れてから購入した人数をトラッキングしています。

A/B テスト

Googleアナリティクスの場合

GoogleアナリティクスではA/Bテストツールの働きをするContent Experimentsを設定することができます。このテストを実施するには まずURLをふたつ用意する必要があります(例:www.example.com/control と www.example.com/variant1)。
ふたつのURLを用意してテストを行うのは、ひとつのURLに対して数百もの被リンクがある可能性があるので、技術的に難しくなるかもしれません。チームに開発者、サーバーサイドのエンジニアがいるとうまく回避してテストを行うことができるでしょう。もしあなたのチームにエンジニアが存在しない場合、実装難易度は比較的高い部類になります。
もうひとつの弱点は、コンバージョンが同じ訪問で発生しないといけないことです。ステップの途中でサイトを去ってしまった人はカウントされません。

Kissmetricsの場合

OptimizelyのようなA/Bテストツールを統合し、そのデータをA/Bテストのレポートに関連づけることができます。すべてのデータを実際の人に連携できるのです。レポートは以下のようになります。

一番成功したのが、バリエーション_2です。こちらの使用をお勧めします。
“人”の列の数字をクリックすれば対応するバリエーションの人が見え、人物の概要を確認することができます。または、”コンバージョン”の列の数字をクリックすると、コンバージョンに至った人だけを詳細に確認することもできます。

コホートレポート

人は、その行動にもとづいてグループやコホート(同世代)に分類できます。その典型例は、時間をかけてログインユーザーの再訪率をトラッキングすることです。コホートレポートでは、特定の時間の範囲(一般的に一日または一週間)にログインした人をトラックして、その特定の時間の範囲内(一日または一週間ごと)にどのくらいの頻度で再ログインするのかを確認できます。Kissmetricsでは以下に示すレポートのようになります:

Googleアナリティクスではここまで詳細な表示はできません。

KissmetricsとGoogleアナリティクスを併用する

Googleアナリティクスは訪問者がどのようにウェブサイトと関わるのか、その本質の世界を提供することができます。 あなたが現在閲覧しているブログも含め、訪問するウェブサイトのほとんどがGoogleアナリティクスを使用しています。
当社のお客様の多くがKissmetircsとGoogleアナリティクスを併用しています。当社もセッションデータの取得、ページでの主なエンゲージメント(ページやサイトにいる時間)の確認、関連データの確認にGoogleアナリティクスを使用しています。お客様がどのように当社の製品を使っているのかの洞察や、顧客獲得チャネルの開拓、獲得ファネルのトラッキング、A/Bテストの文書化、最善の判断を下すためのデータの収集にはウェブアプリ向けのKissmetricsを使用しています。
用途によってツールを器用に使い分け、ツールに使われないように注意しなければなりません。

まとめ

プリンシプルはGoogleアナリティクスの認定パートナーとして、クライアント企業へのGoogleアナリティクスの実装支援、カスタマイズ支援、設定支援、分析によるアドバイスを提供しています。
Googleタグマネージャの認定パートナーでもあり、Googleアナリティクス関連のビジネスニーズ対応については高いレベルでサービス提供できる自負もあります。
一方、何でもGoogleアナリティクスを利用すれば良いか?というとそれは違うと考えています。計測したい内容や、計測によって得たデータの利用方法によってツールを使い分けるのは当然で、プリンシプルでもヒートマップツールやA/Bテストツールは日常的にクライアント企業に提案しています。
その意味で、本翻訳記事で取り上げられているKissmetricsの情報は「ユーザー単位」でのサイト利用状況の計測が得意とのことですので、ニーズに合わせて活用して頂ければと思います。
どうしてもGoogleアナリティクスで同等のことをやりたい。という場合には対応可能ですので、ご相談ください。

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