GA4が登場した当時から、情報の少ない中、様々な方がGA4に対する見解を発信してきました。それらは正しいものがほとんどですが、ユニバーサル・アナリティクスからの移行期限が約1年を切るようになった今見直すと、中には誤っているものも含まれています。

この記事では、今まで流布していた情報の中から、GA4が誤解されてしまっているものについて取り上げて解説したいと思います。

無償版では最大14ヶ月分しかレポートを見ることができない?

ユニバーサル・アナリティクスでは、データ保持期限の設定項目で「無期限」を選択できました。一方、GA4ではデータ保持期限の設定には無償版の場合「2ヶ月」または「14ヶ月」しか選択することができません。
※有償版ではこれらに加えて「26ヶ月」「38ヶ月」「50ヶ月」が選択可能

この設定画面をもとに、GA4が出てきた当初は「GA4では14ヶ月以上昔のデータを閲覧することができない」(14ヶ月以上のデータを参照したい場合、BigQueryなどを利用しなければならない)と言われていました。

しかしながら、今ではこの認識は半分誤りであったことが判明しています。

厳密には、「探索レポート」で参照するデータは、個々のユーザー行動ログのローデータにアクセスする必要があり、データ保持期限の設定項目を参照し、最大14ヶ月(無償版)の制限を受けることになります。一方で、「標準レポート」ではローデータではなく集計済みデータにアクセスすることになり、こちらではデータ保持期限の設定項目とは無関係に、14ヶ月を超えてレポートデータにアクセスすることができます。

  • 誤:14ヶ月以上前のデータはGA4では一切見ることができない。
  • 正:探索レポートのみ表示できる期間が制限されるが、それ以外の(集計済み)レポートでは14ヶ月以上前のデータであっても参照できる。

つまり、データ保持期限の設定項目の影響を受けるのは今のところ「探索レポートのみ」とされており、データポータルのネイティブコネクタからアクセスできるデータや、GA4のData APIからアクセスできるデータは集計済みデータにアクセスするため、データ保持期限の設定項目を受けません。

現時点では、Tableauなどを始めとするBIツールではGA4のコネクタが存在しませんが、おそらく近いうちに各社がGA4に対応すると考えられます。その際はGA4のData APIを利用することになるため、14ヶ月以上前のデータでもアクセス可能となります。

GA4ではデータ送信タイミングの問題で計測ロスが発生する?

今までのユニバーサル・アナリティクスでは、ページビューやイベントは、実行されたタイミングで即時実行されるようになっていました。一方GA4では、データ送信の頻度を減らすために、一定期間に発生したページビューやその他のイベントをまとめて一括で送信することがあります。そのため、「短時間でページ遷移したユーザーはページビューがGA4に送信されない」という話が一時期Twitterなどで話題になりました。

しかしながら、実際には「短時間でページ遷移する場合であっても、ページ遷移のタイミングで未送信のイベントを送信する」という機能が備わっているため、送信ロスするリスクは基本的にありません。

  • 誤:短時間で離脱したユーザーはページビューの送信ロスが発生する。
  • 正:短時間で離脱したユーザーであってもページ遷移時に未送信のデータ送信を行うため、送信ロスは基本的に発生しない。

BigQueryデータを使えばどんなデータでも取得できる?

これは完全な誤解ではなく、実際BigQueryデータを使えばどんなデータでも自在に取得することができます。しかしながら、そのために要求されるスキルはかなり高いものになっており、SQLの経験者であってもBigQueryデータから適切にデータ抽出を行うことは難易度の高いものとなっています。

  • △:BigQueryデータを使えばどんなデータでも取得できる。
  • 正:BigQueryデータを使えばどんなデータでも取得できるが、適切なデータ抽出には高いスキルが要求される。

これは「計測したデータがBigQuery特有のネストしたデータ構造で表現されている」ことだけが問題ではありません。特にセッション・スコープの「参照元」「メディア」「キャンペーン」などを取得しようとすると一筋縄にはいかず、BigQueryにこれらの流入元情報がどのように入ってくるかを理解した上で複雑なSQLクエリを実装する必要があります。

1つ安心できることは、「無償版では最大14ヶ月分しかレポートを見ることができない?」でも説明したように、標準レポートやData API、データポータルのネイティブ・コネクタでは集計済みデータにアクセスするため、14ヶ月を超えてもレポートデータにアクセスすることができます。

おそらく今後も、TableauやPower BIなどのBIツールもGA4へのコネクタを開発すると思われますが、それらもData APIを利用するため、14ヶ月を超えるレポートは問題なく作成できるでしょう。

まとめ

この記事では、GA4に対する3つの誤解について解説しました。

  • データを表示できる期間は探索レポートのみで最大14ヶ月に制限される。しかしそれ以外の(集計済み)レポートでは14ヶ月以上前のデータであっても参照できる。
  • 短時間で離脱したユーザーであっても、ページ遷移時に未送信のデータ送信を行うため、送信ロスは基本的に発生しない。
  • BigQueryデータを使えばどんなデータでも取得できるが、高いスキルが要求される。

GA4が登場した当初に情報収集した方の中には、もしかしたらまだ誤った情報のままGA4を認識していた方もいるのではないでしょうか。この記事を読むことで、今までの誤解を解消し、正しい情報をもとにGA4の導入を検討していただければ幸いです。

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山田良太

テクノロジー開発室長。チーフテクノロジーマネージャー。10年以上のプログラミング経験を活かして、Webマーケティングのテクノロジー領域(APIを使ったシステム開発や、タグ実装など)を中心に取り組む。

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